2013年8月7日(水)
浅草の神谷バー、牛久のシャトーカミヤ、合同酒精を育てた神谷傳兵衛氏
茨城県牛久駅近くに「シャトーカミヤ」があります。きれいなヨーロッパ風庭園の中に、数棟の煉瓦造りの建物。ここが茨城なのか?と思うような、洒落た空間です。実はここが日本で一番最初に本格的ワイン醸造が行われた場所なのです。このワイナリーを作ったのが、神谷傳兵衛氏。神谷傳兵衛氏が独立して最初に「みかはや銘酒酒店」として開業したのが、現在の浅草雷門通りの「神谷バー」。神谷傳兵衛氏が甘ったるいワインの「蜂印(はちじるし)葡萄酒」で大当たりし、酒造メーカーとして大きく育てたのが合同酒精(持ち株会社はオエノンホールディングス)なのです。この神谷傳兵衛氏について、シャトーカミヤのHPの内容を抜粋しまとめてみました。
・神谷傳兵衛は1856年、三河に生まれる。地元の酒造家が豊かな暮らしをしているのを見て、小さい頃から酒を扱う商売をしたいと憧れる。10代で横浜のフランス人経営のフレッツ商会で働き始める。17歳の時に突然の腹痛に襲われ、衰弱の一途。これがワインを飲むとみるみる回復。ワインの滋養効果を身を以て知ることができた。
・当時のワインは極めて高価な品物で、誰もがおいそれとは飲めるものではなかった。これを日本人が普通に飲めるような価格で届けたいと思うようになる。
・天性の商才があった傳兵衛は、24歳の時に独立。1880年に浅草で「みかはや銘酒酒店」を開業し、にごり酒の一杯売りを最初に行った。ようやく日本でも洋酒が売れるようになり、輸入葡萄酒を日本人に合うように甘く味付けした葡萄酒を製造。これが「蜂印香竄葡萄酒(はちじるしこうざんぶどうしゅ)」で、爆発的に売れた(1881年)。
・蜂印葡萄酒の成功後も、自分でワインを国内で醸造したいと気持ちは変わらなかった。働き者で研究熱心だった小林傳蔵を養女の婿とし、傳蔵をフランスボルドーに渡仏させ、ワイン造りの修業に行かせた。3年後に傳蔵がフランスから戻り、現在の牛久市に23町部(23ha)の畑を開墾し、6000本のブドウ園を作った(1898年)。
・1903年(明治36年)に本格的なワイン醸造所の「シャトーカミヤ」が完成。このシャトーカミヤの完成から20年後に神谷傳兵衛は66歳で死去。
牛久が日本のワインのスタート地点だったのか、知らなかった。牛久市ももう少し上手にアピールすればよいのに。
私が小学校の頃はまだサントリーの「赤玉ポートワイン」やこの「蜂印葡萄酒」が普通に売っていて、ワインは甘いものと思っていました。中校生くらいに飲んだ本物のワインは、なんて辛くて酸っぱくて変な飲み物なんだと思ったものです。神谷バーと言えば、甘ったるい「電気ブラン」が有名です。ブランデー、ワイン、ジン、ベルモット、キュラソーなどをブレンドしたお酒で、1893年から販売しこれもヒット商品となります。
今でも浅草の代名詞になっている神谷バーは1911年に開業。元々あった「みかはや銘酒店」を西洋風に改造し、日本初のモダンな西洋風バーとして生まれ変わりました。
神谷傳兵衛氏は、蜂印葡萄酒、電気ブランをヒットさせた後の1900年(明治33年)に、日本酒精製造株式会社を開設して、日本で民間初のアルコール製造を開始しました。1924年に北海道内の焼酎製造会社4社(神谷酒造株式会社旭川工場、東洋酒精醸造株式会社、北海道酒類株式会社、北海酒精株式会社)が合併し、旭川市に合同酒精株式会社を設立し、これが合同酒精となります。2003年には日本酒の「冨久娘」、2007年に同じく日本酒の「北の誉」を子会社化しています。現主力商品は焼酎の「ビッグマン」、「鍛高譚(たんたかたん)」、「グランブルー」などです。
今の合同酒精は同業のサントリーに比べかなり置いて行かれてしまいましたが、日本の洋酒文化を最初に作ったのが神谷傳兵衛氏であることは間違いありません。
追記1)合同酒精の持ち株会社はオエノンホールディングス。HPでは、オエノンのネーミングの由来を“すべてのものをお酒に変える力を持つという伝説の女神、「オエノ」。ギリシャ・ローマ神話では「オエノ」は酒神「バッカス」にその力を授けられました。いつまでもお客様と喜びを共有するために、新しい商品・サービスを常に提供していきたい。 これがオエノングループの理念です。”と書かれています。しかし、名称をオエノンにして10年経ってもメジャーになっていない現状、ちょっと滑ってしまった感じは否めません。
追記2)シャトーカミヤHPでは、「神谷傳兵衛氏は、実業家以外の諸名士とも交流がありました。政治家では勝海舟、山岡鉄舟、榎本武揚、曽根荒助、板垣退助、土方久元、軍人では大山巌、児玉源太郎、西郷従道らと親交があり、多くの偉人たちがシャトーカミヤを訪れました。」と書いてあります。これだけの著名人が来ているのは驚きです。折角取った写真を施設内に飾っておけばより多くの人が訪れ、収入も上がり、3.11で壊れた箇所の修復にも手が回るのでは。
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