2010年9月22日(水)

ワタミの渡邊美樹さんの講演

都市鑑定アドバイザリー(株) 不動産鑑定士 田中祥司

 全日本不動産協会の法定講習会を先日受けた折、第1部がワタミ㈱の渡邊美樹会長の講演で、その活動に感銘を受けました。

 冒頭、カンボジアで学校を作っているビデオが流されました。行列のできる法律相談でやっていたのと同じノリ(企業イメージのため)かなと思っていたら、次に孤児院が作られたとなり、最後は農地を買って耕し始めたという展開。その後に渡邊さんが登場し、講演となりました。

・カンボジアの貧困脱出を手伝うボランティアは、11年前から関わっている。School Aid Japanとして活動し、学校建設だけで140箇所できた。勉強したい、勉強して何とかどん底から這い上がりたいと言う子供たちばかりで、たった2時間の授業を熱心に聴いてくれる。逆に言うとこの2時間しか子供たちには自由になる時間がない。

・  熱心に学校に来ていた子供がある日から急に来なくなったりする。両親がいなかったり仕事がなく貧しくて、子供たちが人身売買で3万円くらいで売られてしまうことも良くある。

・  学校だけ作っても駄目なので、こういう子供たちを育てられる孤児院を作ることになった。約2haの土地を買い孤児院を建て、現在80人くらいの子供たちが生活している。

・  今取り組んでいるのは、農業で何とか生活できる仕組みを作ろうと言うことだ。300haの農地を買って、開墾を進めている。昔は肥沃な畑だったものが、内乱でその後ずうっと放置されて荒地になっていた。1haの30%を溜池にして、30%を畑、30%を田、10%を家畜用という感じで生産しようと思っている。計算では1haで4人が生活できるはず。300haの畑であれば1200人が生活できる。

・  農産物は農薬を押さえたオーガニック野菜作りをする。ワタミはアジアを中心に海外展開しているので、食材としてワタミの海外店舗で買い取ろうと考えている。

・  ただカンボジア全体で言えば、極度の貧しさに行くたびに絶望に襲われる。自分たちの活動があまりにもちっぽけなので、焼け石に水の状態だ。ただ焼け石に水でも、たとえ少数でも助かる子がいるのであれば、やり続けるべきだと思って活動している。 

 居酒屋に介護事業に学校経営に大忙しの渡邉さん(50歳で私の同い年)が、11年もこういう活動に従事されていることは、心底大したものだと思います。

 ワタミで最近買った会社で、儲からないけど良かったなと言うのが、長崎発祥の独居老人へのお弁当宅配会社だそうです。50歳台~60歳台がお弁当を作り、60歳台~70歳台が宅配し、70歳以上の独居老人がそれを食べる。長崎と言う坂が多い特殊性で、足の悪くなった老人は町に下りて来られず、この事業が始められたそうです。一日誰とも話す機会が少ない老人は、宅配で運んでくれる高齢者としばし歓談(運ぶ方も特段忙しく無い)。おかげで一日で運べる件数はもの凄く少ない。この生産性の低さが、この会社の持ち味だそうです。

 急成長させた経営者ですから、上記のような美談にはない色々な激しさはあるのでしょうけど、時折こういう話しを聞くのは心の薬になります。

注1)ワタミHPより、”School Aid Japan(SAJ)は「一人でも多くの子どもたちに、人間性向上のための教育環境と教育機会を提供する」ことを目的としており「子どもにかかわる教育支援プロジェクト」に積極的に取組んでいます。 ”  http://www.schoolaidjapan.or.jp/about_saj/syushi.html

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