2011年10月6日(木)
野菜の種は、一代限りのF1種
野菜を作る農家さんの本「木村秋則と自然栽培の世界(日本経済新聞出版社)」を読んでいたら、今の日本農業の野菜の種はF1ばかりだ。これからは固定種(在来種)で美味しい野菜造りを目指すと書いている方がいました。関野幸生さんの「もう一度自然界から学ぶ時が来た」の章です。
野菜の種がF1?一体どんな意味だろうと思いながら読んでいると、何となく分かってきました。さらに野口種苗研究所さんのコラムを読んで、もうちょっと理解できました。普段何も考えないで食べている野菜には、工業化されたタネの仕組みがあったです。
野口種苗研究所さんのコラムhttp://noguchiseed.com/
① 種を交配させると初代だけは優秀な野菜が産まれる(雑種強勢)
人間でも長年同じ一族だけで結婚を繰り返すと、優秀な子孫が生まれにくくなる。そこに全くの異民族(例えば外国人)と結婚したりすると、その子供は両者の優秀な部分を多く引き継ぐ。これと同じことが植物でも起きる。同じ茄子、キュウリでも違った種類の種を掛け合わせることで、両方の良い点を多く引き継ぐ優秀な(強くて美味しい)野菜ができる。ただこれは交配させた一代目だけの現象で、この現象を雑種強勢と言う。
これに対して同じ種族の野菜だけで作られた種が固定種(畑でできた種を取って、次回これを撒く)。伝統野菜・地場野菜と呼ばれるもので、その地域の気候風土のなかで何世代にもわたって選別・淘汰されて、その地域の風土に合った種として固定化したものを指す。
雑種強勢の原理を利用し違う種類を掛け合わせて作った種が交配種で、その1代目のがF1種(First Filial Generation)。2代目からは、1代目の優秀な点が発揮されなくなってしまうので、1代目のタネは取らない。従って野菜作りの農家は、ずうっと農協を通じて種屋からタネを買い続ける。
② 交配種(F1種)の良い点、悪い点
雑種強勢で優秀なタネができるので、長所が多々ある。野菜の揃いが良く、均一に成長するので栽培計画が立てやすい。発芽も収穫も一斉になる。固定種だと品物も収穫時期もバラバラで手間がかかる。また、雑種強性のおかげで、成長が早いことや、果菜類では雌花を増加させて、収穫量を増大したりさせることもできる。他には、特定の病気に対する抵抗性を高めたり、野菜、フルーツの糖度を高めることができるのも一代雑種のおかげ。
こうして手間が掛けられたタネなので価格が高い(種屋が儲かる)。また、どこで作っても同じような味なので、野菜本来の旨味は味わえない。
③ 固定種の良い点、悪い点
固定種は成長が不揃いで生育も遅いので、儲かる農業には向いていない。固定種の良い点は、一度タネを買えば、以後自分でタネを採れること(種屋にとっては好ましくないし、タネを売る農協にも好ましくない)。一番の長所は、日本人が長い間かかって受け継いできた、伝統の味、旬の味覚が味わえること。どこで作っても同じような味になるF1種の野菜に比べ、その土地の成分を吸って環境にあった固定種野菜は味わいが強い。形や見た目は悪くても、在来固定種の野菜の美味しさは格別。
農家にしてみればタネは高くても、栽培しやすい(扱いやすい)F1種の方が良いのでしょう。ただ本当に美味しい野菜を作ることで、価格競争に巻き込まれずに利益を出す戦略もあります。少量の野菜を固定種のタネで手間を掛けて作り、一般の2倍から3倍の価格で直接消費者に売る(らでぃっしゅぼーや、大地の会を通すことも考えられますが)。ネット・口コミの威力でそういうことが簡単にできる世の中ですし、革新的農家さんには是非頑張ってほしいものです。
追記)日本テレビの青空レストランで、岐阜県高山市丹生川町の宿儺(すくな)カボチャを取り上げていました。これも固定種タネの野菜で、50cmから60cmの長さがある大根を太くしたようなカボチャです。ずっと自家用野菜として栽培されていたのが、ここ10年くらいで全国的に売り出したようです。甘み、旨みが強いと盛んに宣伝していたので、是非食してみたいと思います。
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