2013年3月14日(木)

「木材なんでも小辞典」のまとめ

都市鑑定アドバイザリー(株) 不動産鑑定士 田中祥司

「木材なんでも小辞典」木質科学研究所と言う本を斜め読みして得た知識です。木に関して意外と知らないことだらけで、結構参考になりました。

1)樹の生きている部分は外側だけ

樹木の生きている部分は、外側の樹皮にあたる表層組織のみが生きている。外側に向かって、炭素を細胞壁として貯蔵していく。内部はそのほとんどが細胞が死んだ亡骸で、強固な細胞壁が縦横につながっている。

樹木は炭酸ガスと水からブドウ糖という有機物を作り、これが木材となっている。化学式で表せば、6CO2+6H2O→ 光が当たり光合成が行われることで →C6H12O6(ブドウ糖)+6O2(酸素) となる。

2)40億年前の地球は二酸化炭素だらけの星

学者の丸山茂徳氏によると、元々の地球は二酸化炭素で覆われた星であった。これが約40億年前の原始海洋ができると、大量の二酸化炭素が海洋に溶け、大気中の二酸化炭素の減少とともに、大気による温室効果が減少したと解析している。その後に光合成植物が出現し、二酸化炭素を有機物に換え、その代りに酸素を放出。現在のように酸素濃度は約20%となり、二酸化炭素濃度は0.03%にまだ下がった。

すなわち40億年前以上の地球は、二酸化炭素だらけであり、これが海と樹木、植物に貯蔵(固定)されることで低二酸化炭素濃度となっている。急激な化石燃料資源の燃焼により、貯蔵されていた炭酸ガスが大量に発生しているのが現在の社会。

3)現在の日本の二酸化炭素放出量

日本国全体では、炭素換算で3.3億トン。1人あたりだと2.5トンの炭素を排出している。日本の森林、国土の67%、総面積で25万k㎡が森林。この内9万4000k㎡(森林面積の約4割))が保安林。自然公園内にある森林は全体の2割相当。

普通の日本人が生活の過程で、米、パンを食し、呼吸することで放出するCO2中の炭素量は年間約80kg。77歳まで生きるとすると、6.4トンの炭素をCO2として排出することになる。

4)日本の森林資源

かつて山持ちと言えば、裕福の代名詞であった。その後採算性の悪い業種となり、現在の丸太生産量は、国内用材需要のわずか20%でしかない。樹木は成長し、使っていない分日本森林資源の備蓄量は増大している。現在の備蓄量は35億㎥。人工林10万k㎡を中心に、毎年約7000万㎥づつ増加している。

5)日本の代表的用材は、杉。丸太生産量の40%を占める。次に桧が12%。杉は日本酒造りと関わりが深い。桶や樽には杉が用いられた。その他には、赤マツ、黒マツは松やにの供給源として。蝦夷マツ、トドマツは良質のパルプ源として。ヒバは漆器などの木工芸品。サワラは風呂桶。ブナは腐りやすいと昔は嫌われていたが、近年は防腐処理技術の向上で家具、床材、合板、パーティクルボードなど、木材工業原料となっている。

6)杉の炭素貯蔵量

1本の杉(高さ15m)で乾燥重量で年間18.5kg太る。この半分が炭素。9.25kgの炭素吸収は、37kgのCO2吸収を意味する。日本の国土全体で2500万k㎡の森林があり、1年間で固定できる炭素の量は5400万トン(日本全体のCO2排出は3.3億トン)。

7)全世界の森林消失

年間消失速度は1540万ha(15.4万k㎡)。1分間に30ha。森林消失は地球が長年かけて貯めこんだCO2を排出していることになる。年間で約30億トンを排出している。森林伐採は、炭素吸収源としての樹木を減少させるだけでなく、森林内に貯蔵されている炭素を大気中に放出すること。考えを逆にすれば、新しくCO2が発生しているのではなく、今まで閉じ込められていたCO2が飛び出すと考える方が正しい。

8)解体材、古材の利用

解体材、古材は毎年約700万トンと大量発生しているが、ほとんど有効利用されず産業廃棄物として焼却処分されている。ようやく近年パーティクルボード、ファイバーボードなどの木質ボードや、紙パルプの原料として解体材を有効利用する技術が進んできた。今まで捨てられていた樹皮も粉砕して、家畜敷料や土壌改良剤、パーク堆肥(樹皮を刻んで発酵)として用いられるようになってきた。平成11年度ではパーティクルボードなので、リサイクルチップ利用率は51%まで達している。

9)校倉(あぜくら)造り

丸太組構造の建物を英語ではログハウスと言う。日本では伝統的に校倉造りと言う。従って奈良の東大寺正倉院は校倉造りなので、早い話しログハウスであったのだ。

10)デッキで使う木材

北米産のウェスタンレッドシダー(ベイスギ)が多く、一般住宅用のデッキ材として使われている。ヒノキチオールという成分があり、香りが高く腐りにくい。最近は防腐処理が進んでおり、かなり色々な木材をデッキ材として利用できるようになっている。

11)炭

木材を空気を絶って蒸し焼きにして作るのが炭。水分が飛び、リグリンが燃えて無くなり、最初の重さの約1/3の木炭ができる。炭の90%以上は炭素。木炭は内部がスカスカの状態になっており、1kg中の表面積は300㎡もある。木炭は腐ることは無く、白アリの食害に遭うこともない。炭素の永久的固定法と言える。木炭を主材料にした住宅の床下調湿材が関心を集めている。湿気が高ければ炭が湿度を吸収し、乾燥すれば炭から水分を放出する。炭は重量の10%~20%まで水分を吸着でき、繰り返し繰り返し吸湿と脱湿を行える。炭は500度~600度の高温で蒸して炭化した、数ミリから5ミリくらいのものが推奨される。

12)バイオエタノール

全世界で生産される木材の内50%強が燃料用としてであり、この傾向は途上国で高くなる。木を単純に燃やすだけではなく、気体や液体にして利用しやすくできる。その一つは、アルコール(エタノール)にすること。主には、エタノール(CH3CH2OH)、エタノール(CH3OH)、ジメチルエーテル(CH3OCH3)、メタン(CH4)、水素(H2)など。

メタンは有機性の物質を嫌気的条件(酸素の無い条件)にすると、微生物により有機物が分解され、低分子の酸が生成される。これが嫌気性の細菌により分解され、メタン、水素、CO2として放出される。メタンを酸化すると、CH4+O→CH3OHとなり、メタノールが得られる。

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