2012年2月15日(水)

不良在庫物語

都市鑑定アドバイザリー(株) 不動産鑑定士 田中祥司

 30数年前までは日本のリーディングカンパニーであったカネボウ。私が大学を出た頃は、5つの部門(繊維、化粧品、日用品、住宅、食料品)の多角化経営(5つということでペンタゴン経営)を標榜し、就職ランキングの人気企業でした。

 しかし化粧品部門は優良なものの、繊維、住宅、食品はパッとせず、企業の業績は低落の一方。2004年に産業再生機構が乗り込み、会社分割等で企業再生に挑みました。その時カネボウを担当した再生機構出身者から聞いた話ですが、カネボウフーズ(食品部門)倉庫を調べた時は唖然としたと言っていました。

 棚卸資産(在庫)の金額が売上に比べてやけに大きいと思って現場に行くと、古臭い段ボールが大量に積まれていた。そしてなかには何十年も前に販売していたと思われるガムが大量に入っていた。ガムに限らず、不良在庫が大量に出てきたと言っていました。消費期限内であれば在庫の評価損を立てなくても良いのでしょうけど、消費期限を偽って評価損を出さなくしていたのでしょう。

 日本で人気のブランドに育ったある会社も、リーマンショック後には在庫の山に悩まされました。資金繰りは銀行の貸し渋りで滅茶苦茶タイト。何とか在庫を換金化したいのですが、在庫を国内で安く売ってはせっかくのブランド価値がガタ落ちです。

 そんな折、知人が中東に出張に行くと言うのです。何しに行くのかと聞くと「XXXって知っているだろう。その不良化している在庫を大量に売りに行くのさ」との答え。「なんでもっと近くの韓国や中国で売りさばかないんだ?」と質問すると、「あのさ、あんまり日本の近所で大量に売っちゃうとと日本に逆流しちゃうじゃん。だから韓国、中国では売れないので、逆流しない遠くまで売りに行くんだよ。」

 数か月経って知人に「どうした、不良在庫は売れたのか?」と聞くと、「全く駄目だった。ヨーロッパの有名ブランドなら少しは反応も示してくれるが、日本の新興ブランドでは全く知名度が無かった」との答え。

 不動産業界に限らず、在庫の多い会社は要注意です。

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