儲かるフルーツ

都市鑑定アドバイザリー（株） 不動産鑑定士　田中祥司

２０１６年５月２９日放送のＴＢＳ「がっちりマンデー」は、「儲かるフルーツ」と言うテーマで放送されていました。

１．輸入バナナの熟成

　輸入バナナは検疫の関係で虫が付きにくい青い状態でしか輸入できない。日本に来た状態のバナナは硬くて渋く食べられる状態ではない。これを食べられる状態に持っていくのがバナナの卸業者。室（むろ）に入れて気温を上げ、バナナを追熟して食べられるようにする。普通の業者は初日に室の温度を２１度まで上げて徐々に温度を下げ５日間で追熟を行う。

　番組で取り上げた大田区の(株)松井は、初日に１８度まで室の温度を上げてその後徐々に温度を下げ７日間かけてゆっくり黄色くする。また通気が良くなるように箱と箱の間に隙間を作りながら段ボールを積んでいく。こうすることで他に比べてつやが良い糖度も高いバナナが完成する。おかげで松井のバナナは松井指定のお店で売り切ってしまう。

２．カットリンゴ

　最近街中の自動販売機やスーパーで売られているのが袋入りの「カットリンゴ」。弘前市の(株)ヒロサキがこのカットリンゴを売り始めた。Ｂ級品と呼ばれる傷物、大きさが小さいものは味は一緒なのに見た目の悪さで従来はジュース加工用に回されていた。これを少しでも高く売れるようにとカットリンゴを考えた。

　作り方は１／８にカットしたリンゴをある透明の溶液に２分間程度漬けるだけ。この液体の正体はビタミンＣであり、自然由来の物を使用しているので安全。ビタミンＣの溶液は猛烈に酸っぱい。リンゴは空気に触れると直ぐに変色するが、これはリンゴポリフェノールが空気と反応するため。ビタミンＣ溶液に漬けることで、表面に薄い膜ができ数日間変色しない（茶色くならない）で済む。

　ジュース加工用だと２０ｋｇ４００円でしか売れなかったものが、カットリンゴだと２０００円で売れるようになった。会社の売上も前年が１億円だったが、今年は６割増しの１億６０００万円になった。コンビニでも最近は売られている。またホテルのバイキングでも変色しないリンゴは重宝されている。

３．乾燥フルーツ

岐阜県美濃加茂市の八尋産業(株)の大屋会長が作ったのが、「減圧平衡発熱乾燥法」を使って作ったフルーツの乾燥機。無添加、無着色でフルーツの美味しさをどれだけ残せるかと言うことで作った。

http://www.yahiro.co.jp/04-factory-info/index.html

　まずフルーツをカットして乾燥機に入れ、９時間掛けて乾燥させる。従来は６０度～７０度の高温で乾燥させるのが主流だったが、これだとフルーツの旨みが壊れてしまう。八尋産業の乾燥機は、低い温度で「低圧」で乾燥させる。乾燥機の中は真空状態にする。真空にする（気圧を下げる）と、水は低い温度でも蒸発する。低い温度で水分を蒸発させることで、成分が壊れず旨みが凝縮したドライフルーツが出来上がる。低温で乾燥させているので果物の色があまり変わらないのも売り物になっている。

　粉にしたフルーツも工場やケーキ菓子店で人気になっている。水分の多いミカンでも粉状にできる。粉状なので混ぜやすく、味も濃くフルーツ本来の味が出せるということで好評を得ている。今まで規格外品と言うことで捨ててしまっていたフルーツをカットフルーツと言うことで販売できるようになった。農業生産者からの問い合わせが絶えない状態となっている。

４．静岡県富士市の杉山フルーツ

　シャッター商店街ばかりの中で杉山フルーツだけは客足が絶えない。１０年前に売り方を変えて贈答品のフルーツ店に替えた。その時に作ったのが、カットフルーツを容器に入れ、そこにゼリーを入れて固めた生フルーツゼリー。保存料を使っていないので、賞味期限はたった３日間だけ。１個５００円以上する生フルーツゼリーがバカ売れで、１日８００個売れてしまう日もある。

　お客さんにはフルーツを普通に食べるより美味しいと大好評。お湯に白い粉（ゼラチンと甘味料）を混ぜてゼリーを作り、カットフルーツをピンセットで見栄え良くゼリーの中に移動させる。完全な手作りで大量生産はできない。

５．宮崎ドライフルーツ紅茶

　まだ商品化されて３か月の商品。紅茶に薄くスライスした乾燥イチゴを入れたティーバッグ。旨みの詰まった乾燥イチゴが紅茶の風味を増す。

　先日、原発風評被害に遭っている福島のフルーツを少しでも売れるようにと努力している方の話を聞く機会がありました。現在は、１割しか商品として出荷されておらず、４、５割が加工用で、残りは廃棄されている現実があるとのことでした。

上記のような色々なやり方で季節性の強いフルーツを安定的に売り、またＢ級品も喜んで消費者に食べてもらう。美味しいフルーツを作っている農家さんには大いに儲けて欲しいものです。