2011年10月16日(日)

千葉県佐倉市、堀田様の城下町を行く

都市鑑定アドバイザリー(株) 不動産鑑定士 田中祥司

 千葉県の佐倉市は城下町だとは知っていましたが、詳しいことは知りませんでした。成田山新勝寺の帰り道に佐倉駅で降り、ちい散歩をしてみたら歴史のある素晴らしい街であることを再認識しました。

 JR佐倉駅から北方へ徒歩15分くらいのところに、武家屋敷街があります。300石以上の河原家住宅、百石以上の但馬家住宅、百石以下の武居家住宅の3棟が建っています。3棟ともこの場所にあったのではなく、移築・復元した物です。

 私が行ったときには地元のボランティアガイドさんがいて、丁寧に説明してくれました。

     樫の木と茅葺屋根の武家屋敷

          武家屋敷の広間

・佐倉藩は譜代大名の堀田家が治めていたが、第5代の堀田正信の時に幕府を怒らせることをしてしまい改易(お取り潰し)にあった。その後、堀田家の子孫の功績で再び大名として返り咲き、佐倉藩は堀田家で明治維新を迎えた。

・堀田家は代々幕府の老中になる優れた人物を輩出してきた。石高は11万石だが、老中の藩、老中の堀田家というプライドがあった。

・幕末のペリー来航以降、鎖国を続けるか開国するかで議論が分かれた時、幕府内で一番外国事情に通じていた筆頭老中堀田正睦(まさよし)がハリスと日米修好通商条約交渉を行い、開国ということで幕府内をまとめた。ただ政治的に重要なことは徳川幕府だけで決めず、必ず朝廷の了解も取るという習わしがあったので、老中堀田氏は京都の朝廷に米国と開国することの了承をもらいに行った。しかしその当時の朝廷は思想が攘夷(外国を討つ)であり、この説得工作は失敗してしまう。その責任を取って、老中堀田正睦は辞任し、その後を受け継いだのが大老井伊直弼。従って開国の最初の方針をまとめたのは、井伊直弼ではなく堀田正睦である(佐倉市民の誇り)。

・江戸時代も何十年か経って落ち着いてくると、外様大名はあまり国替えということは無くなったが、譜代大名はかなりの頻度で国替えが行われていた(社長の徳川家に言われればどこでも転勤しなければならない)。従ってあまり住宅などの建物にお金は掛けられず、大名家が家を建てて社宅として家臣を住まわせることが多かった。佐倉に残っている武家屋敷も、佐倉藩が用意した謂わば社宅である。

・300石以上、100石以上、100石以下の3つの武家屋敷があるが、敷地面積、建物面積が家格に応じて大小が違い、また門・玄関の幅や、室内の装飾等が少しづつ格差が付けられている。

・敷地内には樫の木が埋められている。樫は固い木なので、いざ戦になった場合は木刀として使用できる。また庭には畑が設けられていて、家ごとに家庭菜園を行っていた。佐倉の場合は、茶の木を植えることが義務付けられていた。茶はビタミンを豊富に含むため戦の必需品であった。こういう伝統もあり明治以降は、佐倉は茶の名産地として栄えていた。

 この武家屋敷から西方に下りる坂がひよどり坂です。鬱蒼とした竹林に囲まれた風情のある坂道であり、鎌倉辺りにあれば間違いなく人気スポットになる坂道です。もう少し佐倉の武家屋敷を訪れる観光客が増えれば、江戸風茶屋の一つも作れば大受け間違いなしです。

       竹林の間を抜けるひよどり坂

 武家屋敷から15分くらい歩くと、佐倉城のあった佐倉城址公園につきます。江戸時代の建物は全く残っていませんが、城域がそのままの形で残っています。往時を偲んで散歩するには素晴らしい環境です。譜代大名の領地はどこも外様大名より虐げられたので、昔ながらに残っているのは少なく、その点では佐倉はラッキーだったようです。新潟県長岡市は城下自体がほとんど痕跡無く壊されています。

ただ観光客が来るには、公園だけですのでもの足りない感じです。日本庭園を整備して、離れくらいは復元した方が良いでしょう。調布の深大寺を参考に、昔風のそば屋、茶屋などを作れば観光客はもっと訪れるはずです(地元の人には今のままで良いのかも知れませんが)。

 佐倉城址の中にある佐倉自慢の施設が、「国立歴史民俗博物館(通称は歴博)」です。京都、奈良と争って佐倉に誘致したどえらい立派な博物館です。古代から現代までの歴史と日本人の民族世界をテーマに、実物資料と精密な複製品や復元模型などを使って解説・展示されています。大宰府にある「九州国立博物館」に似ているとも言えます。歴史好きが行けば、一日いても飽きない施設です。

http://www.rekihaku.ac.jp/

 その他にも、下記の施設が見どころです。

・堀田邸:殿様だった堀田家が明治以降に住んだ上級和風邸宅で国の重要文化財になっています。

・佐倉順天堂記念館:蘭方医・佐藤泰然が医院兼蘭学塾として創設し、私立病院としては日本最初の施設(県指定史跡)。

 思いのほか楽しかった佐倉の一日でした。

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