2010年6月2日(水)

1-1 土壌汚染対策法

都市鑑定アドバイザリー(株) 不動産鑑定士 田中祥司

平成15年2月にわが国初めての包括的な土壌汚染に関する「土壌汚染対策法」が施行され、それまであまり考慮されていなかった土壌汚染問題が一躍クローズアップされるようになりました。現在では、土壌汚染対策法の内容も不動産取引においては広く認識され、土壌汚染の可能性がある工場跡地等は、土壌汚染調査を行ってから取引するのが当たり前になりました。ノンリコースローンの調達にあたっては、土壌汚染物質が検出されないことが必須事項になっており、エンジニアリングリポートでは必ず「環境関連調査」項目として調査されています。

元々は、米国で1980年に「スーパーファンド法(CERCLA:包括的環境対策・補償・責任法)」として施行され、その内容がベースとなっています。米国のスーパーファンド法は、浄化の費用負担を有害物質に関与した全ての潜在的責任当事者が負うとされています。すなわち、現在の所有者だけではなく、有害物質が処分された当時の所有・管理者、有害物質の発生者、有害物質の輸送業者、及び融資銀行まで含まれます。我国の現行法では、所有者だけが責任を負い、その他の関与者、まして融資銀行まで責任が及ぶことはありません。

土壌汚染に関する日本の基準は、米国基準に比べてもはるかに厳しい数値になっています。例えば自然界由来(元々自然の中にあるという意味)の物質でフッ素、砒素があります。我国の基準では、土壌1kgあたりフッ素が4000mg未満、砒素150mg未満とされています。両物質とも海中には普通に混じっている物質ですので、海沿いの土地の調査を行うと基準値以上で検出されることも良くあります。この基準が本当に危険な数値ならば、海岸沿いは危なくて住めないことになってしまいます。

土壌汚染の調査は、各段階でフェーズ1からフェーズ4まで分かれています。

フェーズ1:地歴調査。通常は古い住宅地図を辿って、工場、ガソリンスタンド、クリーニング工場、病院などが無かったか調査します。最近ではフェーズ1段階で、周辺住民に聞き込み調査まで要求する銀行、レンダーも増えているようです。

フェーズ2:サンプリング調査。フェーズ1で過去に有害物質を出している恐れがある作業所や事業所が存在する場合は、実際に現地でボーリングで試掘し、土壌から発生しているガスを集めて、土壌の分析調査を行います。ケースバイケースですが、10mメッシュ(100㎡毎)ごとに1箇所、ボーリング調査とガス調査を行うことが多いようです。

フェーズ3:フェーズ2でクロ(有害物質が検出された場合)と判定された場合は、有害物質が基準値以下に収まるように、処理作業を策定し土壌改良工事費を見積もります。この費用見積りがフェーズ3です。売買予定の土地で、どうしても売主の都合で早く決済したい場合、フェーズ3まで売主側で行い、売買予定代金から土壌汚染処理費用を差引いて決済すると言うケースも良くあります。

フェーズ4:フェーズ3で策定された計画に基づき、実際に土壌処理を行います。

有害物質は、①揮発系ガス(四塩化炭素、ジクロロエタン、トリクロロエタン、ベンゼン等)、②重金属系(カドミウム、水銀、六価クロム、シアン、鉛、マンガン等)③農薬系とに分けられます。重金属がその場を動かないのに対し、揮発系ガスはどんどん地中に浸透していってしまいますので、拡散して被害が広がってしまうリスクは揮発系の方が高いと言えます。特に地下水に揮発系ガスが入り込むと、相当の範囲に有害物質が広がってしまう恐れがあります。

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