2015年1月15日(木)

少額訴訟だけでは回収できない

都市鑑定アドバイザリー(株) 不動産鑑定士 田中祥司

 昨年鑑定評価の依頼を受けた案件で、入金が滞ってしまった案件がありました。過去に投資用マンションを売ってもらった不動産会社社長の紹介で、その会社の顧問(70歳近く)の友人(65歳くらい)が依頼者。金を借りるために時価の半分くらいで他の不動産会社に名義を移転(譲渡担保)。しかし不動産会社が名義を戻してくれないので裁判になっている。1週間後に裁判資料で適正時価を証明するために、裁判所に提出したいと千葉県の住宅地の鑑定評価を依頼されました。

 やや怪しい話だなと思いながら、知合いの紹介だし、報酬は三日後に全額支払うからと言うので受けることにしました。しかし3日経っても入金はなく、6日後に納品の期日となりました。こちらも納品しないと報酬を要求できないので、依頼者に納品しました。納品した時も、3日後には必ず払うからと性懲りもなく言ってきました。

 結局、依頼者からは入金がなく、紹介者社長、直接の紹介者の顧問に詰め寄りました。紹介者の顧問に、1週間以内に代わりに支払うという念書を書かせ、紹介者社長にも立会人として署名してもらいました。

 しかしその顧問も支払うと約束しながら全く支払おうとしません。仕方がない、かくなる上はやったことが無いけど、少額訴訟で締め上げてやる!そう思って、ネットで少額訴訟のことを調べ始めました。

 少額訴訟は60万円以下の債権であれば、簡単な手続きで家庭裁判所に書類を提出すれば、すぐに裁判が開かれ当日1回で結審する。少額訴訟でも判決は債務名義が取れるので、強制執行を掛けられる。預金も差し押さえられる。そういう認識でした。

 しかしネットで調べると例え債務名義が取れたとしても、相手の預金がどこにあるか分からなければ差し押さえが掛けられない。差し押さえが掛けられたとしても、銀行に預金がなければ実質差し押さえができないということも分かりました。

 知人の不動産鑑定事務所社長に少額訴訟を掛けたことがありますかと聞くと、「過去に一度やったことがありますが、結局つぶれそうな会社だったので銀行預金に差し押さえられる現金が入ってういなくて諦めました。」とのこと。何だ便利そうな仕組みと思ったのに、悪意を持った奴にはどうしようもないのだと知ることができました。

 こりゃ現実的にやるしかないと方向転換し、紹介者の不動産会社社長に「困りました、何とかしてください。」と泣きつきました。結局、内の社員が原因でご迷惑をお掛けしたので、まずは私が建替えてお支払いするということで一件落着しました。不動産会社社長には気の毒な事をしましたが、許せないのは頼むだけ頼んで逃げ回った依頼者です。

怪しい案件は受けないに越したことは無いですが、受けるにしても最初に確実に半金をもらって仕事をすべきだと痛く反省した次第です。

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