2014年10月28日(火)

田舎で仕事を作る

都市鑑定アドバイザリー(株) 不動産鑑定士 田中祥司

 安倍首相の肝いりで、元幹事長の石破氏が地域再生を担う地方創生大臣に就任しました。しかし理念ばかり語られ、具体的にどうするかは今のところ聞こえてきません。多分、これだという決定打はなかなか無いので、地域にあったポテンヒットを積み重ねていくしかないのでしょう。それではどんな再生策があるのか。これを過疎の農村地帯にあてはめて、一人ブレストで考えてみました。

1.木質系バイオマス発電

 最近新聞記事で目立つのがメガソーラー発電よりも、木を燃やして発電するバイオマス発電の話題です。

・出光興産、神鋼環境ソリューション、福井県大野市で出力6000kwの木質バイオマス発電起工式。

・三井物産、北海道ガスが北海道苫小牧市で出力5800kwの木質バイオマス発電施設を2015年5月に着工。

・クラボウ、徳島県阿南市に出力5800kwの木質バイオマス発電施設を2016年4月に稼働予定。

 2013年2月の日経新聞記事では“真庭市の銘建工業が中心になって計画中の発電所は、年330日24時間稼働し、年間出力7900万KW/Hを予定。年21億円の売電収入を見込み、発電所要員として15人を新規雇用する。燃料は真庭市を中心とした地域から間伐材などの未利用材を年9万トン、製材所から出る端材など一般木材を5万8千トン集める。燃料購入費として年13億円支出する。ほとんどが木材収集のための人件費に回るため、銘建工業中島社長は「雇用効果は200人~300人に上り、地域経済の活性化につながる」と強調している。“ と書いてありました。

 13億円の支出の大半が人件費(もちろんトラックなどの運送費もあるのでしょうけど)として地元に落ち、それが200人だとすれば1人当たり500万円くらいの収入が得られます。

2.疎水、農業用水路を使った小水力発電

 昨年小水力発電ベンチャー企業のシーベルインターナショナル海野社長の話を聞く機会がありました。疎水(そすい)を利用することも、農業用水路を利用することも十分にFIT(再生エネルギー買い取り制度)があるので事業採算に乗ると話しをされてました。

 シーベルインターナショナルの小水力発電システムだと、ランニングコスト、メンテナンス費用はあまりかからないので、月々の人件費はあまり落ちません。それでも数年に一度のオーバーホール費用、ペンキ代などは地域に落ちます。それよりも安定的に電気代収入が得られることの方が、地元経済効果は大きそうです。

3.地熱利用のハウス栽培

 農業でハウス栽培をする場合の暖房は、大体重油を焚くことで賄っています。これを地下水による地中熱利用システムも併用すれば重油代を大きく削減できます。地熱利用にあたっては、地下数十mの地下水をくみ上げ、これをヒートポンプなどを使って温風を出すことを想定します。一度システムを作れば、人件費が掛かるランニングコストはほとんどありませんが、導入時の投資コストが掛かります。この投資額がその分人件費として地域に落ち、また長い将来化石燃料輸入量を減らすことができます。

 米作の農業用水路や農地区画整理にばかりに補助金を出していないで、地熱利用に補助金出せば野菜、果樹園、花卉(かき、鑑賞用花の栽培)の生産に強い味方になるはずです。

4.ヤギを使った草刈ビジネス

 若い人たちは働き先を求めて都心へ出ていき、残ったのは高齢者ばかり。こういう町や村は多数あります。その高齢者も動けるうちは良いですが、病気になったり亡くなったりすると、農地の管理ができなくなります。10月に行った島根県美郷町では、残っていた高齢者が亡くなった後、農地の草刈りのために都会から子供たちが定期的にやってきていると言う話を聞きました。また美郷町に数人いる「地域興し協力隊」メンバーの主な仕事の一つは、高齢者に頼まれて草刈をすることだそうです。

