2010年7月17日(土)

6-1 宿泊特化バジェット・ホテル

都市鑑定アドバイザリー(株) 不動産鑑定士 田中祥司

 1990年秋のバブル崩壊後、ほとんどの商品の価格が見直され、「価格破壊」の掛け声のもと低価格化への道を進んでいきました。夜の街ではもつ鍋がブームになり、1000円ちょうどでヘアカットしてくれる「QBハウス」が登場したのも1996年ごろです。

 ホテル業界も例外ではなく、1泊4000円、5000円で泊まれる低価格ホテルが1992年頃から登場してきました。これくらいの予算で泊まれるビジネスホテルは昔からあったのですが、ほとんどは地方都市駅前の三ちゃん(父ちゃん、母ちゃん、婆ちゃん)経営の小規模独立系ホテルでした。これに対して「バジェット・ホテル」はチェーンオペレーションとして台頭してきました。

 バジェット・ホテルとして伸びてきた会社は、ルートイン、スーパーホテル、東横イン、APAホテルなどが有名です。店舗数では、ルートインが235店と一番です。東横インは全体データを開示しており2009年3月末現在で、店舗数205店、客室数39,433室、売上523億2500万円、従業員数6962人となっています。1店当たりの平均値では、客室数192室、売上2億5500万円、従業員数34人です。スーパーホテルは94店、APAホテル74店となっています(2010年7月現在各社HPより)。

 これらのホテルの平均像は、下記の通りです。

①   客室面積は、1室平均8㎡から10㎡前後と狭い(普通のビジネスホテルのシングルルームで12㎡から15㎡)。

②   飲食店舗を設けないで、客室だけに絞る。朝食はビュッフェを用意し、トースト、おにぎりなど調理の要らないものを無料で提供する。

③   業務を宿泊に特化しているため、仕事が複雑でなくベテランがいなくても運営できる。その分人件費をコストダウンできる。

④   自動チェックイン機を設置し、フロント業務を省力化する。また入金は機械が扱うため、本部で管理しやすい。

⑤   客室冷蔵庫には飲み物を入れず、すべてオートベンダーでの販売。宿泊客がコンビニ店で飲み物・食べ物を持ち込むことも制限していない。

出張で泊まるだけだから豪華でなくても良いという出張族には強い支持を受けています。これとは逆に、今までビジネスホテルチェーンとして強い基盤をもっていた、ワシントンホテル(藤田観光、ワシントンホテル㈱の共同チェーン)、東急イン(東急不動産)などはバジェット・ホテルに押されて、既存店売上高をかなり落としています。 

ワシントンホテルチェーンの場合、平成18年から平成20年までで、長野、広島、札幌第2、新潟、成田エアポート、宇都宮、秋田、仙台など8店を撤退しました。逆に、銀座の新店開業、札幌第1ホテルの建替えにより、従来のワシントンホテルよりグレードアップした「グレースリーホテル」への転換を図っています。ちょっと広めで価格もやや高めのコンセプトですが、これらは好調に運営されています。ビジネスホテルの中でも、バジェット・ホテルよりとちょっとグレードを上げる差別化戦略です。

また、京王電鉄のプレッソイン(東京都内だけ8店)、JR西日本のヴィアイン(7店)、西日本鉄道の西鉄イン(6店舗、中央区銀座3丁目でも建設中)等の電鉄会社のホテルも近年積極的に出店を繰り広げています。

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