2014年8月1日(金)
コシヒカリにこだわらない米作り
2014年1月4日の日経新聞記事に、103haの田を理想的に運営している茨城県龍ケ崎市横田修一さん(37歳)の記事が出ていました。
・龍ケ崎市の農業人口はこの20年で半減。後継者不足、高齢化のため引退する農家が後を絶たない。農業を辞めた方150人から農地を預かった。現在の耕作面積は103ha(国内平均は2ha)。1996年に両親が法人化した横田農場を継いだ。
・経験の浅さは、多品種栽培と作業の効率化の両輪で補っている。外食チェーンなどで人気の「あきだわら」を栽培。ずばぬけたツヤ、味はないが大量生産しやすい。
・周囲の農家がコシヒカリ一辺倒なのに対し、6品種を栽培。1週間づつ収穫時期が異なるので、繁忙期の作業を分散化できる。農業生産法人の社員10人で、田植え機、稲刈り機は1台づつで足りている。
・横田さん曰く「高価で良質の米の生産だけでは生き残れない」
・販売は農協に頼らず、9割をスーパーやネットで直売する。
・現在の103haの農地をゆくゆくは400haまで拡大し、大規模経営を極めたい。
上記の中で一番効率的なのが、コシヒカリにこだわらないで多品種の米を作っているところです。品種が違うことで、それぞれ時期をずらして田植えができ、稲刈りができます。当然農作業の人員も平準化できます。
私の茨城県の親戚も1haに満たない田んぼで、ほぞぼそと米を作っていますが、農業機械だけは田植え機、稲刈り機、脱穀機に乾燥機まであります。絶対に儲からない、とてつもない金のかかる趣味の世界を構築しています。
10a(300坪、1反)で取れる米の量は通常500kg前後。1haだとその10倍なので、5000kg(5t)。年々下がっていますが、農協に卸せる価格は60kgで1万1000円から1万2000円(約200円/kg)。1haの米作りをしてもせいぜい200円/kg×5000kg≒100万円の収入しかなりません。それなのに、数百万円の機械を用意しても全く元が取れません。
しかし、この横田農場のように100ha経営すれば、上記の100倍で、1億円の売上になります。育苗代、農業用水路の利用料、肥料、除草農薬費、機械の減価償却費などのコスト比率が50%だとしても、人件費を除いた手取りで5000万円が残ります。
そしてただ米を作るだけではなく、売り先もしっかり持っています。スーパー、大手飲食業、ファミリーレストラン等。個人に対してはネットで販売。本当は地域の農協がこういうことを仕掛けるべきなのでしょうけど、コメに関しては上部組織との関係でできません。
もう一つ米作りでコストダウンを図る手段が、直播の手法です。日本の伝統的米作りでは、ビニールハウス等で苗を育てて田植えをします。これを米国の米作りのように、田んぼに直接米を撒いて育てる手法が直播です。今までの直播のやり方だと、野鳥に撒いたモミ米を食べられて上手く育てられませんでした。
最近は撒くモミに鉄の粉をまぶして、水田に撒いたらすぐに沈むようにする方法が考えだされました。これで上手く育てば、苗を作る工程と、田植えの工程を省くことができます。鉄コーティングなので、“鉄コ”と呼ばれています。クボタ電気のHPでは、「育苗作業が不要で、種苗費や資材費、労働費などの削減が図られ、約36%の生産コスト低減が見込まれます。」と書かれています。
また、「移植栽培(従来の田植方式)より出穂期・収穫期が移植栽培より遅れるので、作期分散が図れ、機械や施設の効率利用ができます。移植栽培と直播栽培を組み合わせることで、稲作経営規模拡大が可能になります。」とも書かれています。
農地の大規模化、多品種米生産で生産時期をずらす、モミ米の直播、需要者への直販等でやる気のある生産農家は充分残っていけるのではないでしょうか。
追記1 新米の時期になるとテレビ局のレポーターが「美味しいコシヒカリですね」と、コシヒカリでなければ米ではない的に発言しています。でも、実際に米のブランドを当てることはかなり難しいと思います。昨年、宮城県大崎市の米作り農家さんを訪問した折、コシヒカリ、ササニシキ、つや姫、後もう1種類の4種類の御飯の食べ比べをしました。正直、よく分からなかったと言うのが感想です。多分、あきだわらをコシヒカリだと言われて食べても、違いは指摘できません。味が大して変わらなければ、作り易くて、量が多く収穫できる米作りをするのは理に適っています。
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