2016年4月20日(水)

オックスフォード大学ウィルハットン学長の中国に関する記事

都市鑑定アドバイザリー(株) 不動産鑑定士 田中祥司

 2016年4月号の文芸春秋に英国オックスフォード大学ハートフォードカレッジ学長のウィルハットン氏の中国に関する記事が出ていました。記事の題名は「ポスト習近平が鍵を握る」です。

・中国では過剰投資、過剰生産が問題にされている。中国のようにGDPの40%以上も投資を続けた国は過去にない。そんな投資を続けていても利益が追いつくわけがないから、企業は莫大な負債を抱えてにっちもさっちも行かなくなっている。

・中国の負債の拡大は日本のバブル時代の経済ブームに似ている。当時の日本も企業の負債が著しく高くなった。同じことが今の中国で起きている。この負債の多くが不良債権化しており、今後回収に手間取るはず。

・中国経済がここまで悪化したのも、中国共産党が国有銀行を自分の財布のように使ってきたから。企業が回収の当てのない設備投資を続けられるのも、簿外で銀行が貸付を行ってきたからである。

・安易に企業が金を借り続けてきたため企業の負債は膨大な金額になっている。中国の金融システムは脆弱である。過剰な設備投資のために成長モデルは基本的に壊れている。

・中国には三つの経済セクターがある。①日米欧の外資系企業の輸出セクター ②地方のセメント、鉄鋼、化学、電機、自動車等の国有企業セクター ③共産党員の特権を利用したセクター。

・これら3つのどれも問題があるが、特に国有企業セクターが大問題。その中でも銀行に一番問題がある。9年前に自分の本で指摘しているように、その当時から多くの不良債権があったが全く申告されていない。融資の元本返済はおろか、利子の半分も返済されていなかった。2016年の今はもっと悪化している。直近10年間の中国の経済成長率はせいぜい4~6%程度のものと思われる。

・中国にはスマート企業が無い。スマート企業とは社会の変化に対応して柔軟に経営を変えられる企業である。賄賂が横行している中国ではスマート企業が育つのは非常に難しい。

 最近では台湾の鴻海に買収されたシャープ。過去には借金漬けで潰れて行ったダイエー、そごうデパート、北海道拓殖銀行、長期信用銀行等。バランスシートの右側が大きすぎれば(借入金が大きい状態)、企業再生は覚束なくなります。「赤字でも企業は潰れない。黒字でも手元のキャッシュが無くなれば(借入金の返済ができなければ)潰れてしまう。」と言うのも良く言われる言葉です。

稼ぐ力も無いのに体だけ大きくなった(借入金による資産の膨張、過剰設備投資)国有企業だらけと言うのが今の中国の状況だとすれば、そこら中が火薬庫だらけと言うことです。中国国有企業の過剰債務、過剰設備問題は今後繰り返し警告されていくのでしょう。

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