2013年1月28日(月)
日本の林業再生 手本となるのは林業大国ドイツ
平成24年11月12日NHK放送の「クローズアップ現代」。この日のテーマが「森林再生」でした。日本国内の林業従事者は5万人。これに対して、林業再生に力を入れて来たドイツは83万人いる。山林面積では日本の半分のドイツが、林業従事者が10倍いると言うのです。このテレビで聞いた内容を、概略まとめてみました。
我が国の木材価格は下落の一方で、杉丸太で言えば1980年に38,700円/トンだったのが、2001年には15,700円/トンにまで下落しています。このままでは衰退するばかりの林業。これを打破するために、2010年国家戦略会議で閣議決定されました。
内容は、“ 我が国の森林資源を最大限有効に活用して森林・林業を再生し、持続的な森林経営の確立と国産材の安定供給体制を構築するため、森林管理・環境保全直接支払制度の実施、路網整備、森林施業の集約化、フォレスター等の人材育成等を行うほか、森林による二酸化炭素の吸収・炭素の貯蔵機能を最大限発揮させるための森林整備・保全、公共建築物等における木材利用等を促進する。” と記載されています。すなわち ①生産力の強化、②需要増大、③人材育成 の3点です。
現状は、戦後に植えた杉林が今は切られずに放置されている状態。この膨大な成熟林が、言ってみれば莫大な資源になっていると言うのです。これを有効活用すれば、現在2割程度の木材自給率が、5年以内に5割まで引き上げられる。
この日本林業再生の良きモデルがドイツです。ドイツはここ何十年間で、木材生産力、従事者を著しく増大させています。ドイツの林業再生のキーマンになったのが、「森林官」という専門家です。森林官は一定の面積ごとに配置され、植林の状態、木材需要の把握、どこの木を切り出すのが一番効果的かを把握します。これを把握するためには的確な情報を取り、IT端末に即座に入力。各地の森林官と意見交換することで、無駄のない供給を達成します。
木材加工においては徹底的に自動化を進め、木材加工して行きます。そして木材を供給する地域内に、木材加工者以外に、住宅メーカー、家具会社、楽器製造会社、バイオエネルギー会社が揃っています。日本のように山林エリアは木材を切り出すだけ。加工も他所なら、住宅建設の他所の業者という仕組みではありません。
例えばハウスメーカーから、これまでより強度の強い材木が欲しいという要望が出ます。これを森林官が直ちに木材加工会社にフィードバックします。製剤所が求めるニーズは常に変化しているので、そのニーズの変化を森林官が捉えているのです。
日本の場合は、需要を無視して一方的に集められた木材が一層の価格下落を引き起こしています。住宅メーカーの求める木材精度に対応しているのはほとんど外国からの輸入材です。住宅メーカーが求めているのは、工業製品としての加工の正確さです。国産材はこのような設備投資を行っていないので、求めるレベルに対応できていません。
ドイツの木材産業は先端産業になっています。木材を搬出する道も整備されています。どこにどれだけ需要があるかも市場を掴んでいます。そして最後にはバイオマスエネルギー発電で、木材をとことん使い切る。
木は地産地消が基本です。日本では森林官の制度はありませんが、この役割を担えるのは森林組合です。林業再生プランでも、森林組合の役割に大いに期待しています。今までは木が若すぎたのが、丸々と太った現在が最大のチャンスです。
岡山県の西粟倉村は、総面積の95%が山林です。今までは間伐材を細々と出荷するだけでした。製材所運営の牧さんが、生産→一次加工→二次加工と、全ての工程を手掛けるようになりました。今までの最大の問題点は、需要者の求める加工レベルに無かったことに気付いたからです。木材は乾燥の具合で、反ったり曲がったりします。最先端の乾燥機を導入し、販路も自ら開拓。大阪のハウスメーカーに品質の確かさを懸命にアピールしています。
オフィス家具向けの木材タイルなども商品化しています。村の林業に対する意識はここ数年で大きく変わって来た。効率的な伐採を行うようになり無駄が無くなった。今年の木材生産量は3割アップしました。新しい雇用も40人生み出しました。
西粟倉村の森の学校主催者牧さんは、林業を村の総合産業にしたいと考えています。今は点レベルですが、これを早く面にする。一番の鍵となるのは“人材”です。精度の高い木材加工をするには、高度な技術が必要です。職業訓練の場も必要です。今は高度なテクニックを身につけるのに良い教材も出ています。公共建築物は、必ず地元産の木材を使うなどの支援策も必要。これらを黙々とこなせば、地域を支えるコアな産業にすることができるのです。
なお、この番組には厳しい意見を言う方もネット上いて、実現性のある話しなのかどうか、もう少し勉強しないと何とも言えない状況です。日本の林業が活性化して地方に職が増えれば、素直に素晴らしいと思ってはいるのですが。
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