2013年7月27日(土)

エネファームは採算に合うのか?

都市鑑定アドバイザリー(株) 不動産鑑定士 田中祥司

2010年の秋に「省エネルギーから創エネルギーへ」という無料の講演会が大手町の日経ホールであり、聞きに行きました。これからは、ガスを使ったエネファームで家庭で電気を作ろう。これが創エネルギーだという講演内容です。

最初の半分を少し眠い説明で大学教授が講演し、後半は東京ガス、パナソニック等の企業側(スポンサー)の人達が出てパネルディスカッションを行いました。当時(3年前)の価格は確か定価300万円を超えていたと記憶しています。

水に電気を通すと、水(H2O)が水素(H2)と酸素(O)に分かれると言う実験を理科の授業でやりましたが、その逆がエネファームの理論となります。すなわち、“都市ガスから水素を取り出すと、水素が空気中の酸素とくっ付き、電気と熱が生まれる。”このように水素から電気を生み出し同時に熱を生み出すのがエネファームと言うことになります。

家庭で電気を毎日何kw発電しているかを見るのが楽しい、お風呂のお湯もエネファームで賄えると言う説明でしたが、300万円も投資して従来の電気とどっちが得かと言うと、従来型の圧勝でした。経済性の面で負けては、「よし環境に良いから家庭に導入だ」とはなりません。エネファームが普及するには相当先の話しなんだと思っていました。

1か月前うだるような暑さの中、目黒区の物件を調査の折、東京ガス営業所のエネファームの宣伝のぼりが目に入りました。うーん、時間もあるから向学のためにエネファームの説明でも聞いてみるかと東京ガス営業所に入り、そこで教えてもらったのが下記内容です。

・電気消費地から遠く離れた発電所で発電し、送電線を伝わって遠くの消費地にまで電気を送っているのが現在のシステム。エネファームはこれを家庭で発電し利用するシステム。併せて家庭で使う熱エネルギーを賄える。従来の大規模発電所のシステムだと、エネルギー効率は37%しかない。エネファームのエネルギー効率はで85.8%と無駄なく使っている(内訳は電気利用35.2%、廃熱利用50.6%)。

・エネファームを使うと大体一般家庭の約半分の電気を賄える。残り半分は従来通り、電力会社の電気を使って頂く。何故半分かと言うと、このくらいの発電量が家庭で使う給湯量(お風呂や床暖房用)と丁度バランスが取れるため。発電量だけ増やしても、折角温まったお湯を捨ててしまうことになる(お湯の使用量に合わせて発電量を決める)。0.75kwのシステムで7時間稼働させると約5kwhの発電量。一般家庭の1日あたり電力使用が9kwh~10kwhなので、電気は半分賄える。発電し熱を丁度良く利用すると言うのが、エネファームの真骨頂。

・ガスを使って発電するのでガス代は当然増える。その代わり電気代が節約できる。この差は、平均すると年間で5万円~6万円得する計算。

・エネファームのユニットは、3つで構成されている。①燃料電池ユニット(水素と酸素を化学変化させる本体、パナソニック製)、②貯湯ユニット、③バックアップ熱源器(エネファームだけでは足りない場合を想定して、通常家庭で使っている24号機のガス湯沸し器を設置)の3つである。

・この3点セットを定価199.5万円で売り出している。実売では設置工事費込みで、170万円くらい。24号機のガス湯沸し器だけでも正規料金40万円~50万円(これは東京ガス価格なので、安い業者は30万円前後)。ガス湯沸し器は今までも家庭で使っているので、これを除いた投資額は、170万円-24号機湯沸かし器30万円≒140万円と言うことになる。

・東京都の場合、国からの補助金45万円、東京都からの補助金22万円の合計67万円が出る。それに区・市からの補助金があるが、制度がまちまちであり、区・市からの補助金はあまり期待しない方が良い。ちなみに目黒区の場合は12件だけに年間5万円補助金を出すとなっているので、もらえる確率は相当に低い。

・3年前にエネファームが出た時には、300万円以上の価格だった。これが今は当時の60%くらいの価格になり、大きさもだいぶコンパクトになった。

・投資額(設置工事込)が170万円とし、補助金67万円をもらうと、純投資額が103万円。年間6万円の燃料が得とすると、投資費用が元になるまで17年掛かる。但し、24号機の湯沸かし器で30万円入っているとすれば、投資額は103万円-30万円=73万円。73万円÷6万円/年≒12年で回収できることになる。

・今後シェールガスが日本に入り、ガス代が今より安くなると予想する向きもある。今年になってからエネファームを設置したい申し出は相当に増えて来ている。

補助金控除後とは言え、12年くらいで回収できるのであれば悪く無いシステムです。3年前に話しを聞いた時よりは、経済的にもかなり現実的になっています。あと、もう一段の努力で価格が総額100万円くらいになり、かつ20万円~30万円の補助金が付けば、爆発的に家庭にエネファームが広がるはずです。

エネファームに加えて価格が大幅に下がりそうな蓄電池。5kwhくらいの容量を持った蓄電池が100万円くらいで売られるようになれば、エネファームと蓄電池のセットで、電力会社から日中電気を買う必要はほとんど無くなりそうです。

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