2010年7月17日(土)

5-3 最新のオフィスビルスペック

都市鑑定アドバイザリー(株) 不動産鑑定士 田中祥司

 不動産の価格でも賃料でも、一番大きな影響を与えるのは立地だ。私たち世代の人間は、不動産業界の先輩からそう教わってきました。しかし、最近のオフィスビル賃貸マーケットでは、たとえ立地が一等地でもビルがしょぼいと、賃料が半分くらいしか取れないという例も出てきています。

 立地もさることながら、オフィスビルその物のグレードが賃料に大きな影響を与えています。同じ新橋駅徒歩5分のオフィスでも、築20年の昔ながらのビルは2万円/坪、これが規模もあり最新スペックのオフィスビルであれば、3万円/坪以上は取れるでしょう。

 それでは最新のオフィスビルに求められるスペックはどのようなものでしょうか。

①   基準階面積:一般的には、基準階賃貸面積(NET)で150坪以上かどうかが、高い賃料取れるかの基準と言われています。

②   天井高さ:従来のオフィスビルは、天高250cmくらいが標準でしたが、新しいビルは270cm以上のものが当たり前となっています。Aクラスビルでは、新丸の内ビルで天高300cm、グラントーキョーで天高310cmとなっています。

③   フリーアクセス:基準階50坪、60坪のビルでもフリーアクセスは標準仕様となっています。以前は、10cmくらい床上げしましたが、現在は床上げ5cmが通常使われています。

④   空調システム:新宿の超高層ビルでも古いものは、夜10時になると空調が使えなくなってしまうビルもいまだにあります。また、階数によってビルの温度が違うため、暑すぎるフロア、寒すぎるフロアが出てしまうビルもあります。最新空調システムでは、普通に24時間空調が使え、温度調節もスムーズに行えるようになっています。

⑤   窓ガラス:太陽光の約半分は人間にとっての明るさに寄与せずに熱作用を生ずる近赤外線によるもので、近赤外線をすべて反射できれば窓ガラスから入る熱エネルギーをおよそ半分にできることになります。明るさの可視光線は取り入れつつも、日射熱を選択的に反射するガラスを窓ガラスに利用すれば冷房負荷を軽減し、大きな省エネ効果が期待できます。

また、汚れ防止塗料を塗ることで下記の効果がありゴンドラでのガラス清掃回数軽減につながります。

・導電性のため静電気が帯電せず、汚れの吸着が少なくなる。

・塗ることで親水性膜を形成し(薄い水の膜ができる)、汚れが付着しても水の膜が汚れを流れ落としてくれる。

⑥   トイレ:最近はアメニティ向上のため、大便器、小便器とも必要個数以上が用意されています。興和不動産の赤坂インターシティビルでは、女性トイレの手洗い場には椅子が用意され、女性がお化粧をできるスペースが確保されています。

⑦   警備システム:外資系企業のテナントが多い大型ビルでは、セキュリティ強化のため、全ての来訪者がカードキーで入退室するシステムが当たり前になってきました。この傾向は、2001年9.11NYテロ以来、警備が厳しくなってきました。また、エレベーター、各階廊下の防犯カメラも標準装備になりつつあります。

⑧   外観:最近のAクラスビルは、ほとんどが外観をガラスで仕上てあります。一時期ガラスの価格が値下がったためガラスを多用したビルが増えたのですが、最近はガラス価格も高騰しており、建築主としては大いに迷うところです。ガラスの良さは、劣化しないため清掃さえ気を付けてやれば、何時までも古さを感じさせないところです。

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