2013年3月1日(金)

幻となった木更津空港計画

都市鑑定アドバイザリー(株) 不動産鑑定士 田中祥司

元マリコン(海洋土木会社)社長さんと話していた折、「藤田観光には国土総合開発という会社があったでしょう。」と聞かれ、「そう言えば私が入社した30年前には、浜松町の藤田観光本社にそんな会社がありました。関連会社なのかも分からないまま、3年で会社は辞めちゃいましたけど」と答えました。

「国土総合開発は、小川栄一さん(藤田観光中興の祖)の夢の詰まった戦略的会社で、木更津に空港を作ろうという壮大な計画の基に作った土木会社なんです。河野一郎が木更津派で、千葉県知事の友納さんも木更津派。総理だった佐藤栄作は成田派。最後は佐藤栄作が友納知事を呼び出し、このままじゃ次の県知事選は自民党の推薦はできないと脅して、木更津空港を諦めさせたって聞いています。」

「へ~!そんな歴史があったんですか!木更津に空港ができていたら、滅茶苦茶便利でしたね。今ならアクアラインで羽田から20分、30分で行けちゃうし。それにしても何で距離的に不利な成田になっちゃたんでしょうね?」

「私も詳しくは分からないけど、まあ利権なんでしょ。成田に空港を作ることで、莫大な利権が手に入る。空港の周辺の土地を先回りして抑えておくとか、当時だったらいくらでもできたでしょうから。」

ウィキペディアの成田空港の年表を見ると下記のようになっています。

・1962年11月 新国際空港建設の方針を閣議決定。

・1963年6月中旬 綾部健太郎運輸相が「浦安沖案」、河野一郎建設相が「木更津沖案」を発表。

・1963年7月 綾部運輸相、河野建設相、川島正次郎国務大臣、友納武人千葉県知事が初の四者会談。新空港立地を「東京湾沖千葉県側」とすることで合意。

・1963年8月 第2回四者会談で、綾部運輸相が「東京湾案」に加えて、「霞ヶ浦案」「富里村付近案」を追加提案。

・1963年9月 友納千葉県知事が「運輸省は富里村案を検討中」と県議会全員協議会で報告。

・1963年12月 空港審議会が第一候補・富里村付近、第二候補・霞ヶ浦と答申。

・1963年5月 閣議で「浦安案」を推す河野建設相と「富里案」を推す綾部運輸相が激しく議論する。

・1964年8月 友納千葉県知事が「木更津沖なら積極的に誘致、内陸なら消極的にならざるを得ない」と立場表明。

・1964年12月 富里村の空港反対派が「血判状」を佐藤栄作首相に提出する。この頃から浦安の漁民が反対したり、各地で空港建設猛反対が起きる。当時の二大政党だった社会党も当然反対を表明。

・1965年11月 関係閣僚懇が新空港を冨里に内定、と発表。

・1966年7月 佐藤栄作内閣が、新東京国際空港の建設予定地を千葉県成田市三里塚地区の宮内庁下総御料牧場付近に閣議決定。

その後10年くらいすったもんだ揉めに揉めながら、1978年5月に成田空港が開業されます。そう言えば小学生の頃、三里塚で良くヘルメットを被った人たちが大騒ぎしていたニュースを良く放映していました。昔の成田空港はいつも警備が物々しかったし。

首都圏に羽田以外にもう1か所空港が必要だったことは間違いないでしょうけど、あの時木更津空港に決まっていれば、日本の航空事情はより便利に、効率的なものになりえたでしょう。

追記1)国土交通省のHPには、木更津沖(空港都市研究会)というのが載っています。首都圏第三空港木更津沖案ということで、3500mの滑走路が2本の計画案です。アクアラインの海ほたるから南へ曲がる海上空港となっています。

追記2)藤田観光も私が入社した頃、木更津に土地を一杯持っていました。なるほど、空港ができたらあれは大化けする土地だったのか。その土地はその後ゴルフ場として開発され、現在の「カメリアヒルズ」になっています。

追記3)先日ある会合で、三井不動産の中興の祖・江戸英雄氏は、河野一郎とべったりだったという話しを聞きました。

追記4)小川栄一氏は国土総合開発㈱を設立後、木更津南側で埋め立てによる臨海工業地帯(約7000ha)を作る構想を打ち立てました。1961年7月には、池田内閣が小川案の埋め立て計画が妥当であると言う閣議決定まで取っています(実現はしなかったけど)。小川栄一氏は私が思っていた以上に、相当剛腕の経営者(政商というか)だったんだなあ。

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