2010年7月12日(月)

1-4 事業用借地権の期間延長(最長20年から50年未満へ)

都市鑑定アドバイザリー(株) 不動産鑑定士 田中祥司

借地権の歴史は、明治42年建物保護に関する法律施行以降は借主(借地人)保護の歴史で、大都市圏では一度貸した土地は地主に戻って来なくなってしまいました。そうなると地主も安易に他人に土地を貸さないようになり、結果土地の新規供給も減少してしまいました。このような状況を打破し、借地の利用を促す新しい借地借家法が平成4年8月1日より施行されました。その中でも特に目玉だったのが、約束の期間が到来したら必ず土地を返さなければならない(契約更新は行わない)「定期借地権」制度の創設でした。

定期借地権には、下記の種類に分類できます。

①   借地存続期間を50年以上(通常は50年が多い)とし、契約更新、建物築造による存続期間の延長が認められず、期間が過ぎれば建物を取り壊して更地に戻して土地を返却するという「一般定期借地権」です。借地権の設定後30年以上経過した時に、借地上建物が地主に譲渡される「建物譲渡特約付き借地権」は、一般定期借地権に買い取りオプションが付いた変形と解釈されます。

②   事業用目的限定で、借地期間を10年以上20年以下に設定した短期型の「事業用借地権」。事業用借地権は、公正証書により締結することが成立要件になっています。

上記の内容で定期借地権制度が始まりましたが、運用を始めていろいろな使い勝手の悪さが出てきました。中でも一番改善要望が強かったのが、事業用借地権が20年までしか使えないことでした。

元々の最長20年と決められた背景は、ロードサイドの比較的簡易な建物の借地需要に対応しようと考えたためです。プレハブ建物であれば20年償却で充分だろうとの思いだったのでしょう。しかし実際に法が施行されると、地主さんの方は期間50年は長いから嫌だ。店舗用地で貸すのなら、事業用借地権があるというじゃないか。期間も20年で返ってくるのなら、自分の目の色が黒いうちに土地が戻ってくるので、それで行こうじゃないか。とそんな具合で重宝に使われて行きました。現実、郊外型の大規模ショッピングセンター(以下、「SC」)でも事業用借地権は多用されています。

するとどういうことが起きるでしょう。大規模な鉄筋コンクリート造のSCでも20年が経過したら、もったいないけど解体して更地で返さなければならない。地主さんも本当は30年でも40年でも良かったのに、制度に事業用借地は20年となっていたから、それに従って期間を決めた。20年は結構あっという間に過ぎてしまいます。地主さんも20年が来たら、その時考えてまた20年期間更新しても良いやと考えている方も多いでしょうが、借りている企業にはどっちに転ぶか分からないという不安感があります。税法上の建物償却年数も鉄筋コンクリート造だと50年なのに、事業用借地期間が20年で、万が一土地を返すとなると、20年目にまとめて除却損を出さなければならない。こういう使い勝手の悪いものになってしまいました。

今回の改正(平成20年1月施行)では、事業用借地権の存続期間の上限を「20年以下」から「50年未満」へ引き上げました。これにより、事業用借地権の使い勝手はかなり改善されるはずです。今後締結される事業用借地においては、期間30年、40年といったものが相当出てくるはずです。

法律の建付けで気を付けなければならないのは、期間30年以上50年未満とした場合には、下記の特約を付けられるとなっている点です。逆に特約を付けておかないと、この規定が生きて普通借地権の扱いになってしまいますので、充分気を付けてください。

①   更新しない(第6条の更新拒絶要件の非適用)

②   再築の期間延長しない(第7条の建物の再築による借地権の期間延長の非適用)

③ 建物買取請求をしない(第8条の借地契約の期間後の建物滅失による解約などの非適用)

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