2013年1月21日(月)

カルビーの変身

都市鑑定アドバイザリー(株) 不動産鑑定士 田中祥司

ここ3年くらいで大きく企業イメージを変えたのが、お菓子のカルビーだと思います。私ら子供のころには、「かっぱえびせん」は定番中の定番で、あまりの美味しさに袋を開けたら一気に最後まで食べてしまいました。まさに「止められない、止まらない。カルビーのかっぱえびせん」のCMそのものでした。

その後カルビーは、ポテトチップスに進出し、現在の屋台骨を作ります。ちょっと前まで本社は東京都北区赤羽南にあり、ここが法務局北出張所に行く途中で「ああ、これがカルビーの本社か。やはりお菓子屋さんは、人知れぬ郊外に本社を構えるものなのか」と通るたびに思っていました。

それが、丸の内に本社を引っ越したのが2010年。その前年の2009年には、グローバル巨大企業のペプシ社の資本を20%入れると発表。長く松尾家の同族企業だったカルビーに、外資のジョンソンアンドジョンソン日本法人社長だった松本晃氏が会長兼CEOで2009年に移籍してから、こういう一連の動きが出ました。松本氏は、京都大学→伊藤忠商事→ジョンソンアンドジョンソンの経歴で、外資で揉まれた経営のプロです。

ペプシが資本参加した時の逸話で、“ペプシの会長が「じゃがビー」を食べて、「こんな旨いポテトスナックを食べたのは初めてだ!」と言った”というのを読んだ記憶があります。

カルビーはペプシ系列のフリトレー社のルートを通じて、「Jagabee」(じゃがビー)を2012年9月から北米で販売しています。フリトレーは北米のスナック菓子市場でトップシェアを持つ強力な販売網を持つ巨大企業です。カルビーは自社の名前にこだわらず、OEMでフリトレーに製品を供給する戦略を取っています。今から40年前の1970年代から、北米の巨大市場に「かっぱえびせん」、さやえんどう系スナックの「スナッピークリスプス」を販売していたそうですが、これらは今でも全く売上が伸びていません。この失敗により、今回のフリトレーの名前と販売網を借りる“他人のふんどし”作戦にしたのでしょう。

カルビー社のここ数年の業績は、確実に上昇しています。2009年3月期は、売上1374億円、経常利益47億円。これが2012年3月期は、売上1633億円、経常利益125億円となっています。2013年3月期でも、売上1753億円、連結営業利益158億円予想で、経常利益に限れば4年前の3倍以上と言う勢いです。新しく発売された「ベジップス(野菜を素揚げしたチップス)」も好調で、今期は30億円くらいの売上見込みとのこと。

海外売上比率3%(2011年3月期)から10年後2021年3月期には、海外売上比率30%を目指すと言うのが、カルビーの海外戦略です。海外の事業展開のニュースは、最近だけでも下記のようなものが見られます。

・韓国で市場シェア20%を占めるヘテ製菓との合弁を2011年に発表

・2014年3月にインドネシアでスナック菓子の製造・販売を始める。

・欧州、ロシア、オーストラリア、ベトナムなどの地域も現在複数のルートで水面下の交渉が進められている。

このような海外を目指す要因が、長期的には人口減少、少子高齢化の続く日本に留まっていては明日が無いと言う切迫感からと言うことです。

超ドメスティック(土着的)と思われたカルビーが、あっという間に世界を目指す企業に変身か!日本のお菓子は世界的に見えれば、相当に美味しいレベルにあると思います。日本のお菓子を食べたら、こんな美味しいお菓子があるのかと感動してくれる大人も子供も、世界中には沢山いるのでは。チョコレートだってアメリカのハーシーズよりも、明治、グリコの方が美味しいし(日本人の味覚だからなのかも知れませんが)。

明治製菓も、森永も、グリコも、ロッテ(韓国系だけど)も。はたまた、ガリガリ君の赤城製菓も、亀田製菓も、文明堂も。アジア、中近東、アフリカ、中南米に、カルビーを見習って世界企業として羽ばたいてくれることを望みます。

追記1)お台場にできたダイバーシティに入っている「カルビープラス」には、夏休みの間中、連日長蛇の列の親子が並んでいました。東京駅八重洲口地下街の「カルビープラス」も、土日は子供達でもの凄い賑わいです。

追記2)ウィキペディアを見ると、元々の発祥は広島市で、旧社名は松尾糧食工業株式会社。日本人に足りない、カルシウムとビタミンを補う健康スナック作りをしようと、社名を「カルビー」に変更したそうです。東京の赤羽に本社を移したのは、1994年だそうです。

追記3)スーパーの棚に並んでいるナトリの商品群。イカの柔らか揚げ、チーズかまぼこ、チーズ鱈、うずらのたまご、やきとり缶、etc..。酒飲み垂涎のおつまみ群です。このナトリのつまみも、必ずや世界中で愛される味だと思います。ナトリもやる気のある経営者に変われば、きっとカルビー同様世界企業に変身できると思います。

追記4)平成25年1月31日の日経新聞によると、ポテチのライバル湖池屋(企業名はフレンテ)は、カルビーと対称的に業績が不振のようです。カルビーの値下げ攻勢で防戦一方の状態のようです。

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