2015年5月10日(日)
寺は戦いの時に出城に変わる
ピエール瀧が案内人役の「歴史発見 城下町を行こう」と言う番組が、以前BS朝日で放送されていました。熊本城を紹介していた時に、城下に配置されたお寺がいざ合戦の時は出城に成り替わる。特に古町地区は碁盤の目状に整備された「一町一寺」の町割で、すぐに戦いモードに変身できたと説明していました。「なるほど、戦国大名たちが考えた都市計画は、寺が非常時の防衛拠点として整備されていたのか。」と知ることができました。
昨年福岡を訪ねた折、福岡市主催の街歩きツアーに参加しました。福岡市は太平洋戦争で空爆に遭い、町の大半が焼けているので古いお寺などはあまり残っていません。福岡の昭和通りの北側100mくらいにある「大長寺」を訪ねた折、ガイドさんが
「ここが昔の海際だったエリアです。福岡に入城した黒田官兵衛、長政親子は城内の守りを強固にするため、海沿いにお寺を集めて建設しました。海から侵略してくる敵に対して、お寺群が出城として戦うことを想定していたのです。その後、海沿いの干拓が行われたので、今では海沿いではなくなってしまいましたが。お寺の住職は怪しまれないので、全国を旅することができました。他国の大名と連絡を取り合うのに、住職が介在することはかなりあったようです。当時の一番の知識人はお寺のお坊さんだったので、黒田官兵衛の軍事戦略ブレーンとして活躍したお坊さんもいました。」と教えてくれました。
先月金沢に行った折、東茶屋町の反対側、犀川そばの西茶屋町付近に忍者寺と呼ばれる日蓮宗の「妙立寺(みょうりゅうじ)」を見学に行きました。加賀藩前田家の菩提寺なのですが忍者とは全く関係が無く、色々なところに抜けられる(逃げられる)ような様々な仕掛けがあり、隠し部屋が多数あります。いざ金沢城が攻められた時は、直ちに殿様達がこのお寺に逃げ込み一時避難する。忍者寺からは、深い地下のトンネルがあり、お城とも繋がっていたかもしれないと言っていました(実際には犀川があるので全部は繋がっていないはずですが)。
弘前にも曹洞宗の長勝寺(ちょうしょうじ)という津軽藩の菩提寺があります。ここは曹洞宗の禅寺ばかり総数33ケ寺集まっていて、禅林街と呼ばれています。長勝寺に行くとボランティアガイドの方から、お寺を上がってすぐの所に御厨(みくりや、台所のこと)があったと説明されました。お寺を上がってすぐが台所?
話を聞くと、現在の弘前城が完成したのは津軽家2代の時で、初代為信公の時はまだ大浦に城があり、そのお城の廃材などを利用して長勝寺を建てたそうです。いざと言う時は、弘前城から殿様が寺に逃げこんで待機し、昔城を構えた大浦まで落ち抜けると説明を受けました。家臣、お付の者たちが籠城して食事ができるように、お寺の本堂入口付近に台所があったのです。数多くの禅寺を集めた本当の理由も、本当は戦いの防備のためだったのかも知れません。
長 勝 寺 山 門
長 勝 寺 本 堂
城下町にお寺が数多く並んでいる場所があったら、宗教上の理由と言うよりも、軍事上の理由だったと考えるべきかも知れません。
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