2017年3月26日(日)

CAコンテナ船による福島県の桃の輸出

都市鑑定アドバイザリー(株) 不動産鑑定士 田中祥司

2016年3月に見たネット記事で、「福島県産桃の輸出総量が2016年度は30.6トンとなり、原発事故前の2010年度23.9トンを上回った。2015年度は10.5トンだったので、2016年度は一気に3倍になった。タイへの輸出が飛躍的に伸びて21.5トン。マレーシアも伸びて7.3トン。ただ震災前のメインの輸出先だった香港、台湾は原発による輸入規制解除がまだ見通せていない。従って当分はタイでのプロモーションに力を入れる。」と書いてありました。

この桃の輸出に大きく貢献したのがCAコンテナ船です。フルーツの鮮度を考えれば航空便での輸出が一番ですが、いかんせんコストがべらぼうに高くなります。フルーツの鮮度を保ったまま船便で送ろうと考えられたのが、CA船(Controlled Atmosphere Ship)です。航空便に比べれば輸送コストは1/10に下がり、その分現地での小売価格を抑えることができます。

CA船の仕組みは、「窒素を冷蔵庫内に注入することで果物が熟すスピードを遅らせる。高級桃の流通システムでは、常温では収穫後3日目に食べごろに達し、6日目に過熟となる。日本からタイまでの船便は約7日掛かかるが、窒素充填の船内の冷蔵庫により現地到着時に丁度良い食べ頃になる。」と鮮度管理ができます。

どういう会社がCA船を運航しているかを調べてみました。そのうちの2社のHP内容を抜粋してみます。

①郵船ロジスティクスつくば㈱

2015年5月の記事ですが、「茨木県産のメロン、大根、ホウレンソウ、小松菜、トマトなど20品目の農産物を混載し、東南アジア方面への海上輸送を想定し3週間の貯蔵を行い、農産物の品質調査を行う。」というものがありました。CAコンテナは、「リーファーコンテナ(内部を一定温度に保つ設備をもつコンテナ」の一種。温度だけでなく酸素と二酸化炭素濃度を調整し、農産物の貯蔵期間を延長させる。」と説明しています。

②㈱MIT(Monohakobi Technology Institute)

空気組成をコントロールして食品の品質劣化を防ぐ鮮度保持輸送を手掛けている。青果物、果物は収穫後も呼吸し、成長、成熟しており、呼吸のためのエネルギー源として自分の糖分を使うために品質が低下する。CA輸送では低炭素、高二酸化炭素状態へと人工的にコントロールし、青果物の呼吸を制御。低温との組み合わせで、青果物は「冬眠状態」となる。

他にはイチゴの輸出で、「国内では1パック600円から700円の福岡県産イチゴ「あまおう」。香港に航空便で運ぶと約2000円になってしまう。これをCAコンテナ船なら1000円程度に抑えることができる。福岡の大同青果は日本郵船に相談。技術面からCA船を支えたのがダイキン工業。元々CA機能を備えた倉庫を40年前に作っていた。最近農産物を運ぶコンテナの相談が増えてきたので3年前から研究を再開。ゼオライトに窒素だけを吸着させ、コンテナ内に窒素だけを送り込み青果物の呼吸を抑えるようにした。」と言う記事もありました。

農産物、特に高級フルーツをCA船によって低コストで海外に輸出できれば、国内果樹農家の夢は膨らみます。桃、イチゴだけでなく、メロン、ブドウ、リンゴ、梨、アップルマンゴー、柿、高級ミカンなど、日本の誇るフルーツをバンバン輸出することができます。

日本の農産物輸出額は2016年度4,593億円ですので、CAコンテナ船で物流コストを下げられれば、フルーツだけで1兆円も夢ではないでしょう。

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