2016年8月10日(水)
街路樹として果樹(フルーツの樹)を植える
JALの会員誌「AGORA」2016年9月号に、「自然の恵みを食べ歩き」という記事が出ていました。
・ドイツでは田舎だけでなく都市部でも公共の場に多くの果樹が植えられている。それらの実は誰もが自由に食べて良いことになっている。
・18世紀中期、プロセインのフリードリヒ大王やハプスブルク家のアリア・テレジアは、貧しい人々のために公共の場に果樹を植えることを奨励した。そしてナチス時代の1930年代、有事の国民の食料確保に備えて再び多くの果樹が植樹された。
・どこのどのような果樹がなっているかは「ムントラウプ」というサイトで確認することができる。マップに紹介されている果樹の半分以上はリンゴで、4分の1は洋ナシ、残りはスモモやサクランボなど多彩。
・ムントラウプ創設者カイ・ギルトホルンさんは「食べ物を自分で見つけて手に取るのは、かつて狩猟採集をして生きてきた人間にとって純粋な喜びだと思う。」と語っている。
なるほど、スゴイ楽しい仕組みがドイツにはありました。普段目にするケヤキやプラタナスも良いけど、リンゴ、梨が実っている大通りはワクワクしてしまいます。
子供の頃、隣のおばさんの庭に小さいビワの木がありました。専門店で売っている大きな実ではなく、小粒な実ばかり生りました。実が熟れだすと、毎年スーパーの紙袋一杯におすそ分けしてもらい、ものすごく楽しみにしていました。大人になってから食べる見た目は大きく立派だけど少し薬臭いようなビワより、なんぼか甘くて美味しかった記憶があります。
普通の街の大通り、公園にリンゴ、梨、桃、柿、ビワ、蜜柑、イチジク、ブドウなどが育てられ、季節になると誰もが自由に食べることができる。まさに狩猟民族の気持ちに戻ってワクワクすることができます。
折角だからプロの果樹生産者に育ててもらえば美味しいフルーツを食べることができるでしょう。田舎の場合、そもそも地元民は地元特産のフルーツを買って食べる人は少ないと聞いています。親戚に必ずフルーツ生産農家がいるので、フルーツは分けてもらって食べる物と言う感覚だそうです。それであれば、公共エリアで育ったフルーツが生産者の手取りに影響を及ぼすこともないでしょう。
子供たちが優先して食べられるルールにすれば、どの季節になるとどのフルーツが食べられるということを身をもって経験できます。フルーツを美味しく育てるテクニックを生産農家さんから直接聞ければ、果樹に対する愛着が生まれ、一生の教養にすることができます。
大都市圏を離れた地方都市に行けば土地は余りまくっているので、未利用の住宅地を自治体が借りて、誰もがフルーツを食べられる「ポケット果樹園」として整備することもできます。自治体が地代を払わなくても、固定資産税0にするだけで貸したいという人は大勢いるはずです。
こんな面白い仕組みなら日本のどこかでやっている市町村があるだろうと思ってネットで検索したら、特にヒットしませんでした。その代りに「日本では、759年には、旅人が緑陰で疲れを癒し、飢えをしのぐことを目的として、畿内の7つの街道に果樹の植栽を命じる太政官符が出ています。ここで植えられた木の種類は、カキやタチバナともナシとも言われていますが、はっきりとはわかってはいません。我が国の街路樹は、旅人が休息をとり飢えを満たす果樹から始まったと言えます。」という記事を見つけました。
花より団子、街路樹より果樹ということです。必要に迫られてなんでしょうけど、奈良時代の方が自由な発想ができています。
街路樹、公園、ポケットパークに誰もが食べて良い果樹を植える。そして誰かに食べてもらうことを喜びに地元の人が管理をする。こんな幸せな街があったら、これだけでこの街を訪れる理由になります。
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