2016年4月28日(木)

中国GDPの大嘘

都市鑑定アドバイザリー(株) 不動産鑑定士 田中祥司

 高橋洋一氏著書の「中国GDPの大嘘」(発行講談社)を読みました。中国政府発表のインチキ統計の件では目新しい事実は書かれていませんでしたが、改めて色々な経済データが書かれていたので参考になりました。以下にレジュメを書いてみました。

・ソ連が崩壊してから分かったのは、公表されていたGDPは全くの虚偽であったこと。1928年から1985年までのGDPの伸びは公式統計によると90倍になっているが実際には6.5倍しかなかった。平均成長率8.2%とされていたが、実は3.3%しかなく、本当の経済成長率は半分以下でしかなかった。ゴルバチョフ書記長が進めたグラスノスチ(情報公開)で明らかになってしまった。そのソ連から統計手法を学んだのが中国であり、偽造統計の手法だけはしっかり学んでいた。

・中国の統計は全く信用できないが相手国のある貿易統計は不正ができない。2015年1月から2015年7月までの輸入量は前年比14%の減少となっている。通常は輸入が前年比10%以上減っているのにGDPがプラス成長はあり得ない。

・2012年度の固定資産税投資総額は36兆元(約612兆円)で対前年比+20%。リーマンショック後の2008年に4兆元(68兆円)投資。その後も2009年からの4年間で110兆元(約1900兆円)の固定資産投資が行われた。過剰投資は各地に鬼城を生み出している。産業でも過剰設備を積み増した。鉄鋼の生産能力は2005年の5億トンから2012年には10億トンと倍増している。

・農業生産と工業生産はしっかりデータを取っているよう。工業生産の伸び率は平均で1%程度。産業別の成長率6%とは乖離が大きい。

・2015年8月に銀行が抱える不良債権の実態が公表された。1.8兆元(約31兆円)になるという。最近になって理財商品を通して集められた資金は30兆元(約510兆円)を超えていると公式発表があった。ただこれらの金額も公式発表なのでそれより多い可能性も十分ある。

・2014年末の地方債務合計額は24兆元(約408兆円)に膨れ上がっている。地方財政は歳入を土地譲渡収入に大きく依存している。2013年度で4兆元(約68兆円)に上り、一般歳入の60%を占めていた。2014年度は0.3%増とほぼ横ばい。2015年度は対前年で▲21%、金額で9000億元(約15兆円)減少している。

・国有企業を中心とした国家の債務額が2000兆円以上に膨らんだ(GDPとは違い会計操作が無ければ正確な数字)。2015年度の国有企業売上高は7.8%減、経常利益は21.9%減。国有企業は補助金も流れているため、売上高、利益とも偽装、かさ上げしていることは充分考えられる。

・中国が海外ビジネスに力を入れているのは国内の可能生産分を海外へ押し付け、余っている人材も輸出できるから。犯罪を犯して服役中の囚人を海外で働かせている。彼らの労働力はほぼタダで使うことができる。アフリカ沿岸で中国漁船が違法操業を繰り返し、漁獲量年間3000万トンを超えた。中国が海外で得る漁業収入の2/3を占める。乱獲で魚の生態系にも影響が出ており、アフリカ諸国から非難が強くなっている。

・ばら積み船は、石炭、鉄鉱石、穀物などの乾貨物(ドライカーゴ)を運び「海のダンプカー」と呼ばれている。ばら積み船の運賃の国際市況を表すのが「バルチック海運指数」。2015年夏に1200ポイントだったのが、2016年2月には300ポイントを割った(最近は少し戻して500ポイント)。世界経済の落ち込み、特に中国の鉄鉱石需要の落ち込みが大きな下落要因となっている。

・日本の衣料品の輸入シェアは中国が以前は80%を占めていたが、2015年は65%まで落ちている。他の東南アジア諸国のシェアが軒並み伸びている(ヴェトナム9.7%、インドネシア4%)。中国の人件費が上がったため生産拠点を移している。2014年度の労働者の月額賃金データは、中国・深せん:706ドル、ベトナム・ハノイ:247ドル、ミャンマー・ヤンゴン:172ドル、カンボジア・プノンペン:157ドル。

・中国の富裕層の60%以上は海外に移住済か移住を考えている。役人が難癖をつけて金を巻き上げ言うことを聞かないと刑務所送りということが多々あり、国を信用していない。言論の自由もないし、大気汚染、水質汚染などで人が住む環境ではない。商売で稼ぐ力を持つ富裕層が海外移住することの経済損失は大きい。

・EU諸国では、世界GDPの23%を占めるEUと22%を占めるアメリカとは対等であると言う意識が強い。中国を上手く利用すればアメリカの尻に敷かれることは必要はないと考えた。これがイギリス、フランス、ドイツ、イタリアのAIIB参加に繋がった。元々中国と貿易で大きく結びついていたのはドイツ。シュレーダー、メルケルと親中路線を取り、自動車、超高速鉄道等を売り込んだ。一時期は「アジアの代表は中国だ。」と持ち上げていたが、ドイツのマスコミは2015年秋ぐらいから中国批判をするようになり風向きが変わってきた。

・中国国家発展改革員会が2015年秋頃に作成した極秘レポートがスクープされた。「中国経済は短期的に深刻な状況に陥る。第一の原因は生産過剰、第二の原因は資産価値バブル、第三の原因は地方自治体の過剰な債務」。これらの問題に対して対策も示しつつ効果が無いことを説明。結論としては「今後3年間は中国経済は落ち続けるだろう。」という結論になっていた。

・中国の公表国防費は1700億ドル(約19兆円)。日本は約400億ドル。中国の国防費だけは年々伸び続けている。人民解放軍は軍拡を更に強化しようとしている。しかし経済的に崩壊していく中国がこのまま軍拡を維持することはできない。

・中国の上位10%の家庭が全貯蓄の75%を占めていると公表されたのは2012年。片や55%の家庭が貯蓄0となっており格差が著しく拡大している。

 旧ソ連と同じように行きつくところまで突っ走り、その後は突然崩壊と言う流れだけは避けて欲しいものです。あまりに大きすぎる国ですし、あまりに日本に近すぎるので。

このエントリをはてなブックマークに追加このエントリをdel.icio.usに追加このエントリをLivedoor Clipに追加このエントリをYahoo!ブックマークに追加このエントリをFC2ブックマークに追加このエントリをNifty Clipに追加このエントリをPOOKMARK. Airlinesに追加このエントリをBuzzurl(バザール)に追加このエントリをChoixに追加このエントリをnewsingに追加

最新記事

不動産業界コラム

過去の記事

ページの先頭に戻る↑