2014年8月10日(日)

中国人を満足させる自然満喫ツアー

都市鑑定アドバイザリー(株) 不動産鑑定士 田中祥司

 中国の環境破壊は留まるところを知らないほど汚染が進んでいます。

・空気汚染

 今では九州地方まで届いてしまうPM2.5。本土の北京、天津、上海などの大都市は相当にひどい状況になっています。外出時のマスクは当たり前。以前は家に帰ればまだ寛げたのが、現在は家の中まで微粒子が入り込み、安心できる場所がありません。年間100万台売れる空気清浄器のうち、日本勢はパナソニック、シャープ、ダイキンで4割売っています。

・河川・地下水の汚染

 工場から垂れ流しの廃液が河川、地下水を蝕んでいます。もちろん汚染水排出禁止の法律はありますが、守らない事業者が多数います。河川に流すとばれるからと、わざわざ地下水に廃液を流す事業者までいるそうです(中国語で「盗排」)。地下水の汚染は除去できないでしょうから、こんな状況が10年続いたら絶望的です。

・水道水の汚染

 北京などの中国北部は極度に水が不足しており、南部から水を送るまで追い込まれています(この北部に水路を引く大事業が「南水北調」)。飲み水となる河川でさえ、赤い色や、緑色になった映像も見られます。地下水もかなりの割合で汚染されています。蛇口から出てくる水道水は飲めないので、大都市住民はペットボトルの水を買って飲んでいます。でもこれもお金が掛かるので、仕方なく水道水を煮沸して飲んでいる人も数多くいます。

・農地、農作物の汚染

 農業用水も汚染が進んでいれば、当然できる作物にも影響がでます。また農業生産の現場でも、除虫の農薬、化学肥料を必要以上に大量投与が行われています。ベトナム・ハノイのテレビ取材でしたが、中国野菜を食べる時には専用の洗剤で20分野菜を洗わないと食べられないと放送していました。 

 普通に空気を吸って、普通に水を飲んで、汚れていない河川・湖沼を見て、何も気にしないで野菜を食べる。当たり前のことが当たり前で無くなっているので、中国都市住民はこんな日常のことに大きな憧れを持っているはずです。特に、食うや食わずの庶民と違って、金を持って生活に余裕のある人たちには。

 富士山が中国人に人気で、その後に多くの人が忍野八海に行くとニュースで見たことがあります。忍野八海の風景を見るのが楽しいのではなく、汚染されていない清水が湧いてくるのをずっと見ていたいということなのかも知れません。きれいな清水、清流が流れているところなら、どこの場所でも喜んでくれるのでは。

 それなら、日本に旅行に来る中国人旅行者に、“新鮮な空気を吸ってもらう。きれいな湧き水を飲んでもらう。清流で水遊びをしてもらう。オーガニック野菜をその場で食べてもらう。”こんなツアーが成り立つのではと考えました。

 場所はどこでも良いのでしょうけど、成田空港から近い市原市の養老渓谷に当てはめてみました。成田空港に着いた中国人観光客が 

観光バスで養老渓谷まで行く → 養老川の清流で裸足になり遊ぶ → 魚や沢がにを捕まえて遊ぶ → 渓谷の湧水をその場で飲む → 農家さんと畑に行き、一緒に無農薬(オーガニック)野菜を採る → 採った野菜を農家レストランでランチ → 森林を散策し森の空気を肺の奥まで吸い込む → 森林の中で虫の鳴き声、鳥のさえずりを楽しむ → 森の中にある露天風呂を楽しむ → 農家レストランで夕食 →  真っ暗になってから満天の夜空を楽しむ(普段見られない星空) → 近隣の温泉宿で宿泊  みたいなコースです。

 一日中、森に囲まれた自然の中で、中国社会では普段したくてもできない体験をする。翌日は木更津の三井アウトレットパークで買い物を楽しみ、東京アクアラインであっという間に東京都心に行ける。都会から1時間くらいで行ける場所に贅沢な自然が残っているのを実感してもらうのが肝要です。無理な経済成長で失ってしまったものは何かを実感してもらう。息苦しい北京、天津、上海から来たツアー客は、必ずやリピーターになってくれるはずです。

追記 外国人観光客が益々増加する中、従来にはなかった新しいツアーが増えていると新聞記事に出ていました。その代表が、「フルーツもぎ」ツアーです。桃、リンゴなどは、鈴なりに沢山の実を付け、見ているだけで幸せになります。これを自分で採ってその場で食べる。外国人ツアー客に流行るのも分かる気がします。

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