ゴルフ界の２大巨頭の争い　ＰＧＭとアコーディア

都市鑑定アドバイザリー（株） 不動産鑑定士　田中祥司

日本の不良債権処理が始まった１５年前の１９９８年。この時大活躍した外資が、ゴールドマンサックスであり、モルガンスタンレーであり、ローンスターでした。

不良債権処理の過程で、ローンスターは不動産ディベロッパーの地産向けの債権を購入します。地産のゴルフ場関連を母体に２００１年に設立したのが、パシフィックゴルフマネージメント（ＰＧＭ）です。太平洋観光開発、ＳＴＴ開発、大洋緑化グループ、総武都市開発グループ、日本ゴルフ振興等の破綻ゴルフ場を多数買い上げ、２００５年１２月に東証一部に上場しました。現在１３０カ所のゴルフ場を運営しています。２０１１年１０月にパチンコ機器メーカーの平和がＰＧＭにＴＯＢを掛け、現在は平和の子会社になっています。これによりローンスターも投資を回収完了しています。

片やゴールドマンは、２００２年にアコーディアを設立し、こちらもローンスターに負けじと、破綻ゴルフ場を買いまくります。日東興業、日東ライフを皮切りに、緑営グループ、スポーツ振興グループ、西野商事グループ、東和ランドグループ、私市グループなどを買収。２００６年１１月に東証一部に上場しました。現在１３２カ所のゴルフ場を運営しています。

そして現在ＰＧＭがアコーディアを買収しようとして、猛烈な火花を散らしています。

ＰＧＭの親会社である平和ですが、ここも昔の群馬県の中島一族の平和ではありません。平和は１９６０年群馬県桐生市で中島健吉氏（朝鮮清州生まれ。１９３７年に１６歳で来日し、戦後日本国籍取得）が１９４９年に設立したパチンコ機器メーカーで、老舗中の老舗。１９９１年に東証に上場しました。そして２００７年に複雑な取引をして、オーナーが代わります。形式的には平和がパチンコ機器メーカーのオリンピアを吸収合併しますが、中島氏の株式をオリンピアの筆頭株主の石原ホールディングスが取得。現在では石原ホールディングス石原昌幸社長の会社となっています。

平和の中島会長が石原氏に株を譲渡した理由は、後任に指名した長男の中島権氏と、警察官僚から天下りした渡辺秀男副社長が対立して、権氏は退任に追い込まれたことでした。その後弟の中島潤氏が社長に就任し、権力闘争を繰り広げて渡辺副社長を退任に追い込みました。このような経緯の中で、石原氏に全株を譲渡し、中島一族は平和の経営から手を引いて行ったのでした。

新しく平和のオーナーになった石原氏は、パチンコ機器製造だけでなく、ゴルフ場の経営を行うことで総合レジャー企業に生まれ変わることを目論んでいるようです。この第一弾が２０１１年１０月の平和によるＰＧＭ買収です。石原氏の野望は、もう一人の横綱、アコーディアゴルフの買収です。これを仕掛けるために、元アコーディアの取締役だった神田氏をＰＧＭ社長に付けます。

２０１２年４月にＰＧＭとアコーディアの経営統合を話し合うために、石原氏とアコーディア竹生社長が面談しましたが、話し合いは破談。その後、すぐさまアコーディア社の内紛が始まります。秋本専務が竹生社長が会社を私物化したということで内部告発します。その後竹生氏は社長を退任し、内部告発した秋本専務もその後退任しています。

現在行われているのが、ＰＧＭ（実質は平和）によるアコーディア社への敵対的ＴＯＢです。公開買付け価格が８万１０００円。１年前の価格が５万５０００円だったので、かなり好条件での買い付けです。アコーディア社株式の２０％から５０．１０％の範囲で買付けを行うと表明。５０．１％まで買い付けた場合は、４２４億円が必要となります。しかし、いくら敵対的ＴＯＢは合法とはいえ、相手方をスキャンダルで潰そうとし、それが駄目ならＴＯＢと、何でもありありの買収合戦です。

統合が完了すると２６２コースの超巨大ゴルフ場運営会社が、ＰＧＭ（実質は平和）の傘下になる。これで、本当に良いのでしょうか？

追記１）株式大量所有報告書でアコーディア社の株式１３．７５％を所有する大株主として株式会社レノが登場してきました。村上ファンドの主力が移っているのがレノで、三浦恵美社長が仕切っています。ジョイント・コーポレーションのスポンサーになったり、ゼクスの介護付きマンションを購入して分譲したり、結構派手に動いています。上がりそうな株にはやっぱり喰らい付いてくるのか。

追記２）いずれＴＯＢが仕掛けられると知っていれば、値上がり確実です。投資銀行、投資ファンドの社員が個人の金をアコーディア社に突っ込んでいる人がかなりいると言う噂も聞きました。

追記３）破綻した太平洋クラブも、当初は民事再生法でスポンサーがアコーディア社に決まっていました。これが債権者集会で否決され、今度は会社更生法に変更となり、パチンコホール最大手のマルハンがスポンサーになるみたいです。