2013年1月8日(火)
ヨーロッパ人に必要不可欠だったスパイスの話し
「教科書が教えない東南アジア」(藤岡信勝責任編集、扶桑社)を読み、その中にインドネシアがイギリス、オランダの植民地になる理由が書かれていました。それは
“スパイス(香辛料)”
が欲しかったからと言うのです。えっ?なんで、香辛料、胡椒の類がそんなに重要なんだ?中世のスパイスは非常に貴重で、当時の銀の重さと同等の価格で取引されたなどと、物の本にも書いてあるけど..。
日本人にはあっても無くてもさほど生活には困らないスパイスですが、肉食主体のヨーロッパ人には無くてはならない貴重な品物である。何故なら、スパイスを掛けることで生肉の生臭さが減り、肉も腐りにくくなり長持ちさせられた、と書いてあります。冷蔵庫が無い時代には、このスパイスの効能が至極便利だったのでしょう。
もう一つの理由が、16世紀にヨーロッパ全土で三分の一の人を死に至らしめた黒死病(ペスト)が大流行した。特効薬が無い中で、スパイスが命を救う妙薬とされた。抗ペストの薬として、サフランと胡椒の丸薬が一番売れ、価格も一番高く売られていた、と書いてあります。
肉の食材にも抗ペスト薬にも有用かつ稀少なスパイスは、ヨーロッパでは気候が違い育てられません。スパイスが取れる場所はヨーロッパから遠く離れた土地、すなわちインド、東南アジア、南アジアです。スパイスをヨーロッパに運んでいたのは、アラビア商人でした。ペストが猛威を振るうと皆がスパイスを求めて、価格が急騰。これにより交易を一手に握るアラビア商人は莫大な利益を手にします。
こうなるとヨーロッパの王様や商人は、何とか自分たちのルートでスパイスを手に入れようとします。そのためにアラビア商人の流通経路ではなく、海を通って東南アジア、南アジアのスパイス産地に行けるよう新航路の開拓を行います。マゼランが船での世界一周航路を発見(1519年~1522年)するのも、このようなスパイスが欲しいと言う時代背景があったからです。
インドネシアの東部奥地にあるモルッカ諸島は、胡椒をはじめとする香辛料の一大生産地で、ヨーロッパ人はスパイスだけでなくインドネシアそのものを自分の支配下(植民地)にしていきます。インドネシアの植民地からの脱出は、第二次世界大戦後、ハーグ条約が締結され独立が認められる1949年まで掛かります。
スパイスの為に植民地にされたインドネシアや他の東南アジア各国はたまったものではありませんが、ペストから助かりたいために必死にスパイスを求めたと聞くと、歴史の流れを少しは理解できます。
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