2013年3月3日(日)
魔法の氷「シ―スノー」と凍らない冷凍庫「蔵番」
平成25年1月19日放送のテレビ東京の「ガイアの夜明け」。この日取り上げられていたのが、鮮度を保ったまま冷蔵できる魔法の氷「シ―スノー」と凍らない冷凍庫「蔵番」を開発したベンチャー企業のマーズカンパニーでした。
冒頭、沖縄那覇の国際通りの居酒屋で、ニシン、ホッケの刺身が食べられるシーンが出てきます。ニシンは非常に痛み易い魚で、東京でも生ではなく干したニシンばかり売られています(生ニシンの焼き魚は滅茶苦茶美味しい!)。それが流通で最低2日かかる那覇で、ニシンの刺身が食べられる秘密とは。
その一つ目が雪のような氷の「シ―スノー」です。塩分濃度3%の塩水を徐々に凍らせて、塩分濃度1%、温度マイナス1度の氷を作りだします。この氷で生の魚を覆うことで、魚を凍らせないギリギリの温度設定ができるそうです。
肉・魚の鮮度を図る機械でトリメーター(鮮度計)があります。トリメーターの値で、
・鮮度が12以上なら “きわめて新鮮”
・鮮度9~11なら “新鮮”
・鮮度6~8になら “新鮮さに欠ける”
と言う評価になります。新鮮な市場の魚を普通の氷で冷やして一定時間後に測ったところ、トリメーターの値は“10.8”。同じ条件でシ―スノーで冷やした魚は、“14.5”。明らかに鮮度が違います。凍ることも腐食することもしないギリギリの0度からマイナス1度で保存することで、獲った時の鮮度を保つことができます。
マーズカンパニーのもう一つの武器が、マイナス1度からマイナス5度で冷やしながら、商品を凍らせない仕組みの冷蔵庫「蔵番」です。食品は凍ることで細胞が破壊され、それが食べる時にぐちゃっと溶けて、肉や魚の体内の汁が出てきます。それを凍らせないことで、細胞が破壊されず、細胞内の旨味が閉じ込められている状態を維持します。
テレビでは水揚げして8日目の生ニシンや、採ってから2週間経ったキュウリを見せ、両方ともみずみずしい状態であることを映していました。この冷蔵庫の仕組みは、床に微量の電流が流し、その電流の振動で凍らないようにしています。
振動を与えることで、0度以下まで凍らないで冷やすことができるのか。なるほど、アビー社のCAS(Cell Alive System)の冷凍庫に通じる原理です。CASの冷蔵庫は、振動を与えることで0度以下まで冷やし、その後強い振動を与えることで瞬時に凍らせてしまう冷凍庫です。一瞬にして凍るので、細胞が破壊されない(破れない)。CASで凍らせた商品は、解凍しても中から肉汁、魚汁が出てこないと言う冷凍技術です。マーズカンパニーの蔵番は、凍らせないで過冷却の状態で冷やし続ける冷蔵技術ということです。
番組では後半、東日本大震災で壊滅状態になった岩手県宮古の漁場を映していました。昔通りでは無いけど、だいぶ建物の修復も進んでいました。宮古の地魚で美味しいのが、「どんこ」と呼ばれている魚です。正式名称は、エゾアイナメという深海魚で、見た目はグロテスク。ただ、肝を醤油に溶いて食べるドンコの刺身は、えらく美味しいのだそうです(オコゼ、アラの刺身のような感じなんでしょう)。
このドンコをシ―スノーで冷やしながら、トラックで約10時間掛けて埼玉の物流倉庫にまで運びます。ここには、マイナス温度で冷蔵できる蔵番があります。この二つの冷蔵技術を駆使することで、今までは現地でしか食べられなかった幻の食材が東京などの大都会で数日の余裕をもって食べることができます。
以前同局のカンブリア宮殿で、APカンパニー社の四十八漁場(よんぱちぎょじょう)が、新鮮獲れたての魚を店舗に並べるために、その日のうちに漁港から空港に運び、空輸で東京に運ぶと言うのを見ました(流通コストはどうしても高くなる)。
APのやり方ではなく、シ―スノーや蔵番を使えばもう少し楽に、時間的余裕を持って、新鮮魚を大都会に低コストで運ぶことが可能となります。なおかつ漁業者が中間卸しを通さず、ダイレクトに店舗に売る。このような仕組みが普通になれば、鮮度の高い珍しい魚が東京にいながら安く味わうことができます。高級魚だけでなく、寒ブリ、ニシン、真イワシ、真サバ、ゴロ(スルメイカの肝)も取れたての状態で東京で味わえる。
「シ―スノーの氷」×「冷蔵庫の蔵番」で、魚の一大流通革命が起こせそうです。
マーズカンパニー http://www.mars-company.jp/
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