2013年7月24日(水)

小水力発電ベンチャーのシーベルインターナショナル

都市鑑定アドバイザリー(株) 不動産鑑定士 田中祥司

小水力発電ベンチャーのシーベルインターナショナル海野社長の講演を聞く機会がありました。聞くだけで儲かった気にさせてくれるほど、非常に有望な発電システムと思います。講演の内容をまとめてみました。

・小水力発電事業を展開する前は、長く上水道、下水道の設計関係の仕事に携わってきた。5年前に自腹でシーベルインターナショナル社を立ち上げた。3年前に東京都の優秀賞をもらい、次第に認知されてきた。それが、3.11で東北地方の過疎地のインフラが壊滅状態になり、何か月も電気が無い状態になり、このことで小水力発電が一躍地産地消のエネルギーとして注目を浴びるようになった。福島の原子力事故で、世界各国のエネルギー政策がガラッと変わり、ドイツも原子力発電を辞める決意をした。

・日本でも2012年7月から再生エネルギーの固定価格買取り制度(Feed in tarif、FIT)がスタートした。小水力発電では35.7円/kwhで20年間買い上げてくれる。ドイツも23円/kwhでスタートして、現在12円/kwhくらいまで下がっている。

・自分たちはメーカーだが、設計だけを行う会社。部品関係を色々な会社に発注している。鉄枠などは佐賀の中山製鋼、モーターは安川電機などに依頼している。自分たちの設計思想はとにかくシンプルにすること。特殊な部品は一切使用しない。できるだけシンプルにすることを心がけることで、使っているうちに部品が破損しても、地元の会社がすぐに修繕することができる。このようにすることで、製造コストもランニングコストも下げている。

・今まで実績としては15カ所だった。これが今年だけで40カ所くらい計画している。売り上げも2012年は1億数千万円だったが、今年は5億円くらいになりそう。今までは自治体からの調査依頼が多かったが、現在はNTT、三井不動産、外資系のファンドなどいろいろな会社から声が掛かっている。

・3.11前は色々な規制があった。今まで規制側にいた人たち・団体が、反対に推進側に一気に変わった。東日本大震災以降の2年間で、肌感覚として30年、40年分の変化(規制緩和)があった。

・海外での無電化地域の小水力発電事業の依頼も数多くきている。インドで3カ所、ベトナムで10カ所くらい関わった。日本の国際協力機関JICAの資金を使って、小水力発電所を作っている。

・大水力発電はダムを作るような大型の発電所。これ以外は小水力発電となるので、大きい規模から小さいものまで多岐に渡る。小水力発電が優れているのは稼働率。太陽光発電は12%、風力発電は20%。これに対して小水力発電は90%~95%とフル稼働している。小水力発電の300kwの施設は、風力の1500kw、太陽光の2000kwの設備と同等の発電を行える。

・自分たちが一番適地と考えているのが、全国津々裏にある農業用水路。基幹となる農業用水路だけで4万km(地球1周分)ある。これに支線を入れると、この10倍の40万kmとなる。この農業用水路は極めて計画的に水が流されている。日照りでも水田に水が枯れないように水が流され、逆に大雨が降って河川が増水すると水路には水を流さない。このように常に安定した水流があるのが農業用水路。ここに自分たちの小水力発電を設置すれば、太陽光、風力と違って、24時間安定的に電力を発電できる。

・シーベル社の小水力発電の工事期間は僅か3日。ダムのように長期間工事をすることは無い。シンプルな構造で、その場で組み立てるだけ。

・川の流れが一番早いのが真ん中の水流。この真ん中に水流が集まるように、逆ハの字の集水板を設置し突出力を増す。真ん中には、2本の歯車を立て、この歯車の間を水が流れることで歯車が回転し、電気を発電する。従来の小水力発電は高低差10m位必要だったが、シーベル社の製品は高低差3m以下で発電できる。これもひたすら3m以下でも発電できることばかり考えて、設計してきた成果。これにより大きな土木工事が必要なくなり、設置すればすぐに発電することが可能となった。

・FIT制度ができたおかげで、今の時代は誰でも発電会社になることができる。小水力発電は35.7円/kwhで20年間電力会社が買ってくれる。これも税金のおかげ。FIT制度の前は、電力会社に売るのは7~8円/kwhでしかなかった。

・経済産業省の小水力発電補助事業は、再生エネルギーの固定価格買取り制度(Feed in tarif、FIT)が使えない。税金による補助金を出して、FITを使うと税金の二重利用と言う考え方から。小水力発電補助事業に関しては、農林水産省の補助事業の方が使いやすい。当初の設計関係で100%補助金が出る。設備投資でも50%相当の補助金が出る。農水省もTPP対策として小水力発電に非常に力を入れている。今年の予算で10億円で、100カ所の導入を目指している。平成28年までに1000カ所着手を目指している。米、キャベツ、リンゴと同様に電気も農産物と考えている。

・A-FiveJ。㈱農林漁業成長産業化支援機構というファンドも国の金200億円で作られた。農業の6次化に資する事業にはA-FiveJが出資してくれる。小水力発電にもA-FiveJが資金を出してくれる。

・都内の電力の1%を使っている大口利用者は誰か?答えは、東京都水道局。蛇口をひねればすぐに水が出るようになっているのは、電気を使って高い圧力を掛けているため。逆にこの水流を使えば、電気を作ることができる。

