2017年3月15日(水)
若手設計士と組むリノベ戸建て
全国の空家戸数は2013年度データで約820万戸、率にして約13%強となっています。東京都だけで言うと、約82万戸(11%強)の空家があり、賃貸や売却用以外の空家(長期不在)は15.3万戸あります(戸建とマンションの合計)。古くなった親の住んでいた住宅をどうするか、相続を受けた後に悩んでいる方も多いと思います。
2016年税制改正で生まれたのが、相続空家を売った場合の3000万円控除の適用。一定の要件(昭和56年5月31日以前の建物、相続発生後3年経過の年末までの処分、相続開始後に賃貸していない、売却価格1億円以下等)に該当する場合は、居住用不動産の3000万円控除と同じように、譲渡益から3000万円控除をすることができます。この制度を使って、実家の空家を売却するという方も多くなるとは思います。
ただ、そうは言うものの特に金銭面で困っていなければ、両親、兄弟との思い出の詰まった実家を売却する必要はないと考えるのも自然です。売る気はないが、かといって自分たちが住む予定もない。貸すには今風にリフォームする必要があるので、まとまった資金も出すのは大変。リフォームしても良いけど、誰に相談してよいか分からない、等々悩むばかりです。
一方、台東区谷中では、芸大出身の若手設計士達が築58年の木造住宅の改修工事をして、住宅、カフェ、デザイナー事務所、アトリエ等へ生まれ変わらせました。谷中のHAGISOプロジェクトです。
古く使われていない戸建て住宅がある一方、古いものに価値を見出し、自分たちのセンスで生まれ変わらせる若い設計士達。この両者を結び付ければ面白い展開ができそうです。そこで考えたのが、若手設計士に自由にリノベーションをしてもらう戸建て住宅作りです。
・空家を賃貸したいオーナーの相談に乗る。
・設計士に自分が暮らしたい戸建てリノベーション計画を作成してもらう。大きさにもよるが、概ね500万円前後(5ねん程度の賃料で資金回収)で改修工事ができるようにプランニングしてもらう。
・設計士への対価は、設計士が1年間無料でリノベした住宅に住めること。月額10万円の賃料であれば、120万円の設計監理報酬。2年目から3年目は相場賃料の80%相当で住み続けることができる。設計士がやる気になれば、毎年1件に携わればずうっとタダで住み続けることができる。自分の関わったリノベ住宅が世の中に増えていくことは設計士にとっても楽しい。
・実際の工事業務は信頼できる工務店数社と提携し、そこに依頼する。基礎のチェック、耐震補強工事は必ず行う。改修工事実施後20年間は安心して使えるようにする。耐震補強工事の自治体補助金も上手に使う。
・改修工事費をできるだけ減らすために、内装の部分では設計士主導のセルフリノベーションも取り入れる。セルフリノベが好きな人、やったことはないけど一度経験してみたい人、いずれ自分でセルフリノベした家に住みたい人に内装工事を手伝ってもらう。
・セルフリノベに参加してくれた人たちが、実際の住み手になってくれる。古い建物を新しいデザインで格好良く生まれ変わることを体験できることが、住み手の満足にもつながる。
・セルフリノベ戸建の数が増えてくれば、「設計士がデザインしたリノベ住宅」ということでブランド化できる。
実際に空家を何とかしたいという所有者を探し出してくる役割は、地域の実情を一番掴んでいる信用金庫、信用組合の営業担当者と組むことを考えています。地元金融機関としても改修工事費の融資もできるし、安定的な賃料が入るようになれば預金も増えるというメリットがあります。
一番勿体ないのは、価値があるのにそれを十分に活かさないことです。人でも不動産でも十分に働いてもらうことは、世の中に価値をもたらします。
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