 この草刈りをするのにどうしたら効率的にできる。この答えとして、ヤギに草刈りさせることを考えました。以前見に行った農業型テーマパークで、首輪をして支柱に縄でつながれたヤギが、縄の届く範囲内で一生懸命草を食べている姿を見たことがあります。草を食べるヤギをテーマパークの風景にして、しっかり草刈りという仕事をさせているやり方に「頭いいな」と感心しました。これを農村にも応用して、耕作放棄地の草刈りをヤギに食べさせてしまえば良いと考えました。

 ビジネスとしては、人がヤギを数十匹飼って面倒を見る。草刈りして欲しいと言う依頼先の農地にヤギを届け、有料で草刈りさせることです。URの団地で草刈り要因としてヤギを一時的に置いたら、一生懸命草を食べて、その可愛らしい姿が住民の心をいたく和ませたということもありました。高速道路の草刈りにヤギを応用したという話もあります。ヤギによる草刈り請負業、限界集落では大いにビジネスになると思います。

4.洒落たレストラン

 田舎だから洒落た飲食店は流行らないと考えるか、洒落た店は一つもないから定期的に食べにくる顧客がいると考えるか。先日、高知県本山町(四国のほぼ真ん中にある山間部の町)職員の方から、ピッツア釜を作って我々に2年前にピッツア作りを教えてくれた方が、とうとうお店を構えたと聞きました。観光客だけでなく地元民にも受け、かなり繁盛しているそうです。なかなかイケメンだった方なのでその要因もあるにしても、やっぱり美味しいもの、洒落たものを食べたいと言うのは人間の本能です。ライバルだらけの都心より、コンペティターのいない田舎の方が経営は安定するかも知れません。

 子供たちを大して勉強もしない大学に通わせるよりも、辻調理専門学校に通わせ10年くらい都会で修行させて、地元に店を持たせるという戦略は有りだと思います。

5.ハーブティ、薬草茶を売るビジネス

 これから益々高齢者が増える時代ですので、健康のための薬草茶、ハーブティはかなり需要がありそうです。福井県鯖江市に行った折、地域のお母さんたちが桑の葉で桑茶を作って、都会に売る計画があると聞きました。長野県で手作りでごぼう茶を作って売っているお婆ちゃんの映像を見たことがあります。沖縄ではフーチバー(沖縄のよもぎ)が健康に良い野菜として売られ、沖縄そばの麺に練りこまれたりしています。島根県美郷町では外来種の迷惑な雑草と思われていたセイタカアワダチソウを軒先に干していました。お茶に煎じても良いし、お風呂に入れて浸かるのも肌に良いとのこと。

 チラシで見かける健康食品を売っている会社は、どこか胡散臭さがあります。一度連絡するとしつこい営業を掛けられたり。そういう心配が無いように、市や町も出資した会社が製品を作り顧客に安心感を与え、正直に商品を作ればファンは付くと思います。時折は愛用者の方に地元まで来てもらい、地域を知ってもらい、商品作りを見て貰えば、より強固なファンになってくれるはずです。地域で取れる薬草を利用した商売は、元手もほとんどかからないので有力だと思います。

6.シチュー、ジャム作り

 地元で取れた新鮮で低農薬の素材を使ったジャムやシチューは、美味しく作れるようになればヒット商品になると思います。しっかりしたプロについて、真面目に添加物も入れないで(少なくして)作れればです。「里山資本主義」で紹介された周防大島町の「瀬戸内ジャムズガーデン」は、お客さんが引きも切らない人気店となっています。

 シチュー、ジャム作りで一番コストが掛かるのは、人件費を除けば燃料代(通常はガス)です。これも田舎だとアドバンテージがあります。ガスの代わりに、山で採れる枯れ枝などを利用すれば燃料費はタダです。燃料代がタダで、地域のお母さんが時間があるときに(他人を雇わないということで人件費ゼロ)、余った果物、野菜(原料代ゼロ)でジャムやシチューを作る。後は販売先と流通を確保すれば、しっかり儲けられると思います。

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