・水の流れは、非常に濃い位置エネルギーを持っている。ゆっくりした津波が家々を破壊していくのもこの水の持つ位置エネルギーの力があるから。水流1m/秒は、風力の15mの風に相当する。1tの水が1m落下するエネルギーは、太陽が70㎡の面積に浴びせる太陽光エネルギーと同じ。大体農業用水路は、1.5m~2m/秒の流れであるので、これを使えば充分に発電が可能となる。幅2mの農業用水路で、1.5mの落差がある小水力発電であれば2時間で700円くらい売電できる。大体10kwの設備だが、年間で250万円くらい売電の売上がある。投資額が1500万円なので、大体6年間で設備投資を回収できる計算になる。勢いよく流れている水を見れば、お金がお札が流れているように見えてくる。

・火力発電所、原子力発電所は熱くなり過ぎた炉を冷やすために、常に大量の水を流している。原子力発電所だと炉を冷却するために毎秒100tの水が必要。この水を使えば、小水力発電は十分可能。

・農業用水路で発電をすると言う行為は、水の勢いを止める行為でもある。従って、適度な水の流れを残しながら発電することが肝要。

・まず太陽光発電に企業、投資家が群がった。太陽光発電の先を読んだ流れが、今は小水力発電に来ている。大手不動産会社、大手エネルギー企業、大手通信会社といった大企業もシーベル社に続々と相談に来ている。

・水利権の規制はもちろん残っているが、それでも大分やり易くなった。今まで雨が降って流れてくる河川の水利権は国土交通省が全て管理していた。河川を使う権利は専用使用権を取らなければならなかった。これが2級河川に関しては、県・市の自治体に管理が移り、利用しやすくなった。

・王子製紙、日本製紙等の大手製紙会社は小水力発電の発電所を今までも持っていた。大手鉄鋼会社も小水力発電の発電所を持っていた。昔から利用されていたごく普通の発電方法。

・山梨県の都留市の小水力発電は、SPCで投資をしている。個人が利益目的のためだけに農業用水路を利用して発電するのは困難だが、公共性を持たせればやり易い。

・現在超大手企業と栃木県内に200kw、2.5億円の投資を予定している(125万円/kw)。ここが稼働すると年間4000万円~4500万円の売電収入が見込める。ランニングコストを除いた後でも6年くらいで投資額を回収できる。場所は那須野原で、15kmの疏水を利用する。300mごとに小水力発電所を設置し、今年は20カ所。全部で40カ所を作る。

・10kwくらいの発電能力の機械で1000万円くらい。これに諸経費を加算すると総投資1400万円~1500万円(140万円/kw~150万円/kw)。設備が大きくなれば単価は下がる。20kwの発電能力だと、総投資2000万円(100万円/kw)くらいでできる。

・千葉県手賀沼の放流部分には設置している。

・発展途上国の少数民族が暮らす地域に小水力発電を設置すると威力を発揮する。インドで製作したケースでは、日本の半分のコストで済んだ。ミャンマーは電化率15%だが、電気の来ていない地域でもエンジンジェネレーターで発電し、70円/kwで売電するビジネスをしている。我々の小水力発電を導入すれば、15円/kwで電力を供給できる。河川にもコンクリート製にするような工事は行わず、石を積んで対応している。インドには東日本インド会社が設置したヒマラヤから流れてくる水を利用した小水力発電所が今も健在で多数残っている。

・メンテナンス費用をとにかく低コストにするため、特殊な部品は一切用いないと言うのが我々の設計精神。壊れても直ぐに現地で修繕できる。各部品の耐用年数は充分高い物を使う。通常ベアリングだと4~5年、モーターは5年くらいでオーバーホールが必要。モーターも錆びたら塗装していれば20年間持たせることができる。

・シーベル社の発電機は流れてきた木、葉なども水の勢いで一気に下流に流してしまう。面白いのは流れてきたものを柵などで止めて、これを人為的に下流に流すとゴミの不法投棄になること。流れてきたものをそのまま流してしまえば不法投棄にはならない。

・効率良く発電機を回すには、最適の水深の深さがある。手動で水深を変えられるようになっており、時期によって違う農業用水路の水量に合わせている。水の量、流れの速さ、形状と言うパラメーターにより形状を変えなければならない。パラメーターの非標準の場所の標準化が自分達の強みであり特許となっている。

・農業用水路は完全に人が管理している。太陽光、風力のように自然任せのエネルギーとは根本から違う。電力の発電量も放流量を変えることでコントロールができる。

・農業用水路にも2種類ある。慣行用水路と許可水路。慣行用水路は大体30%くらいで、水利組合でデータが取られておらず国交省も困っている。70%くらいは許可水路で、各地にある土地改良組合が長年管理している。許可水路を小水力発電に利用しようとすれば、すぐに設置できる。

・土地改良組合は全国に5500組合くらいあったが年々減少しており、現在5000を少し割った。将来は3000くらいにまで減ると言われている。土地改良区のトップが自民党の野中元衆議院議員で、民主党政権時にここに配られる補助金が1/3に減らされた。自民党になってまた予算が元に戻った。農林水産省としても土地改良区には何とか儲けてもらいたいと考えており、こことは上手く組む必要がある。

・電気を買ってくれるのは既存の電力会社だけではない。エネット等の電力卸売会社(PPS)は、さらに2円/kwhくらい上乗せして電気を買ってくれる。最近は生協も電気を作るようになっている。

なるほど、発電稼働率が高く安定した小水力発電は非常に有望なエネルギー資源です。kwあたりの投資単価が高くても発電稼働率が高ければ、太陽光発電、風力発電の半部くらいのコストで電力を作れそうです。地元水利組合と組んで、地元地銀に融資をしてもらい、農林水産省の補助金もちゃっかり使う。このような仕組みで行けば、相当に儲かりそうな気がしてきました。

シーベルインターナショナルHP http://www.seabell-i.com/about/

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