2010年7月17日(土)

9-コラム  気の毒な有効活用

都市鑑定アドバイザリー(株) 不動産鑑定士 田中祥司

 最近、新興不動産会社で「再活(再生活用)」と言う広告を多用している会社も見られます。元々不動産業界では、有効活用=有活という略語があり、ゼネコンの営業、賃貸マンション管理会社等で使われていました。土地の有効活用が本格的に言われだしたのでは、平成バブルになってからだと記憶しています。土地もあまりに高くなり過ぎ、もう買えなくなってきたので、地主さんに建物を建ててもらって、その管理業務で儲けようと考えたのです。

 しかしただ管理料を貰うだけでは大儲けできない、できるだけ大きい利益を得ようとして考え出されたのが、サブリース方式(現在の正式用語で言えば、マスターリース)だったのです。すなわち土地を持っている地主さんに建物を建ててもらい、ディベロッパーやゼネコンが建物1棟を借り上げてしまう。これをエンドテナントに賃料を上乗せして、鞘抜きをしようとしたのです。

 しかしバブル崩壊以降賃料も下がり始め、オフィスビルであれば当初予定していた3万円/坪、4万円/坪という賃料は取れなくなってしまいました。サブリースで借りてしまったディベロッパーは、ただ空けて空気に貸すよりも安くてもテナントがいた方が良いと、オーナーから借りている賃料を大幅に割り込んで、エンドテナントに貸しました。それでも、ディベロッパーにとっては毎月赤字垂れ流しであることには変わりありません。何とかオーナーに頼み込んで、サブリース賃料減額を願い出ました。

 一方、大半は個人地主であったため、土地はあっても資金は無いと言う方が大半でした。また、バブル時代の建築費は高騰しており、ピーク時では事務所ビルであれば200万円/坪を超える建築費もざらでした。高いサブリースの賃料だから建築費を払えるローンを組んでいたため、例え相手が困っていようとも賃料を簡単に値下げできる体力は無かったのです。

 やがてディベロッパーが当初約束していたサブリースの期間である10年、15年が到来するようになると、ディベロッパーも希望する賃料まで値下げがされなければ、もうこれまでと契約を更新することはありませんでした。後には多額の建築費の残債務が残り、エンドテナントからもらう賃料では返済額を賄いきれませんでした。平成10年頃から本格的に金融機関の不良債権処理が始まりましたが、ちょっとでも返済の滞った個人地主の債権は不良債権に認定され、少しでも不良債権額を処理したい銀行はこういう債権も外資系ファンドに売却していったのです。

 特に気の毒なのは、銀行から持ちかけられた有効活用案件です。事業の仕組みはすべて銀行系列の不動産会社が行うから間違いないと持ちかけ、資金の面倒は全部銀行が面倒みるからと地主に提案したのです。地主としても銀行がそこまで言うなら任せようと、有効活用の提案に応じたのです。これが後から手のひらを返したように、ちょっとでも返済が滞ると遅延損害金を要求され、今までの関係を断たれるかのように債権ごと売られてしまったのです。

 私も平成10年から13年くらいまで、不良債権のデューディリジェンスでこのような案件は相当見ました。中には血も涙もある金融機関もあり、物件を処分させることは構わないが個人資産までは追わないで欲しい(個人が連帯保証しているので、取りに行けば自宅、その他資産まで弁済に充てさせることができる)。それを前提で値付けをして欲しいと、頼んだ金融機関もあったようです。ただ、大半はビルどころか他の資産も失ってしまった地主さんは五万といました。

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