2011年5月2日(月)

東日本大震災時のホテルの対応

都市鑑定アドバイザリー(株) 不動産鑑定士 田中祥司

 東日本大震災後2週間くらい経った時に、「うちの娘がホテルに勤めているのですが、震災の日はフロントに宿泊したいと来たお客さんを、新規では取らなかったそうです。ホテルもどこの設備が故障しているか分からなかったので、下手にお客さんを取って混乱を増やしてはいけないと判断したようです」と知人の方から聞きました。
 当日は立川で電車が止まって家に帰れず、ホテルに泊めてくれと何件も駆け回った私としては、その話には釈然としない思いがありました。

 先週、ホテルの総支配人をしている知人と会った折にも、この話となりました。知人曰く、
・地震のあった時間から4時間くらいはエレベーターが動かない状態だった。また、ホテルの建物のダメージ、全ての設備(空調、給排水、風呂・トイレ、警備等)の点検にも相当の時間を要した。
・地震があってからしばらくの間、インターネット回線が繋がらず、ホテルのネット予約がコントロールできない状態だった。予約が殺到しているのに関わらず、予約停止の措置を講じることができず、完全なオーバーブッキングになってしまった。通常なら、多少のオーバーブッキングでもキャンセル率が大体分かり何とかなるが、この時ばかりはどの程度お客さんが来るか皆目分からなかった。
・現場がこれ以上混乱してはいけないと思い、新規でフロントに来るお客さんは宿泊を断るように指示した。ネット上では相当のオーバーブッキングだったので、どうしようもなかった。
・ホテルの建物、設備に大きな被害は無かった。最終的にその日は、ネット予約のお客さんのかなりは訪れず、稼働率は80%くらいだった。でも、あの時新規のお客さんを取らなかったことは、正解だったと今も思う。

 確かに現場としては、大混乱を避けたい気持ちは分かります。当日は余震も続き、次々と津波被害のニュースが続き、何が起きるか分からない状況でしたから。ただ、バンケット(宴会場)に帰宅できないお客さんを休ませてあげて、毛布を配ったホテルもあったのだから、ここのホテルも何かやりようはあったのでは。
 ちなみに私は、立川駅前のカプセルホテルに何とか潜り込み、滅茶苦茶、安堵しました。今も立川のカプセルホテルには、足を向けて寝られません。困ったときに世話になったところには、暫く恩は忘れないものです。

追記1)“大手ビジネスホテルチェーン「東横イン」(東京都大田区)が、東日本巨大地震の発生直後から被災地の岩手、宮城、福島、茨城県のホテルで宿泊客に対し、天災時の損害賠償請求を放棄することを求めた誓約書へのサインを義務づけていることがわかった。”という記事がありました。数年前に建築基準法違反で叩かれたときから、体質的には変わっていないようです。

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