2013年7月18日(木)
フィリピンのクラーク経済特区事情
前の会社の先輩が、先月フィリピンの不動産事情を調査してきたと言うので、その話を聞きに行ってきました。
・成田空港からマニラのアキノ空港まで約3時間半で行ける。しかしマニラの町は車ばかり増えて常に大渋滞。調査に行ったのはマニラと同じ島のルソン島パンパンガ州クラーク経済特別区(アメリカのクラーク空軍基地があった町)。マニラから北へ70~80kmの距離。アキノ空港からマニラを脱出するのに2時間かかり、その後は1時間くらいでクラークまで行ける。ちなみにクラークから西へ40km位離れたところにアメリカ海軍基地だったスービックがある。
・高速道路はそれなりに発達している。これは日本がODAで作った物がほとんど。マニラから離れれば比較的快適に車で移動できる。
・経済が発展してきたとはいえ、まだまだ貧しい人達が多く、窃盗などの犯罪も多い。金持ちはスラム街から離れた5mくらいのフェンスで囲まれた安全な高級コンドミニアムに住んでいる。人件費が安いので、ガードマンが大勢いて、ゲートで不審者、部外者が入らないようにチェックしている。それでも結構高級コンドミニアム内でも盗難が多い。
・マニラでトランプ社が分譲している超高層高級コンドミニアムは、200㎡くらいのものが円換算で1億4000万円(約230万円/坪)。フィリピン人の物価感覚からはとんでもなく高い金額。ちなみにこのトランプ社は、米国のトランプさんとは直接の関係はないとのこと。
・庶民向けにもコンドミニアムが建設されている。この分譲主は、中国系、韓国系が多い。日本企業は法律があってないようなフィリピンで開発するほどの逞しさはなく実績はない。着工する前から売りはじめ、マンションが出来上がるにつれて価格が上がっていく。着工前に買うのが一番安いのだが、最後まで完成される保証もないのでリスクは高い。
・高層マンションでも昔は足場を竹で組んでいたが、今は鉄パイプで組んでいる。しかし日本のマンションのような丁寧さは全くない。柱は鉄筋コンクリート造だが、壁はブロックでできている。ブロックで作った壁に、左官工事でモルタルを塗って仕上げている。一緒に調査行ったゼネコンの人が、左官の腕だけは大したものだと褒めていた。今の日本の工事現場は、壁を石工ボードで仕上げることが多く、左官工事がほとんど無い。従って左官職人が減り、上手に鏝(こて)を使えない。その点、ブロック仕上げの壁にモルタルをガンガン擦り付けているフィリピン職人は鍛えられている。
・しかし床などは完成直後のマンションでも床がミシミシなって、仕上げも粗雑。エアコンもブロックの壁をくり抜いて、壁はめ込み型のエアコンを取りつけている。当然、エアコンの回りは隙間だらけ。それでもフィリピンの人をそんな些細なことを気にしない。庶民向けのマンションはそこまで徹底した安物に徹しないと、売値も安いので採算に合わない。クラークの町でこのようなコンドミニアムが20万円/坪台で売っている。もし日本のゼネコンがフィリピンに今後進出したとしても、高級住宅で勝負せざるを得ない。
・空軍基地は滑走路が3000m級の滑走路が2本あり、現在LCCを中心に飛んでいる。建物はアメリカ軍の使っていた建物をそのまま使っているので武骨なまま。日本からクラーク空港まで直接飛ぶようになれば、渋滞の少ないクラークエリアはかなり面白い存在になる。今後クラーク経済特区が発展すれば、他の国との空の便もより便利になるだろう。
・フィリピン政府は、クラークの広大な基地の跡地をクラーク経済特区として指定し、総合的に大規模開発を計画している。土地は売ることはせず長期で賃貸し、地元の若者を雇用する工場の進出や計画的住宅地開発を望んでいる。粗っぽい商売の中国系、韓国系と組むよりは日本企業に進出して欲しいと望んでいる。少し離れた海岸に行けば、きれいなリゾート地になる土地も多くある。今はまだ治安も悪くイメージも悪いが、将来性は大いにある町だ。
・フィリピン人は各地の言葉があり、現地語では会話が通じないことが多い。そのため英語を共通語で使っており、貧しい人達でも普通に英語が話せる。最近は世界大手企業のコールセンターが進出し、若い女性が多数雇用されている。世界の各国から掛かってくる製品クレームを聞き、その内容をまとめて本国のカスタマーセンターに送る。本国のカスタマーセンターは、彼女たちからもらった内容に従い、クレーム処理に対応している。
まだまだ治安が悪くて危険も多く、行きたいような行きたくないような話しですが、中国系、韓国系はここでも積極的に商売に勤しんでいます。やっぱり今から出て行かないと駄目なんでしょうね。
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