2014年11月12日(水)

農産地を救う株式会社ネピュレ

都市鑑定アドバイザリー(株) 不動産鑑定士 田中祥司

 2014年10月にテレビ東京「カンブリア宮殿」で放送されたのが、秋田県八郎潟のあきたこまち生産者協会会長の涌井徹氏でした。

 若い頃から減反政策に反対し、食糧管理法時代にヤミ米と叩かれながら直接都会の人にコメを直販。そういう努力の元、一人当たり生産面積を拡大し、TPP施行後も外国産米に価格で負けないよう低コスト化を図っている。

 それでも落ち込むコメ消費(一人当たり平均消費量年間56kg)の現実があるため、何とかコメの消費拡大ができるよう他用途を仕掛けている。その一つがパン生地に練りこめる「コメネピュレ」であり、将来は1000億円規模を目指すと言う内容でした。

 そうか、食管法の時代には検問所で都会へコメを運ぶトラックを止められたり、ヤマト運輸が都会へ宅配できないように圧力を掛けられるなど大変な苦労をしてきたのだと理解できました。

 コメネピュレは、ふわふわしたハンペンのような、マシュマロのような代物で、パン生地に簡単に練りこめます。小麦のパン生地に20%くらいコメネピュレを混ぜる。コメの持つ甘さが入り、普通のパンよりしっとり感が得られる(粉であるコメ粉を混ぜるだけだとしっとり感は出ない)。既にポンパドゥール、ナチュラルローソンでコメネピュレ入りパンが販売されています。

 この涌井さんが多大な期待を寄せるコメネピュレについてネットで調べてみました。すると株式会社ネピュレと言う会社が主導している事実を知りました。ネピュレ社のHPを見ると、下記内容が書かれています。

・株式会社ネピュレ概要 http://nepuree.com/

 セブンイレブン出身の加納勉氏(石川県出身)が2000年に創業した会社。本社:東京都中央区京橋2-11-6。資本金:4億327万円。事業内容:食品素材の企画、研究、開発、製造、及び販売。

 元マイクロソフトジャパンの代表だった成毛眞氏の投資ファンド「インスパイア・テクノロジー・イノベーション・ファンド」も2010年に出資している(流石、目ざといな)。

・ネピュレ製法

 ネピュレとは農産物を余すことなく素材そのものをピューレ状にした新しい食品。通常のピューレは、ミキサーで素材を細かく切り刻み、裏ごしして作る。従来のピューレに対比する造語として、ネオ+ピューレで「ネピュレ」と命名。特殊な新技術で加工することで、作物の細胞組織の破壊や栄養分の流出を抑えることを可能にした。農産物を無駄なく全て使い切ることで日本農業の活性化にも繋げられる。

 製法は農産物(コメ、ニンジン、玉ねぎ、カボチャ、ホウレンソウ、ブロッコリー、キャベツ、ニンニク、リンゴ、イチゴetc.)に過熱蒸気処理を行う。この過程で酸素が排除され、素材は酸化することなく加熱処理される。その結果素材の本来の味、香り、色、栄養価が損なわれない。次に優しい遠心分離技術で、加水することなくピューレ状にする。

・ネピュレの特徴

 ネピュレ社のHPには特徴として以下の5点がうたわれています。1)際立つ美味しさ 2)保たれる栄養価 3)無駄にしない栄養価 4)調理用素材としての利便性 5)安心の無添加

 

 細胞レベルで言えば、通常のピューレだと細胞が潰される(旨みも風味も破壊)のに対し、ネピュレによる製法は細胞がほとんど壊されないことから素材の旨み、風味、香りが残るという理屈です。茨城県アビー社のCAS(Cell Alive System)冷凍技術が、細胞を壊さないで冷凍する技術なので、ネピュレも風味を落とさない保存法の一つと言うのは理解できます。

 現在の農協主導の出荷システムは、農産物の大きさが企画に合わない、形が悪い、少し痛んでいるという作物は出荷できず、捨てるしかありません。捨てちゃう物をピューレ状にして商品として売れるのだったら、農家さんにとって無駄もなく大変良い話です。作りすぎて捨てていた物も時期をずらして販売できます。特に季節性の強い果実には強い味方です。

 レストランにとっても、玉ねぎのネピュレがあればカレーやシチューは簡単に作ることができます。パン屋さんでも、ニンジン、カボチャ、ホウレンソウ等を練りこんだパン生地が簡単に作れます。風味が残っているのであれば、高齢者の流動食にも使い易くなります。

 これなら各地の生産者も八郎潟の涌井氏始め、皆飛びつくなと思っていたら、コメネピュレ以外に色々な動きがあるようです。

・石川県小松市

 街全体でネピュレ製品に取り組んでいる。パン生地に野菜ネピュレを練りこみ、砂糖を入れないパンを作って食べている。小松市だけに、ブルドーザーのコマツも一枚噛んでいる。

・青森県

 青森県は2012年9月に県内の企業、大学などと「食品加工技術高度化研究会」を設立した。野菜など食材を半液体状のピューレに加工する技術を持つ()ネピュレの製法を取り入れる。特産のリンゴやナガイモ、ニンニクといった農林水産物の付加価値を高め、市場開拓を目指す。

・沖縄県宮古島市

 特産のマンゴーをネピュレで商品化を行う(マンゴーも日持ちしないから、ネピュレで一年中出荷できれば大助かりです)。

 加納社長出身のセブンイレブンで、ネピュレ入りセブンプレミアム商品が出てくれば市場は爆発するかも知れません。IPOしたらすぐに株を買っておこうっと。

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