2011年10月20日(木)
成田山と市川團十郎
歌舞伎の市川一門の屋号は「成田屋」。歌舞伎の舞台では客席から「よっ、成田屋!」と見得が切られます。この成田屋は成田山新勝寺から来ていますが、何故に市川家と成田山が結びついたのか?五木寛之氏の百寺巡礼の第5巻関東・信州編で、成田山新勝寺が取り上げられ初代市川團十郎のエピソードが綴られています。
・初代團十郎は、舞台に「荒事」と言う新しい演劇様式を作り上げた名優。そして人格者として知られていた。徳川第五代将軍綱吉の時に活躍(1660年~1704年)。荒事とは、荒々しく豪快な歌舞伎の演技を言う。荒事の物語は勧善懲悪で、主人公は赤を基調とした隈取という化粧をし、誇張された衣裳が特徴となっている。見得や六方など独特の演技の様式が見られる。
・順風満帆な團十郎にも悩みがあった。跡継ぎの子供が授からないということだった。成田山にお参りに行くと聞かされ、数日間新勝寺にこもり一心不乱に願を掛けた。この願いが叶って、1688年にようやく長男を授かった。これが二代目團十郎を襲名する九蔵である。
・これ以来すっかり成田山のファンになった團十郎は、成田山のご利益を世間に宣伝していった。当代一のスーパースターが宣伝することにより成田山の名前は江戸中に広まり、團十郎のファンがこぞって成田山に参詣するようになった。團十郎は成田山の模範的信徒として伝道師の役割を果たした。
それまでの成田山新勝寺は参拝客が押し掛けるような寺ではなかったのが、初代團十郎のおかげで有名寺になり、その後もずっと代々の市川團十郎と成田山新勝寺は現在まで相思相愛できました。現在では年間参詣者1000万人を超える日本有数の寺になっています。昨年見た新勝寺のポスターには、市川海老蔵と嫁の真央ちゃんが写っていました。
歌舞伎の世界では現在でも市川宗家(團十郎の家系)が大看板です。市川海老蔵と中村獅童は天と地ほどの家柄の差があるのだそうです。海老蔵が常に主役の家なら、獅童は脇役寄りの家柄です。獅童の叔父にあたる萬屋錦之介や中村嘉葎雄は映画の世界にはいって大スターになりましたが、歌舞伎では主役にはなれなかったからと言われています。今でも宗家の力は絶大なのです。団十郎の家系で良かったね、海老蔵君。
5月に行われた能舞台
開山堂(1938年建立 開山寛朝大僧正のご尊像を奉安)
光明堂(1701年建立 旧本堂、本尊として真言密教の教主である大日如来が奉安)
釈迦堂(1858年建立 前本堂。釈迦如来、文殊菩薩、普賢菩薩、千手観世音菩薩、弥勒菩薩が奉安)
追記1)江戸時代に成田山まで行くのは、片道2日くらいの行程です。江戸庶民もお金は大して持っていないので、まとまった旅行代が必要になります。これを助けたのが、“講”のシステムです。数人の仲間とサークルを結成し、定期的に集まった時に一人に皆がお金を渡すシステムです。お金がもらえる自分の番が回ってきた時には、晴れて成田山まで行けるお金ができます。講は色々な場面でも使われ、江戸庶民の大切な金融システムとして機能していました。東京では姿を消していますが、沖縄では今でも“もやい”として現代にも生きています。
追記2)市川海老蔵の名古屋公演が10月に御園座で行われ大盛況だったようです。不振だった御園座を満員にできる海老蔵は、やはり歌舞伎のスーパースターです。でも普段の彼の態度は、事件前とほとんど変わっていなかったと風の便りで聞きました。
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