2012年12月12日(水)

地中熱利用ヒートポンプ

都市鑑定アドバイザリー(株) 不動産鑑定士 田中祥司

平成24年2月の新聞で、富士通長野工場で地中熱を使って工場内の冷暖房エネルギーの一部を賄うと記事が出ていました。プリント基板を加工するクリーンルームは温度や湿度の厳しい管理が必要で、空調設備を24時間稼働させており、地中熱を取り込むことで電気代を削減できる。投資額は7000万円で、大体14年で回収できる。従来の設備と比較し、燃料使用量を原油換算で年間約47キロリットル、CO2排出量を年間約120トン削減できる、と言う記事でした。

なるほど、地中熱、地下水の安定した温度を工場などの大規模施設の冷暖房に生かす。これは絶対に“有り”の発想です。この記事の通りであれば、14年で投資回収ができて(元が取れる)、15年目以降は長期間、地中熱の恩恵に預れるのですから。

地下水の温度は一年を通じて、大体10度~15度で一定。この温度を地上まで持ってこられれば、夏場は冷房に使え、冬場は暖房に使える。この外気温度と地中熱の差をヒートポンプを使って、冷暖房すれば電気使用量を相当に減らした冷暖房が可能となります。

ということは富士通の工場だけでなく、他社の工場にも勿論、全国の公共施設もどんどんこの地中熱冷暖房を導入できるはずです。市役所、病院、公民館、警察署に消防署。小学校、中学校、高校。地中に穴を掘って、空気か地下水で安定した地中の温度を取り出す。これをヒートポンプで冷暖房するだけなら、高度な技術も要らないし直ぐにでもできる省エネ法です。通る人が少ない道路や橋を作ったり、進出企業が無い工業団地を作ったりの意味の無い公共投資をするよりも、えらく健全な設備投資です。

企業が工場、事務所に地中熱利用の投資をやる気にさせるには、補助金等使わなくても、1年での一括償却や2年での割増償却を認めてあげるだけで可能です。利益を出している企業は、減価償却費の一括計上が可能なら将来の電気代節約のために、どんどん地中熱利用の投資をしようと思うでしょう。

もう一つの地中熱のニュースが、コロナ社が地中熱利用の家庭用エアコンを販売すると言うものでした。家庭でも長期的にエアコンの電気代が減らせれば、大変結構なことです。ただ、日経新聞の記事を読む限り、余り経済的メリットは無いようです。本体価格は室内機と室外機を合わせて約58万円。これとは別に掘削などの工事費用が100万円程度かかるとのこと。

同等の電気エアコン(10万~20万円)に比べて本体価格が高い上に掘削費用もかかるので、今のところは省エネへの関心が高い消費者へ売るしかないようです。今後は、地中に埋める管の掘削法を見直し、今後は工事費を削減する方策も探ると書いてありましたが。

“地中熱利用=大規模地熱発電“ と大げさに考えなくても、地中熱の正しい利用法は、地中熱ヒートポンプのように、いくらでもあると思います。現に米国、スウェーデンなどは地中熱を賢く利用しています。地中熱利用促進協会のY-Tubeの映像によると、地中熱ヒートポンプ設置台数は、アメリカは約120万台、中国で約50万台、スウェーデンで40万台の導入となっています。日本は、2012年で累計で1000件程度と桁違いに低い状況ですので、アメリカ、スウェーデン並みに頑張るべきです。

追記1)地中熱利用促進協会のY-Tubeの映像が参考になります。

http://www.youtube.com/user/geohpaj

追記2)地中熱利用促進協会によると、地中熱利用投資に関して補助金が出ます。

http://www.geohpaj.org/subsidy/index1/subsidy1

追記3)雑誌WEDGEの2011年4月号に、金沢市のカナイワと言う会社が取り上げられていました。地下水を利用したヒートポンプを施工する会社です。延床面積3000㎡の病院に導入事例があり、今までの重油のボイラーから転換したところ、年間1200万円のエネルギーコスト削減とCO2排出減ができた。設備・工事費合計は7000万円、そのうちNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)から1/3の補助金が出た。投資回収は、5、6年で可能、と書いてありました。

http://www.kanaiwa.co.jp/business/system.html

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