2011年2月16日(水)
TPPとはどんなものか?
平成23年2月11日朝の日本テレビで、「TPP大議論」が放送されていました。日本にとっては、歴史を変えるほどの重要な決断なので、今回は真剣にメモを取って番組を見ました。
・ 従来から貿易の関税を下げようと、FTA(Free Trade Agreement:自由貿易協定)、EPA(Economic Partnership Agreement:経済連携協定)などの協議が行われた。FTA、EPAは基本は2国間での協定(中には、北米自由貿易協定NAFTAなどの複数国協定もある)。EPAは、FTAよりより広く、貿易の関税自由化だけに留まらず、投資や人の移動など広範囲の協定となっている。
・ TPPとは、Trans-Pacific Partnership、環太平洋経済連携協定が正式名称。2006年5月にシンガポール、ブルネイ、チリ、ニュージーランドの4カ国加盟で取り決めた経済連携協定が発端。加盟国間の経済制度(サービス、人の移動、基準認証)などに於ける整合性を図り、貿易関税については例外品目を認めない形の関税撤廃をめざしている。
・ 本来狭い経済圏協定だったTPPに、昨年米国が参加することを正式に表明(アジアだけで巨大な経済協力圏が形成されてしまうよりは、自らリーダーシップを取りに行った)。米国に続いて、オーストラリア、ベトナム、ペルー、マレーシアも参加を表明。カナダは条件付で参加表明したため、現状では参加が認められていない。これらの国が次々と正式に参加したため、TPPの流れが一気にできてしまった(日本政府関係者の予想を上回る急展開)。
・ 韓国は、参加に前向きに検討している。既に米国、EUとの間でFTAを締結済。農業関連で韓国でも大騒ぎになり、自殺者も出たが、産業界が農業近代化に協力していくと言うことで何とか収まった。EUにおいては、韓国はFTAを締結しているので、テレビの関税は0。これに対して日本は関税14%が課税される。ただでさえ競争力が落ちている家電分野では、ダメージが大きい。
・ ちょっと前の経済産業省の試算では、TPP不参加とした場合10.5兆円の輸出が減少する。参加した場合は、3.2兆円が増加。
・ TPPに参加すれば農業分野は壊滅的打撃を受けるというのが農林水産省の見解。最大11.6兆円の損失と試算している。
・ 農林水産省OBの東京大学教授は、日本はただでさえ食料自給率が40%しかない。TPP参加でさらに食料自給率が下がれば壊滅的だ(それにしても、農水省はどうしようもない話を繰り返す)。
・ 反対の立場での心配事としては、TPPに参加すると人の移動も自由になるので、安い労働力が海外から入ってくる。看護師でも低賃金の海外の労働者が入ってきてしまう。公共事業でも、海外企業が安く請け負ってしまうかも知れない。米国の金融保険が日本に進出し、郵貯マネーを狙っている(郵政民営化の時も同じような話を聞きました)。
・ 具体的に関税はどうなっているかは、米国産牛肉の輸入に関しては、38.5%の関税が掛かっている。1000円で輸入すれば、1385円になる。たまねぎには、7.5%。
・ 日本で特に関税が高いのは、米の778%、バターの360%、小麦の252%。群馬県が生産量の90%を占めているコンニャクは、関税率が1700%と高い。沖縄のサトウキビも、21,320円/トンで工場に売られるが、このうち政府交付金が16,320円支払われており、民間負担分は5000円に過ぎない。
・ 日本側の今後の動きは、6月に交渉に参加するかどうかを決めると言うレベル。交渉に参加することでさえ、まとめられない可能性も高い。2月14日には、9カ国によるTPP第5回交渉が行われるが、日本はオブザーバー参加も断られている。
・ 韓国も日本も2国間のEPAを色々な国と締結しているが、質が違う。EPAでもハイレベルEPAは、物品の95%くらいをカバーしている。日本の締結しているEPAはハイレベルと言えず、物品の80%程度をカバーしているに留まる。米韓のEPAは、99%をカバーするハイレベル。ただ、ここでも牛肉、米は例外になっている。
・ TPP反対の立場で出ていた民主党の議員は、「米国と日本の二国間でFTAを締結すれば十分。日本の景気回復には、円安にすれば良い」との主張。これに対し竹中平蔵氏は「米国は、現在個別にFTA交渉を進める気は全く無い。現在は参加を見送っている中国も、TPPの内容を必死に探っている状況。」と対応。
・ どの国も農業を守ることには、ナーバスになっている。GDP(Gross Domestic Product)に占める農業分野のシェアは、EU1.6%、米国1.1%、日本1.5%。
・ 日本は現在約6兆円の食糧を輸入し、約4500億円を輸出している。ちなみに日本の農業生産額は、約8兆円。現在関税で守られているのは、穀物などの大規模生産農業や畜産関係。これ以外の野菜、フルーツなどは、関税で守られている品目はほとんど無い。今後輸出を増加させる余地は充分ある。
・ コンニャク農家も関税がなくなれば壊滅的に打撃を受ける。ただコンニャク製品を作るということで考えれば、3人が大規模化で生産を続け、50人が製品工場で働くと言う選択肢だってあり得る。そうなれば離農はしても離村をしなくて済む。
・ 反対派の農水省OBは、「とにかく話が急すぎて、なんの議論らしい議論もできていない。TPPを導入したらどういう結果になるのか、充分に議論を経る必要がある。」
TPP参加か、不参加か。私は竹中平蔵氏の言うとおり、参加すること、これしか方法は無いと思います。不参加なら今のまま衰退が続き、座して死を待つだけでしょう。米を一粒たりとも入れない。銀行は一行たりとも潰さない。住専処理に税金は1円たりとも使わせない。こう騒いでいた政治家が、今回もTPP反対で騒いでいるだけのように思えます。
歴史を辿れば、豊臣に攻められた時の北条家の小田原評定。黒船来航時の開国の議論。ナポレオン失脚後のウィーン会議。重要な場面での会議は、堂々巡り、責任回避、問題先送りは世の常です。それでも奇跡的に上手く行った明治維新の例もあります。有言実行で菅首相には、死ぬ気で頑張って欲しいと切に願っています。
追記1)世界貿易機関(WTO)が15日に発表した日本の貿易政策に関する審査報告では、農業部門について滅茶苦茶悪く書かれていました。「他の部門に比べて生産性が著しく低い」。国内総生産(GDP)に占める農業生産高は、1.2%にも関わらず、GDP比1.1%の政府支援を受けている、とも書かれています。野菜、果樹、養鶏などは、生産性は高いと思いますが、米、小麦の関税をみると、こう言われても仕方ないのでしょう。
追記2)日本の輸出企業が取る、TPP不参加シナリオの現実的対応策は、生産現場の海外移転しか無いのでしょう。関税でハンディキャップが課せられるよりも、関税が低く、人件費が安い国に行った方が、何ぼか得ですから。しかしこうなると、ますます国の活力が無くなります。
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