2017年3月23日(木)
滞納テナントに対する明渡訴訟は多額の費用
2017年3月に神奈川県全日本不動産協会主催のセミナーに参加してきました。当日は弁護士さんによる家賃滞納トラブルと原状回復・敷金返還がテーマでした。
特に家賃滞納トラブルは、私自身が2年前に経験したこともあり大変参考になりました。家賃を滞納する不良テナントの中には悪い奴もたくさんいるので、甘いやり方をすると責任が貸主(オーナー)側にきてしまうことを実感できました。
・少し前まで行われていた貸主側や賃料保証会社によるテナントの同意を得ない状態で行われる鍵交換や荷物搬出は、絶対に止めないといけない。滞納テナントが1年経って急に現れて、自分が保管していた貴重な宝石や絵画が無くなったと言われたら太刀打ちできない。悪いテナントに限って何とでも屁理屈を付けてくる。勝手に鍵を交換して荷物を搬出してしまったオーナーには、たとえ相手が滞納テナントであっても法的に勝ち目はない。
・滞納したテナントがもし夜逃げをしてしまったら、示談と明渡訴訟の2つしか解決方法はない。滞納テナントと退出に関する示談が取れなければ、必ず明渡訴訟の裁判を経て解決することが必要。
・明渡訴訟の費用は弁護士費用で32.4万円。裁判所の諸費用で10万円前後。これに加えて、強制執行(荷物搬出、搬出した荷物の保管)の費用が30万円から100万円くらい掛かる。ワンルームなら30万円くらいで済むが、ファミリー入居案件だと家財道具、電化製品も多いので非常に高くなる。期間的には、最短で4か月半くらいで強制執行まで終わる。
・100件に1件くらいは滞納したテナントが裁判で争ってくるケースもある。部屋のどこかに不具合があると言いがかりをつけ、「修繕されていないからそれによる慰謝料を請求する」的な反論をしてくることも多い。
・強制執行の費用が高くつくのは、裁判所による動産処理(荷物搬出)なのでアルバイトを雇うようなことはできないから。身元のしっかりした人間を使うということで、自然と動産処理で費用が掛かってしまう。強制執行の動産搬出は、基本的に引っ越し作業と一緒、人件費の高い人間を使って引っ越しをすれば費用は高くなる。さらにその後一定期間保管作業をしなければならない。1Kタイプの部屋で20万円からで、動産が多い部屋で40万円。ファミリータイプだと80万円から100万円くらい。
・家賃滞納保証会社の経営は厳しい。滞納があった場合は、家賃滞納保証会社も弁護士に依頼して明渡訴訟覚悟で進めなければならない。個人オーナーも保証会社も裁判で掛かる費用は一緒。それでも貸主や家賃滞納保証会社は強者で、家賃を滞納するテナントは弱者という論調でマスコミは記事を書く。
・鍵の無断交換、荷物の無断搬出は絶対にやってはいけない。明らかに夜逃げで逃げたとしても半年後に戻ってきて大揉めになる。部屋に当たりくじの宝くじがあっただろうと言いがかりをつけてくる。
・テナントがカギを返してくれたかどうかが重要。鍵を返すという行為は、占有を放棄したという解釈になる。鍵が掛かっていなくて部屋の中に鍵が置いてある状態はぎりぎりセーフと言えるだろう。
・連帯保証人がテナントに代わって荷物を処分した場合も貸主側の違法となる。何故なら連帯保証人は本人に代わって荷物を処分する権限はないから。貸主が連帯保証人と一緒に荷物を処分すれば同じ罪に問われる。このケースで唯一セーフとなるのは、保証人がテナントから委任状をもらっている場合。
・よく見られる失敗は、強い言葉で立ち退きを求め、それが脅迫行為になると見られること。今はスマホで簡単に録音されてしまうので、会話はすべて録音されていると思っておいた方が良い。
・滞納で嫌な目に会いたくなければ、必ず賃料滞納保証会社の保証を付けておくこと。これは今や必須である。連帯保証人の保証は今では役に立たないケースも増えている。明渡裁判になった場合に訴訟費用は保証人に請求できない。
賃料滞納保証会社の保証料は通常契約時月額賃料の50%相当で、テナント負担が一般的です。滞納されて莫大な損害を被る可能性があることを考えれば、賃料滞納保証会社の保証はマストでしょう。それにしても連帯保証人が家財道具を処理してくれた場合も貸主が罪に問われることがあるとは、大変良い話を聞くことができました。
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