2012年9月10日(月)

土佐あかうし、最高美味しいローストビーフ!

都市鑑定アドバイザリー(株) 不動産鑑定士 田中祥司

8月に京都祇園のステーキ名店「信吾」で食事をする機会がありました。メインはフィレのステーキ。一口食べた瞬間、程よい固さでしっかりとした旨味が口中に広がります。「滅茶苦茶美味しいですね。こんな美味しいステーキだと、油ばっかりのさしの入ったサーロインなんて食べられませんよね。」そうマスターに言うと、「肉の旨さは赤身の美味しさですから。松坂牛ですが、赤身の旨い肉を選んで出しています。」脂身の少ない赤身の肉を食べに70歳台の会社社長も良く来店し、500gぐらいをペロッと食べてしまうと言っていました。

テレビでも派手に霜降りが入った牛肉が映ると、「わぁ~美味しそう!」とレポーターが騒ぎ、霜降りが沢山入っているのが美味しい牛肉の象徴と宣伝されています。また、A3→A4→A5ランクと牛肉が等級付けされ、霜降りが多いほど高級、高額とされています。このため和牛生産者も、せっせと霜降り牛目指して、病的に脂身だらけの牛を育てています。でも不自然な霜降り牛肉を育てると、出荷前には糖尿病で目が見えなくなってしまうような牛だらけで、これで本当に良いのかというのが現実です。

こうして育てられた霜降り牛は、噛めば旨味では無く、油が口中に広がるだけ。100gも食べれば、食傷気味になってしまいます。見た目でA5ランクになったステーキを、本当に美味しいと思って皆食べているのだろうか?

 

話しは変わり、9月上旬に都市農村交流を企画する大越さんのツアーで高知県本山町に行きました。本山町は四国のちょうど真ん中、高知県の山間部「嶺北(れいほく)地方」にあります。嶺北地方で育てられている牛は「褐毛(あかげ)和種高知系」、通称「土佐あかうし」という、高知県独自の和牛です。

以下は「土佐あかうし」のパンフレットからの抜粋です。

・明治時代に農耕用の牛として使うために、朝鮮半島から輸入された韓牛をルーツにしています。その後、長い年月を掛けて肉牛に改良しました。現在高知県で飼育されているのは2700頭(日本国内の和牛177万頭のわずか0.15%)だけです。

・この土佐あかうしの特徴は、脂肪部分の霜降り(さし)が細かくて程よく、赤身が美味しいこと。濃厚な美味しさと甘みがあり、熟成によってさらに味わいが増します。

・食味データでは、28日熟成の土佐あかうしは黒毛和牛平均に比べて、アミノ酸(甘み)が3倍以上、グルタミン酸(旨味)が2倍以上、ペプチド酸(まろやかさ)が1.5倍以上となっています。

本山町の経営しているレストラン「四季彩然」で、地元の方との交流パーティーが夜にあり、当日の食事のメインが土佐あかうしのローストビーフ。ここのシェフがイギリス出身の料理人マイケル・シンプソンさん。本山町出身の奥さんがイギリスに留学した折、マイケルさんと恋仲になり、帰国の折マイケルさんを高地に呼んだとのこと。それから15年、マイケルさんは高知県本山町の自然と食材に惚れ、料理を作り続けています。

そのマイケルさんが作った土佐あかうしのフィレ・ローストビーフですが、これが絶品の旨さ!!噛むほどに肉の旨さを堪能できます。ソースもほとんど付ける必要が無い。高知県のそれもこんな山奥の本山町で、絶品のローストビーフが食べられるなんて思っていませんでした。

実は他のツアーの皆さんより早く昼前に本山町に着いたので、お昼も土佐あかうしのステーキを食べました。このステーキが滅茶甘みが強かったので、夜の食事は大いに期待したのですが、正に期待通りの美味しさです。

土佐あかうしをネットで検索すると、以前から土佐あかうしを絶賛する料理人が多数いると書いてあります。漫画「美味しんぼ」の作者の雁屋哲氏も絶賛。美味しんぼ第18巻では、海原雄山が土佐あかうしのユッケ、カルパッチョを出しています。

翌日、本山町で一番赤牛を飼育している秋山さんを訪ね、土佐あかうしのことを色々教えてもらいました。

・性格は大人しく、飼い易い。子供を産む役目の繁殖牛(お母さん牛)が産むのは人間と同じで1匹づつ。生まれてから28ヶ月くらいで出荷している。体重は700kgぐらいで、黒毛和牛よりは小さい。1頭から取れる枝肉は400kgくらい。

・飼料は繁殖牛は主に草を食べさせている。肉牛として出荷する牛には、配合飼料(とうもろこし、大豆・大麦の擦ったもの等)を与えている。餌も年々高くなり、現在は1tあたり6万円(60円/kg)。牛は大体出荷する肉の10倍強餌を食べる。

・草原で遊ばせているのは、繁殖牛だけ。肉牛として出荷する牛は、牛舎の中で育てる。そうしないと肉質が筋肉質になりすぎる。雄牛はそのまま育てると筋肉質の体になり、固い肉ができてしまう。従って雄牛は去勢して育てる。雄と雌の肉のどちらが旨いかと言われれば、雌の方が上である。

・本当は全頭あかうしを育てたいが、必ずしも高く売れないので、経済性も考えて黒毛和牛も一緒に育てている。

北陸新幹線の開業を来年に控えて、北陸の富山県、石川県に坂井シェフ、石鍋シェフ、三国シェフなどの有名料理人のレストランが、ぞくぞく開業していると言う記事がありました。地元の食材を使った食事で観光客を呼び寄せる戦略です。高知県内でも旅行者向けに、滅茶苦茶旨い土佐あかうしが食べられるレストランをいくつか用意すれば、土佐あかうしを目当てにやってくる食いしん坊も大勢いるはず。旨い食材は、地域の宝物であり、戦略的観光資源となります。

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