2011年4月23日(土)

スキー場の再生は自らの力で

都市鑑定アドバイザリー(株) 不動産鑑定士 田中祥司

 数々の飲食店舗を立ち上げ、毎期安定して利益を上積みしているのが際コーポレーション。紅虎餃子房、葱や平吉、とんかつ富太塿等。中華、和食、洋食、イタリアン、多岐に渡るお店が約350店舗、売上250億円を超える飲食専門企業です。低迷に悩むグローバルダイニング(モンスーンカフェ、ゼスト、権八、ラ・ボエム等)とは対照的です。この際コーポレーションを率いるのが、中島武社長です。http://www.kiwa-group.co.jp/index.php

 銀座コリドー街に、イタリアンのお店「nero/occhi」が半年くらい前にオープンしましたが、オープンエアで雰囲気も良く、本物の石焼窯で焼いたピッツァはなかなかの絶品です。開店当初、ちょんまげ&オールバックのオジサンが店を仕切っていたのですが、どこかで見たことのある顔。帰ってからネットで調べてみると、それが中島社長でした。ネロオッキは際コーポレーションの店だったのか。中島社長自らが、夜10時過ぎまで現場に立っているのかと感心しました。

 その中島武さんが書いた本「そのお店、今なら再生できます:柴田書店」を読みました。本の中で面白かったのは、マイナーなスキー場の再生を頼まれたところです。
 再生を頼んできたのは、長野県の戸狩温泉スキー場(開業100年の老舗)。総予算は1000万円しかないということで、スキー場のゲレンデ食堂に絞って、立て直すことに。そもそも1000万円程度では、他人を使ってリフォームしたらこの何倍あっても足りないので、村の人達自らが立て直すことを中島さんは提案します。
・まずホームセンターに行って、ペンキと刷毛を買ってくる。
・村人自らがペンキを塗る。
・村の小学生に絵を描いてもらい、その絵をゲレンデ食堂の壁に貼る。
・今までのありきたりの店名を、インパクトのあるネーミングに変える。何が一番誇れるものか聞いたところ、星がきれいに見えるというので、「星フル降るレストラン」に変更した。

 次にメニューの変更を村人みんなで考えます。地元の誇れる食材は何かと聞くと、「みゆきポーク」通称「りんご豚」が美味しいとの答え。これでピンと来て、りんごと豚を使った新たなメニューを作ろう。何が良いかと思案し、出てきた答えが「りんご豚まん」。
 “村人自らがスキー場を何とかしようと立ち上がった” この話を積極的にマスコミに流したことで、多くのテレビ局が放送してくれ、一躍「戸狩温泉スキー場」、「りんご豚まん」の名前はメジャーになった。ゲレンデスキー場の「星フル降るレストラン」は、対前年比で売上が約2倍(+109%)、スキー場の来場も+23%と素晴らしい結果が出た。
http://www.togari.jp/eat/index.html

 この成功を聞きつけた近隣のスキー場「オリオンゲレンデ」からも何とかして欲しいと依頼が来ました。今度はもっと低予算の300万円。こうなるとビジネスではなく、ボランティアの範疇です。
 ここでは、至る所に観光客を迎える雪だるまを作ろう(コスト0円)。ゲレンデ食堂を「スノーダルマ食堂」に名前を変える。村の人と一緒に厨房に入り、今まで取り柄のなかったラーメン、カレー、丼ものなどを、美味しい料理になるよう徹底的に教える。そこに地元らしい料理を提供しようということで、村の名物料理「田舎すいとん」をメニューに加えた。
http://www.togari-hs.com/snowdarumamenu2.htm

 昔は、黙っていてもお客さんが来てくれたスキー場が、どこもスキー客激減で苦しんでいます。それでも自らのアイデアとやる気、実行力があれば打つ手はいくらでもありそうです。スポーツのスキーだけを売り物にするのではなく、料理、もてなし、寛ぎなど、都会人を満足させる方法は何か。地元の人が一生懸命考え抜いて、行動に移したところだけが、厳しい時代を生き抜けるのでしょう。

このエントリをはてなブックマークに追加このエントリをdel.icio.usに追加このエントリをLivedoor Clipに追加このエントリをYahoo!ブックマークに追加このエントリをFC2ブックマークに追加このエントリをNifty Clipに追加このエントリをPOOKMARK. Airlinesに追加このエントリをBuzzurl(バザール)に追加このエントリをChoixに追加このエントリをnewsingに追加

最新記事

不動産業界コラム

過去の記事

ページの先頭に戻る↑