2017年4月3日(月)

バクチャーによるアワビ、ウナギの陸上養殖

都市鑑定アドバイザリー(株) 不動産鑑定士 田中祥司

テレビ東京の平成29年3月28日「ガイアの夜明け」で紹介されていたのが、RBCコンサルタントによるアワビ、ウナギの陸上養殖の話でした。

海水でも陸上でも魚の養殖で問題になるのは、水をどうきれいに保つかです。この水を浄化するのにRBCコンサルタントが開発した「バクチャー」という黒い粉を使っていました。バクチャーの主な原料は山で採取した火山礫で、これを細かくし、植物から抽出したミネラルなどを配合して作っているそうです。

RBC社のHPでは、「バクチャーには、環境中の微生物と接触することで、微生物の分解作用を急速活性させる働きがあります。バクチャー自体は微生物を含むものではなく、環境中の有用微生物活性化の触媒、いわば善玉菌の起爆材のようなものです。 バクチャーの活用により、水質汚染や土壌汚染など、さまざまな環境問題の解決が可能となります。」と記載されています。

自然界でも魚の糞や死んだ魚などが存在するのに何故きれいな水の状態が保たれているのか。これは微生物の働きで有機物が分解されているからであり、バクチャーを加えると微生物の働きが活性化するという仕組みです。下水処理場でも微生物が有機物を分解することで水を浄化しているので、同じ仕組みと言えます。元々RBC社は、汚れて濁った池や川の清浄作業を請け負っていたそうです。

番組で紹介されたのが、岡山県津山市のウナギの養殖と岡山県西粟倉村のアワビの養殖でした。随分岡山にこだわると思ったら、RBCコンサルタントは岡山県津山市の測量コンサルタント会社で、環境保全のバクチャーを売り始めたところこちらの方が本業になってしまったそうです。

普通のウナギ養殖ではウナギのぬめりがすごいのが、バクチャーを使って水を浄化した仕組みではウナギにはヌルヌルが少なく、育ったウナギは天然のウナギに近く皮が青みがかった色になっています。「津山ウナギ」としてブランド化を目指している。一度バクチャーを入れると微生物が有機物を分解する力が継続し、1年程度は水がきれいな状態を保てるそうです。

番組では大分県佐伯市の港近くにあるアワビの養殖場でアワビ養殖業を学ぶRBCコンサルタンツの社員の姿を追っていました。きれいな海水でないとアワビがすぐ死んでしまうので、常に海水をかけ流しにしておく。その電気代が月額120万円掛かっているそうです。バクチャーによる微生物の働きで水をきれいな状態で保てれば、電気代や水交換というコストを大きく削減できます。

アワビ養殖を始めた西粟倉村は山の中なので、清流はあっても海水はありません。真水に海水になる成分を混ぜ、1週間で水質が安定した後にアワビ稚貝を入れて生育を見守ります。

アワビのエサは海草を固めたペレット。目標ではアワビを8cmの大きさにして出荷予定です。現在のアワビの卸し出荷額は7200円/kg。この金額より如何に安くするかが課題です。生産コストを下げるために同じ空間でより多くのアワビを飼えるように試行錯誤を繰り返します。

7cmくらいの大きさになったところで、地元の民宿を営むご夫婦に刺身と網焼きで試食してもらいましたが、餌(海藻を固めたペレット)のせいか旨みのない味になってしまっていることが分かりました。それからは餌にも改良を加え、アオサを水槽で繁殖させてから与えたり、アワビが好む海藻をたっぷりやって育てます。餌を改良した後に西粟倉村の皆さんに養殖アワビの試食会で食べてもらったところ、味、食感とも美味しいと高評価を得ることができました。

岡山県北にある人口約1400人の西粟倉村。例えばですが、30人くらいがアワビ養殖に従事し、1億円程度の売り上げが達成できれば村としても非常に大きな産業になり得ます。微生物の働きで水の交換が必要なければ電力代も少量で済ますことができ、その分利益も増加します。

栃木県那珂町での温泉トラフグの養殖など、思わぬ場所思わぬ高級魚が陸上養殖で生産され始めています。水交換にかかるコストをバクチャーで大きく削減できれば、今後一気に陸上養殖の産業が山間部に広がるかも知れません

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