2017年1月15日(日)
日本の大都市の再開発
大前研一氏著書の「低欲望社会」に日本の大都市の再開発をどう進めるべきかの記述がありました。
・日本の個人金融資産1700兆円をどうやって市場に出させるか(金を使わせるか)。この答えの一つが大都市の再開発事業を進めること。都心回帰により通勤時間が減り余暇を楽しむことができる。
・東京は世界で最も公共交通機関が発達した都市である。山手線内側では駅から徒歩5分圏内の土地が64%を占める。電車による移動が世界一便利な都市である。日本の都市がスラム化しないのも地下鉄、私鉄が発達しているからと言える。
・東京の容積消化率は23区内で136%、山手線内側では236%。これがパリでは350%、ニューヨークのマンハッタン・アッパーイーストでは631%。容積率制限を撤廃し、職住接近の24時間タウンを作れれば東京はもっと活気が出る。
・シリコンバレーに活気があるのは、チャレンジ精神あふれる人が世界中から集まり交流し、そこから新しいアイデアが生まれ、やがて新しいサービスとなるから。投資機会を狙うキャピタリストと出会い、アイデア実現のための資金が供給される。
・東京を真の国際都市にするためには地震等に対する災害に強い都市にすることが必要である。100m×150m規模のブロック毎に再開発を行っていき、道路を広く取り、電線、光ファイバー等を地下化する。公園、緑地のオープンスペースを多く取る。ブロックごとに非常用発電機を設置し、水、食料を蓄える。
・再開発のインフラ(道路、公園、非常用設備等)にお金(シードマネー、呼び水)を出しても、再開発の全体利益で十分お金が戻ってくる。再開発の同意も80%以上ではなく、50%以上か2/3以上の同意で十分。これにより郊外は当然人がいなくなり、過疎化が進む。これを補うために都心回帰した人は、週末は郊外に住むような二重生活ができるようにする。
東京の都心ではなかなか再開発が進みませんが、森ビルが長年掛けて実現した港区赤坂の「アークヒルズ」、港区六本木の「六本木ヒルズ」、港区虎ノ門の「虎ノ門ヒルズ」等はどこも高額賃料でオフィス、住居を賃貸できています。高く貸せるということは、土地代が高くなるということです。同じ面積の土地を細分化してつかうのとまとめて使う(再開発)の違いで、5倍から10倍も価値が上昇します。
今から30年前のバブル時に地上げで町が歯抜け状態になった新宿区富久町。ここの西富久地区第1種市街地再開発事業(メインの建物は「富久クロスコンフォートタワー」)も昨年ようやく竣工しました。約2.6haを一体整備し、地上55階建、約1100戸の高層マンションを中心に町が整備され、公園・緑地のオープンスペースも生み出されています。1階に入居したイトーヨーカ堂も入店者で活気がありました。
あまり良いイメージが持たれていなかった日比谷線「南千住駅」の隅田川沿い一帯も20年くらい前から始まった高層マンション中心の区画整理事業で、すっかり近代的町並みとなりました。
スカイツリーの北側隣接駅である「曳舟駅」も駅周辺は高層ビルが数本竣工し、町がすっかり様変わりです。しかし、ちょっと歩くと今でも2m幅員の道に15坪前後の区画の家がびっしり建っている京島の町並みが残っています。市街地整備が促されている木造密集市街地(通称、もくみつ)の代表的地域です。一たび震災が起きたり、火災が起きれば大惨事間違いなしの町並みです。この一帯をまとめて再開発し震度7でも倒壊しない耐震性の高い町並みにすれば、一気に東京の安全地帯が広がります。
中国の場合だと市政府が「このエリアは再開発します」と決めれば、ほとんどの場合強制的に旧住民は退去させられ、立派な建物が再建されます。同意の仕方が滅茶苦茶とは言え、短期間で価値のある都市を作り出す力は不動産業者的には素晴らしいと賞賛できます。
首都直下巨大地震(震度6以上の揺れ)の確率が、東京46%、横浜78%、埼玉51%と言われています。昨年、麻生副首相が「金を掛けないで景気が良くなるアイデアを出せ」と官僚に指示したようですが、大都市の再開発をバンバン進めて震災に強い街づくりをすること。これに勝るものはないと思っています。
金だけ配るだけの地方創生は直ぐに止めて、大都市の震災対策=再開発事業の推進に直ぐに舵を切り替えるべきでしょう。そのためには、地権者の同意は2/3以上で十分だと思います。現在の東京で再開発を行えば必ず土地の価値は上昇するので、全体的資産価値(不動産価値)は上昇します。その分金持ち(マンション所有の資産家)が増えるので、景気は良くなる方向に動き始めます。
都心には近いけどパッとしない街、例えば台東区、荒川区、墨田区辺りが再開発促進をすれば、東京の風景も経済状況もかなり変わるはずです。
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