2010年7月12日(月)

1-5 筆界特定制度

都市鑑定アドバイザリー(株) 不動産鑑定士 田中祥司

不動産の売買を行なう場合、通常は必ず土地境界を確定して欲しいと買主側から言われます。土地境界には、民有地同士の境界確定を行う「民民確定」と、道路等の公有地との境界確定を行う「官民確定」があります。一般に官民確定は3カ月~6カ月程度の期間が掛かりますが、相手が地方自治体か国ですのでいずれ収まるところに収まります。問題は民有地の境界確定です。隣地所有者が土地に対して強い執着があったりするともう大変です。1cm境界を動かす動かさないで、大騒ぎになります。

また、最近のノンリコースローンの貸し手(レンダー)の要望は、境界確定をしていないと、いつ敷地面積が減って建ぺい率違反、容積率違反に問われるか分からない。境界確定は融資の条件だから絶対取って欲しい、と言ってきます。こうなると売却の担当者は、眠れない日を過しながら必死に頭を下げて、隣地所有者の境界承諾を取りに行かなければなりません。

境界確定がもっと合理的に楽にできるようになれば良いのに。こういう不動産業界の切な願いを聞き入れてくれて、「筆界特定制度(ひつかいとくていせいど)」が制定された...はずでした。ところが現在のところ、皆が喜んでこの制度でハッピーになっていると言うところまでは、至っていません。

筆界特定制度は、平成18年1月20日より施行されています。筆界特定登記官が土地の所有権の登記名義人(相続人含む)等の申請により、申請人等に意見及び資料を提出する機会を与えます。また、外部専門家である筆界調査委員(土地家屋調査士、測量士)は、これを補助する法務局の職員とともに,土地の実地調査や測量を含むさまざまな調査を行った上、筆界に関する意見を筆界特定登記官に提出し、筆界特定登記官がその意見を踏まえて筆界を特定します。

申請手数料は,対象土地の価額によって決まります。たとえば,対象土地(2筆)の合計額が4,000万円の場合,申請手数料は8,000円になります。手続の中で、測量を要することも多く、その場合には測量費用を負担する必要があります。

筆界特定の対象となった土地を管轄する登記所において筆界特定書が保管されるので,筆界特定書の写しの交付請求等によって,公開されます。また,筆界特定の対象となった土地の登記記録に,筆界特定がされた旨が記録されます。

筆界特定にかかる期間は元々半年くらいを目安にしていましたが、現在はまだ慣れていないせいもあり、特定まで一年くらい掛かっているようです。 本制度によりある程度は筆界は特定されますが、結論に納得出来ない場合は別途「境界確定訴訟」に持ち込むことも可能です。折角、筆界特定制度で境界が決まったと思ったら、境界確定訴訟されてしまう。これでは何のために時間を掛けてきたか、分かりません。

「筆界」とは,ある土地が登記された時にその土地の範囲を区画するものとして定められた線であり,所有者同士の合意等によって変更することはできません。これに対して,「境界」という語は,所有権の範囲を画する線という意味で用いられることもあり,その場合には、筆界とは異なる概念となります。筆界は所有権の範囲と一致することが多いのですが、一致しないこともあります。

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