2013年2月3日(日)

ワシントンホテル、藤田観光とワシントンホテルプラザが提携解消

都市鑑定アドバイザリー(株) 不動産鑑定士 田中祥司

全く資本関係の無い会社同士が、同一のビジネスホテルブランドを使って展開していたのが「ワシントンホテル」です。東京本社の藤田観光㈱と、名古屋本社の㈱ワシントンホテル(旧・名古屋国際ホテル㈱)がその当事者です。

ワシントンホテルの歴史は

・1969年に名古屋国際ホテル㈱によって名古屋にワシントンホテル一号店ができた。

・一方、藤田観光直営によるワシントンホテルの第一号は、1973年に札幌市に開業した「札幌第一ワシントンホテル」。藤田観光社長だった小川栄一氏が、名古屋国際ホテルと提携話をまとめた。

・それ以来、両社で次々とワシントンホテルを開業していった。一般のお客さんにはどちらも同じワシントンホテルであり、両者の提携により、西武のプリンスホテル、東急ホテルと同様、いち早く全国チェーンになりえた。そして、ワシントンホテルで使えるワシントンカードを発行した。

・ワシントンカードは、宿泊、食事をすることでポイントが貯まり、1万ポイントになると現金で利用者にキャッシュバックされる仕組み。すなわち出張が多いサラリーマンは、会社の経費で宿泊・食事をしてポイントが貯め、1万ポイントになると1万円が個人に入る(サラリーマンには嬉しい仕組みなのでリピーターが増える)。

・1997年に名古屋国際のワシントンホテルが、「ワシントンホテルプラザ」に改称してお互いに距離を置き始めた。それでもワシントンカードはお互いにポイントが貯められた。

・2012年2月には、藤田観光はイオン系のWAONカードに変更し、ワシントンカードの使用を停止。ウェブサイトでも、ワシントンホテルプラザの掲載を取りやめ、藤田観光自社のホテルのみを掲載するようになった。これにより名実とも、藤田観光とワシントンホテルプラザ(旧・名古屋国際ホテル)との提携は解消された。

藤田観光は、従来のビジネスホテルよりやや上級版のホテルを「グレースリー」として展開し、田町、銀座、札幌で開業しています。ワシントンホテルとグレースリーを合わせて、現在30カ所のホテルを営業中。広島、仙台、新宿歌舞伎町でワシントンホテルを開業準備中です。歌舞伎町は、1000室を超え大型ホテルで、所有者は東宝(すなわち阪急)です。まあ体も大きいので、それなりに新規展開も活発です。

一方、ワシントンホテルプラザはやや元気がありません。今後はより小規模で宿泊に特化したR&B(レスト・アンド・ブレックファースト)での展開を図るようです。

藤田観光にしても、ビジネスホテルは昔のようなドル箱にはなっていません。一番の理由は、バブル崩壊以降の強力なライバルの出現です。スーパーホテル、東横イン、ヴィアイン、APA等の低価格ホテルです。これらの新規ホテルの出店攻勢に、ワシントンホテルチェーンも今まで20カ所くらい閉鎖しています。

藤田観光の目白椿山荘で開業したフォーシーズンホテルも2012年に大きな動きがありました。開業当初はまだ珍しかった東京都心での外資系の高級ホテルとして人気を集めましたが、その後も続々と外資系の高級ホテルの出店が相次ぎ、次第に競争力を失っていきました。ウェスティン恵比寿、グランドハイアット東京(六本木ヒルズ)、マンダリン・オリエンタル東京(日本橋)、ペニンシュラ、リッツカールトン(六本木ミッドタウン)等で、フォーシーズンも目白に続き東京駅に出店しました。

ホテルの運営方針(価格政策、改装費用等)を巡って藤田観光とフォーシーズンズホテルとの意見がまとまらず、フォーシーズンホテルのブランドを返すことが決まったようです。新しい名称は「ホテル椿山荘東京」となり、隣接の椿山荘と一体運営されるようになりました(社員としてはこれの方が分かりやすくやり易いはず)。ただ藤田観光に入社したのではなく、フォーシーズンホテルだから入社したんだと言う社員もいるみたいで、多少はゴタゴタしそうです。

椿山荘という東京都心では随一の和風庭園を持っている優位性を活かし、ホテル椿山荘東京には今後もより頑張って欲しいものです。

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