再開発ラッシュの大手町を行く

都市鑑定アドバイザリー（株） 不動産鑑定士　田中祥司

　年明け大手町界隈を歩き、この間まで基礎工事途上だった大手町地区の巨大ビルが、次々と完成間近であるのを再認識しました。古ぼけたビル街だった大手町が、今や丸の内と変わらない新しいビル街に変身しつつあります。

①旧ＪＡビル、旧日経本社、旧経団連会館の再開発　新名称「大手町フィナンシャルシティ」

　敷地面積約１４，１００ｍ2（全体）延床面積約２４２，５００ｍ2。内訳はＡ棟（ノースタワー）：地上３１階地下４階、延床面積１１０，０００ｍ2、Ｂ棟（サウスタワー）：地上３５階地下４階、延床面積１３２，５００ｍ2。竣工予定は２０１２年９月。

　　　　　　大手町フィナンシャルシティ　

　大手町連鎖再開発事業で行われているものです。第一弾は、昔の国税庁のあった合同庁舎のところにＪＡ、日経が移っている地区で、これらが移転した後の再開発です。次から次と再開発して行くので連鎖再開発事業と言われています。

　写真の通り上棟は済んだようです。施行者は都市再生機構（ＵＲ）と三菱地所ですが、Ａ棟はＮＴＴ都市開発がメインで名前が出ていました。他には、サンケイビル、東京建物が特定建築者で名前を連ねています。全体の設計は日建設計。施工監理は三菱地所設計。

ここで特筆なのが工事のゼネコンです。Ａ棟（北側）は清水建設施工なのですが、Ｂ棟は戸田建設単独での施工となっています。Ｂ棟の方が規模が大きいし、凄いぞ戸田建！三菱系列の強みで仕事を取ったのでしょうけど、これだけの規模のビルを単独で施工するのか。技術力では大手ゼネコンに引けを取らないと言うことでしょう。 

②旧富士銀行本店、旧大手町フィナンシャルセンターの再開発　新名称「東京プライムステージ」　

　東京建物が組成したＳＰＣが２００４年２月に１，４５０億円（４，３４４万円／坪）で取得しています。敷地面積１１，０３４ｍ2、延床面積約２０万ｍ2（容積対象床面積約１７万６，６００ｍ2）、地上３９階高さ２００ｍのビルが計画されています。用途はオフィス１４万３，５００ｍ2、ホテル２万２，０００ｍ2、店舗１万１，１００ｍ2で、高層部がホテルとなっています。完成予定は２０１４年、みずほフィナンシャルグループの本部が再び入るほか、ホテル部分にはハイエンドの「アマンホテル」が進出します。

　工事自体は５層分くらいの鉄骨が上がったくらいで、完成まではまだ先です。ここの特徴としては、都心に森を再生することでヒートアイランド現象の緩和を目的とした緑地「大手町の森」（仮称、約３，６００ｍ2）の整備を行います。看板を見る限りかなり本格的な森になりそうなので、完成するのが楽しみです。

　　　　　東京プライムステージ

　　　　　３，６００㎡の「大手町の森」計画

③旧住友信託本店、旧三菱ＵＦＪ信託、旧東銀ビル（東京銀行本店）の再開発　新名称「丸の内永楽ビルディング」

　土地８，０３３．９４ｍ2、延床面積約１３万９，８００ｍ2、地上２７階地下４階建て　地下１階～地上２階の商業ゾーンの名称は「iiyo！！（イーヨ！！）」（スリムクラブの真栄田のギャグと一緒なので、名前を呼ぶ時にちょっと赤面してしまいます）。

　　　　　　丸の内永楽ビルディング、低層階は「iiyo！！」

　ここは大手町では無く、地名は丸の内です。今を遡ること８年前の２００４年３月、ＵＦＪ銀行（旧三和銀行、旧東海銀行）グループは竹中大臣にガンガンに責められ大幅な貸倒評価損を計上し、そのリストラの一環で傘下のＵＦＪ信託銀行（旧東洋信託）を住友信託銀行に譲渡する約束をしました。この数カ月後に東京三菱銀行がＵＦＪ銀行を合併することになり、ついでにＵＦＪ信託を住友信託に譲渡することを反故にしてしまいました。結果、ＵＦＪ信託は三菱信託に統合され、現在の三菱ＵＦＪ信託になっています。その最中、顔に泥を塗られた住友信託は三菱信託と争う素振りを見せたものの、いくばくかの和解金をもらって手仕舞いとなったのです。

　この再開発ビルは何の因果か、隣同士でいがみ合っていた住友信託、三菱ＵＦＪ信託（旧東洋信託本店）、ついでに裏にあった三菱ＵＦＪ東京銀行（旧東京銀行本店）の三つが仲良く共同でビルを建てることになったものです。昔の敵は今日の共同事業主。

　その住友信託も三井中央信託と今春合併して、三井住友トラストホールディングスとなります。合併に伴う色々なドラマを感じさせるビルとなりました。