2011年2月12日(土)
佐渡の大空に舞うトキ
都市農村交流仕掛け人の大越貴之さん企画「佐渡ツアー」が、2011年1月にあり、参加させてもらいました。今年の冬は、日本海側はどこも大雪。漁船が沈没するほど雪が降っているのに、本当にツアーが出来るのか心配していると、「大丈夫ですよ。新潟市は雪があまり積もらないし、佐渡はもっと降りませんから。佐渡には暖流が流れているんです。」
今回のツアーの参加者は、大企業のCSR担当者の方が多くいました。佐渡のトキを見学し、佐渡のトキと自然を守る運動に対し、企業側が何をできるか考えよう、という趣旨です。まあそれは、私にとっては表向きで、旨いもの食べて旨い酒が飲めれば、厳冬の中でも行った甲斐があるというものです。
新潟港から佐渡までは、高速艇(ジェットフォイル)で約1時間ですが、我々が乗ったカーフェリーは約2時間30分。結構、新潟市から離れています。沖縄本島の2/3の大きさがある佐渡島はめちゃ大きく、とても立派な島です。到着後、地元寿司屋さんで、佐渡の新しい名物にしようとしている「ブリカツ丼」を食べ、いよいよトキ見学ツアーのスタートです。
最初に訪れたのは、佐渡市新穂長畝(にいぼながうね)地区のトキ保護センターです。日本産のトキは、2003年に一度は絶滅しました。今育っているのは1999年に中国からもらったトキで、これを人工で育て産卵させ、徐々に数を増やしています(平成22年9月現在171匹)。保護センターは環境省所管で見学できませんが、隣接する佐渡市運営のトキ資料展示館(トキの森公園)を見学できます。
資料館の中には、日本産で最後のトキとなってしまった「キン」の剥製が展示されています。トキは外側は真っ白ですが、羽を広げると内側は、鮮やかな朱鷺色(濃いピンク、もしくはやや薄いオレンジ色)となっています。この美しい羽が目当てで、明治以降乱獲が行われたとの説明でした。
資料館の隣が飼育繁殖ケージで、ここで本物のトキが育てられています。おう、いた、いた!ちょっと狭いですが、本物のトキがケージの中でバタバタ羽ばたいています。10羽くらいいるでしょうか。人工飼育とは言え、天然記念物のトキが見られる。有り難や、有り難や。佐渡まで来た甲斐があります。
その後は、野生復帰ステーション(約22ha、環境省所管)を遠くから車窓で見学。ここには、一段と大きい順化ケージ(50mx80mx高さ150m)があり、自然界に放される(放鳥)予定のトキが、外界でも生きて行けるように訓練されています(餌の採り方、飛ぶ訓練)。野生復帰ステーションのそばに、2008年の第1回目トキ放鳥が行われた場所があり、その時は秋篠宮夫妻が放鳥に立ち会いました。
そしてフィナーレは、運が良ければトキが見られるかもという場所に案内されました。案内人は、何年も前からトキを守る田んぼ(無農薬、無化学肥料)で、米作りをしている斉藤真一郎さんたちです(平成23年1月16日NHKの番組にも出演)。見られるかどうか分からない自然界のトキを、厳冬の中、ひたすら待っているのです。バスから降りた時は運良く雪が止んで、ちょっと薄日が差す絶好の天気。でも、寒い中をただ待つのも、結構しんどいなあ。
暫く経って「あっ、トキだ!」と、誰かが叫びました。しかし、それは羽の内側も白い色の鳥。「あ~、あれはサギだ」、まさしく詐欺です。
だんだん寒くなって、保護センターで本物のトキが見られたし、良かったよねなどと話している時です。「見えた、見えた!トキだ!」。雪原が広がる田畑の上を、優雅にトキが飛んでいます。遠くですが、羽の色もうっすらオレンジに見えます。トキは1羽でしたが、我々の上を飛んでいって、山の向こうへ消えました。
いや~、良かった。自然界のトキが見られるなんて、大感動ものです。その後ももう少し頑張ろうということで、20分くらい待っていました。
「また、来た!」その声に引きずられて空を見上げると、トキが群れで飛んでいます。4羽が群れで、大空を飛んでいます。暫くの間、山の向こうにトキが消えていくまで、一同無言で見守っていました。
1時間くらい外で待っている間に、2度も大空を羽ばたくトキが見られるなんて。沖縄では、ヤンバルクイナに会えなかったけど、西表島では山猫に会えなかったけど、佐渡ではトキに会えました。佐渡にはトキに会える感動が待っています。
追記1)CSRは、Corporate Social Responsibilityの略で、日本語で言えば“企業の社会的責任”と言う意味。あまり金儲けばかりやってないで、法人だって社会の一員だから、地域社会に善意で貢献しましょうよと言うことです。どう貢献するかは何でも良いのですが、何となく環境保護に結び付けて捉えられることが多いようです。佐渡の物産品を、新興国に輸出できるよう手助けした方が、地元の人は嬉しいと思うのですが。
追記2)自然界のトキが餌で困らないように、佐渡市では減農薬、減化学肥料の田んぼを推奨しています。この田んぼで取れたお米を朱鷺認証米の「朱鷺と暮らす郷づくり」として、ブランド化して売っています(農薬使用は50%以上減らす必要あり)。この活動を支持してくれる消費者が多く、手間が掛かる分多少価格を高くしても、順調に売れているそうです。米が高く売れるとなると、減農薬、減化学肥料の田んぼがどんどん増え、平成22年度は約1,200haまで拡大しています(参加者650人)。経済的利益と結びつくと、環境保護も飛躍します。http://www.city.sado.niigata.jp/eco/info/rice/index.shtml
追記3)ホテルに着いてから美人のお上さんに、外でトキに会えたことを伝えると、「そうですか、それは良かった。私達でも見たことが無いのに。」とのこと。我々は相当に運が良かったようです。
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