2012年2月2日(木)

フリーデンファームの養豚事業、十勝野フロマージュのホエー豚

都市鑑定アドバイザリー(株) 不動産鑑定士 田中祥司

 最近読んで面白かった本が、大澤信一氏著書の「農業は繁盛直売所で儲けなさい!(東洋経済新報社)」です。その中で豚にまつわる話しが2章載っていました。

 まず一つ目が、神奈川で養豚業を営むフリーデンファーム。その基本方針は

・豚舎で飼う豚の数を減らし、豚にストレスを掛けない。

・餌に飼料米を混ぜて使い、美味しい豚を育てる。

・自分たちが育てた豚を使ったレストランを展開する。

・豚の糞尿を使って堆肥を作り、その堆肥で有機農法の野菜を生産する。

このような取り組みにより、2009年の売上はなんと約170億円!農業生産者イコール弱者のイメージで語られますが、170億円の売上は立派な上場企業並みです。

 フリーデンファームは銀座に「やまと」の店名でレストランを出しています。自分の店で豚の全ての部位を使った料理を自ら考案し、お客様に出す。こうすることで捨てる部位が無く、1頭の豚を有効利用できます。通常使う部位の他に、内臓煮込み料理、レバー料理、アキレス腱の煮込み、豚のタン(舌)、ミミガーなど提供しています。

     銀座2丁目「やまと」 餃子の「天龍」の隣

 野菜事業でも頑張っています。地元のスーパーしまむらと共同出資で「フリーデンファーム」を設立し、養豚所から出る畜糞で堆肥を作り、この堆肥でオーガニック野菜を生産。化学肥料を使わないことで、えぐみのない美味しい野菜ができ、これを全量スーパーしまむらに固定価格で納品しています。固定価格ですので市況に影響されず、安心して生産することができます。

 子豚が産まれてから平均185日出荷するまで掛かるそうですが、余裕のある豚舎(詰め過ぎない)で育てることで、ここは175日で出荷しています。

 岩手県の一関市大東町では、飼料米のプロジェクトを進めています。豚の餌に15%程度飼料米を混ぜることで、体重が10%から20%増加。飼料米は玄米のまま砕いて通常の餌に混ぜて与えます。元々は2003年から東農大、全農グループと研究を始めたそうです。肉質もリノール酸が減ってオイレン酸が増え、肉が締まります。ただ飼料米の生産コストがまだ高いため、餌代は高くなってしまう。米の反収を900kgまで増やせれば、採算には合うそうです。ここでも豚舎から出る糞尿を水田に還元し、肥料代を減らす試みもしています。

 もう一つの養豚業の話が、チーズ作りの途中で生まれる上澄み液”ホエー(乳清)”を使った北海道十勝の「ホエー豚」です。こだわりのチーズ造りをしている北海道札内村の赤部紀夫さんが、2000年にチーズ工房「十勝野フロマージュ」を開業しました。良質の生乳だけを使い、添加物を一切使わない高品質チーズだけを作り、現在の売上は1億円を超えています。

 十勝野フロマージュhttp://t-fromages.com/

 チーズの生産過程では、チーズ1に対してホエー9が産まれます。海外では豚の餌としてホエーを与えブランド豚を作っている国もありますが、日本ではホエーは今までは産業廃棄物として処理していました。赤部さんが地元の養豚家にホエーを餌で与えてみないか頼んで回ったところ、笠松さんという養豚家が使ってくれることになりました。ホエーを豚に餌として与えることで、豚が下痢をしない健康な体になり、今まで与えていた抗生物質を1/4まで減らせ、味も格段によくなったそうです。ホエーで育てた豚を使ったレストランが評判になり、ホエー豚として一気に有名になりました。

 ただ通常のチーズ作りでは生産効率を上げるために添加物を使っているので、大手チーズ工場のホエーは豚には与えられないそうです。小規模に丁寧にチーズを作っている工房と、手作りの養豚家が手を組んだことで一流ブランドのホエー豚が生産できたのです。

 飼料米で育てた豚と言えば、第一人者なのが平田牧場です。今では平田牧場の主力商品である三元豚、金華豚の全頭を飼料米で育てています。http://www.hiraboku.info/history.html

 牛肉より劣る存在として語られる豚肉も、ライス豚(飼料米育ち)、ホエー豚を量産化することで、その地位はもっともっと上げられると思います。いっそのこと、高級ブランドとして「ライス・ホエー豚」を作ってしまえば良いのに。

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