2014年1月20日(月)
さつまいもを畜産業の飼料に
さつまいもを使ってバイオマス発電するという近畿大学の鈴木高広教授の新聞記事が出ていました。4段組みの多層棚を用いてで20kg/㎡を生産できる方法を確立したというのです。1㎡で20kgということは、1反(10a)で2万kg(20トン)!米が大体500kgだからその40倍も!
本当かよと思いながら読み進むと、4段組みというのがプラントボックスを積み上げて作るのだそうです。これだと10㎡の世界では可能であっても、100haの世界では絵空事です。でもバイオマス発電に使えなくても、畜産業の飼料には使えるのでは。そう思って、関連記事を調べてみました。
さつまいもは、飼料用としても極めてすぐれた作物で、つる・芋ともに自給飼料として昔から普通に使われていたのだそうです。日本の気候風土に適し、栽培しやすく、単位面積当たりカロリーが最大なのがさつまいも。高収穫の品種だと約3か月で、つる・いも合わせて10a当たり3tの生産量くらいの収穫がある(米が大体500kgなので、米の6倍の収穫量)。年に2回作れば10aで6t取れる計算です。米の生産コストが大体200~250円/kg。同じ面積で米の10倍以上生産できて、米作りより手間がかからないで作れるさつま芋は、効率的生産可能な飼料となる計算です。
現在の飼料はほとんど米国からの輸入配合飼料です。農家購入価格が67,000円/トンから70,000円/トンなので、大体70円/kgくらい。とうもろこし、大豆かす、大麦などいろいろ混ざっているのでバランスも良く飼料として使いやすいのでしょうけど、価格だけならさつま芋も十分伍していけるはずです。
ちなみに平成24年度の輸入穀類飼料は、とうもろこし(約1049万t)、こうりゃん(約146万t)、大麦(約106万t)、小麦(約89万t)、大豆油かす(約200万t)と合計約1590万t。この1/4の400万tをさつま芋で賄おうとすると、年2回高収穫品種を植え6t/10a(60t/ha)の生産量として、400万t÷60t/ha≒67000haの畑があれば可能な計算です。耕作放棄地が40万haもあるので、その一部を使うだけで成り立ちます。
さつまいもの収穫、調製、貯蔵の諸作業に労力が多くかかり、畜産農家に負担が掛かると書いてある記事もあります。これだって畜産農家が直接作らなくても、さつまいも専門飼料会社が乾燥さつまいも飼料を作れば解決するはずです。
日本の畜産業が飼料の大部分を外国産穀類の輸入に頼っているので、農林水産省発表のカロリー自給率は低くなる一方です(輸入資料で育てた畜産は自給にカウントされない変な制度)。日本の気候風土に適して、栽培しやすく、単位面積当たりカロリーが最大であるさつまいもの飼料化はもっと積極的に推進した方が良さそうです。
農水省は、飼料用米の補助金は10アール当たり最大10.5万円という大盤振る舞いの補助金を出しています。でも、飼料用米より飼料芋を奨励した方が、何ぼか効果はあると思います。
追記1)「かごしま黒豚」を商標として使うには、肥育後期に飼料含量あたり20%のサツマイモを与える事が義務付けられています。黒豚は、ランドレース種などのいわゆる白豚より体がひとまわり小さく、肉質が良く、筋繊維は細かくて弾力があり、適当な歯ごたえがあります。この黒豚の味を支えている一つがさつまいもだったのです。
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