2011年6月10日(金)

カラオケ店の秘密

都市鑑定アドバイザリー(株) 不動産鑑定士 田中祥司

 カラオケ店の現在の店舗数のビッグスリーはネット記事を見ると、3位がビッグエコー(278店)。2位がシダックス(303店)。そして第1位が、まねきねこ(311店)。
 まねきねこ?聞いたことが無いお店です。そんなところが、いつの間に店舗数1位になっているのか。他のカラオケチェーンもどうなっているのか?カラオケ店最新事情をまとめてみました。
①まねきねこ
 まねきねこは、群馬県前橋市に本社を置く(株)コシダカ(腰高博社長)が経営しています。HPを見ると平成20年9月の設立となっていますが、カラオケ事業はもっと前から始めています。東京ではまだ3店舗しか出店していませんが、北海道から沖縄まで全国展開をしています。撤退した他社のカラオケ店舗をそのまま借り受け、低コスト運営で一気に戦線を拡大しました。

 腰高社長の社長インタビューがネットで見られますが、概ね下記内容でした。
・当初はお父さんの中華料理店を引き継いで、4店舗を経営。その後カラオケ店に進出。4店舗まで出店したところで、銀行からこれ以上資金を貸せないと言われた。
・そんな折に平成9年1月に潰れたカラオケ店を借りないかと言う話があった。他人が経営して潰れたお店と言うことで悩んだが、とにかくやってみようと引き受けた。設備、内装は出来上がっているので、通常の出店費用の1/20で済んだ。
・このお店が順調に経営できたことで、この居抜き出店は大きな商売になると直感する。その後の出店は、ほとんど閉鎖店舗を引き受けるやり方で店舗拡大を行った。
 低コスト運営の手法の一つが、食べ物・飲み物の持ち込み自由にさせていることだとか(一番儲かりそうに見える飲食販売をあえて否定)。飲食部門の人件費を削減するために、持ち込みを自由にさせる。“まねきねこは安い“とお客さんに認知してもらうことで、地方都市では大いに受けているようです。

②カラオケ館
 ㈱ビーアンドブィが経営母体で、本社は中野区鷺ノ宮にあります。業界人に言わせると「カラカン」と呼ぶようです。全国約100店舗を経営していますが、東京周辺が中心なので、我々にも馴染みのある名前です。
 それ以上に不動産関係者に超有名なのは、東京都心部の高額の商業地を良く買っているプレーヤーだからです。一番有名な案件は、2004年に取得した銀座通り沿い銀座6丁目の「東京羊羹」の買収でしょうか。ここを買ってカラオケ店を作ると言う話しが出ると、銀座通り商店街の反対で駄目になり、それではと隣地を買収して店舗ビルを造ることになりました。これが現在のアバクロ(アバクロンビー&フィッチ)店舗です。着工前から出店希望者の入札を行い、高額の賃料で仕留めたのが当時日本初進出を目指していたアバクロです。
 その他にも六本木5丁目外苑東通り沿いの後藤花店が持っていたカラオケ店舗、新宿の歌舞伎町1丁目パチンコ店舗、渋谷センター街のパチンコ店店舗、銀座4丁目外堀通りの大公鶴亀ビルなど、ここ数年でも積極的に買っています。

③パセラ
 (株)ニュートンが経営しており、現在東京を中心に18店舗あります。代表者の荻野勝朗氏は、スポーツ用品のヴィクトリアの創業者です。ヴィクトリアは、2005年に同業のゼビオに事業譲渡され、荻野社長の手は離れているようです。
 ニュートンがここまで大きくなれたのは、カラオケ事業よりもスロット専門店の「グリーンピース」の成功にあったようです。最近はパチンコ店の「えだまめ」を併設し、「グリーンピース&えだまめ」の店舗を展開しています。その他にレストラン事業、ダーツバー、ウェディング事業なども経営しています。
 秋葉原のパセラには、内装が全て「エヴァンゲリオン」仕様になっている部屋があります。エヴァゲリ・ファンのオフ会は、必ずここが使われると言う有名店なのだそうです。

④歌広場
 歌広場は、(株)クリアックスが経営しており、現在67店舗となっています。サウナ、パチンコ店を経営していた李支宗氏が1994年に設立しています。
 李氏が経営しているもう一つの柱が、ホテル業の伊東園です(経営会社は(株)スタディ)。2001年に伊東園ホテルを競売で買い取った李氏が、ホテル事業に進出。伊東園は現在33カ所のホテル経営を行っていますが、ここも低コスト経営で利用者の支持を得ています。365日同一料金を謳い、朝だけでなく、夕食もバイキング形式で人件費等を軽減しています。伊東園が買い取ったホテルは、伊香保グランドホテル、熱海のニューフジヤホテルなど大型ホテルが多く、以前は一世を風靡したのが団体客が減少することで閉鎖に追い込まれたものが多くあります。

⑤エクシング
 カラオケが出だした頃は、今の若い方には分からない8トラックのカセットでした。平成になってレーザーディスクと進化したカラオケも、今や通信カラオケ方式となっています。
業務用通信カラオケ事業者の世界では、当然老舗の第一興商が一番だと思っていましたが、業界1位はエクシングです。エクシングの母体はブラザー工業ですが、40年以上前はミシン会社で超メジャーな存在でした。その後30年前はワープロ事業に進出、近年ではプリンター、ファックスで名前は見かけます。そのブラザー工業が、いつの間にか通信カラオケでトップ企業となっています。
 沿革を見ると、1992年に「JOYSOUND」ブランドで設立。2010年1月にUSEN系のUGAをM&Aし、第一興商を抜きました。業務用通信カラオケは、エクシングと第一興商「DAM」でほぼ100%を寡占している状況です。

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